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「競走できるならどこにでも行く」-ビリー・ボルト - No.236より

「誰かとレースができるならぼくはどこにでも行くよ」。2018年にWESS(ワールドエンデューロスーパーシリーズ)の初代チャンピオンに輝き、インドアのFIMスーパーエンデューロでもタイトルを獲得したエクストリームエンデューロの王者はそう語る。そしてトラディショナルスタイルの競技であるENDURO GP(FIMエンデューロ世界選手権)のスタートラインに立ち、そしてあっさりとボディウムフィニッシュを決めて周囲を驚愕させるのだった。


王座に安住しない

 彼がENDURO GPに参戦すると聞いて懐疑的な思いを持つの人かいても無理はない。現在のオフロードスポーツに詳しいならなおさらだ。エンデューロ、ハードエンデューロ、クロスカントリーはそれぞれの分野で先鋭化し、アスリートたちはその分野での専門的な技術に磨きをかけ、頂点を目指す。ENDURO GPにおけるスペシャルテストでの戦いは、ブラッド・フリーマンとスティーブ・ホルコムの戦いを見るまでもなく、常人の理解を超える域に達している。ハードエンデューロのチャンピオンだからといってENDURO GPをうまく走れるわけではない。1990年代のエンデューロ世界選手権に、ジル・ラレイ・クラシックの勝者が出場するのとは訳が違うのだ。
 しかし、ビリー・ボルトはどうだろう。2018年に彼が栄冠をつかんだWESSのシリーズ戦を分析すると、そこには彼の、幅広いスキルが証明されていることがわかる。極端なスピードと走破力の両方が試されるエルズベルグロデオ、耐久力のテストであるルーマニアクス。またスピードレースであるクロスカントリーも、そしてENDURO GPと同じように古典的なスペシャルテストで競うフランスのトレフル・ロゼリエンまで。さらに、インドアエンデューロでの過激なバトルにも彼は勝利してきたのだ。
 そして2020年、多くのライダーと同じようにパンデミック下の閉鎖環境で、彼は来るべきシーズンのために、モトクロス、クロスカントリーのトレーニングを重ねてきた。それは、ENDURO GPのためではなかったけれど…。



最速ライダーたちに混じって

 初めて参加したENDURO GPにおいて、ビリー・ボルトは周囲の想像を遥かに超えるスピードを示し、E2クラスでの表彰台、そして世界最速のライダーがしのぎを削るGPクラスで5位を獲得した。2日目は、スペシャルテストの中でドライブチェーンが外れるというマイナーなトラブルでリザルトは不振だったが、それでも実力は充分に証明された。彼にとっては、WESSラウンドの前のちょっとした楽しみのための参戦だったにも関わらず。

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