日高。2023 「ザ・クラシックエンデューロ」 No.248より
1984年に苫小牧市で開催されたITDEをその源流とする伝統の2日間競技がウイルス禍による休止を経て4年ぶりに開催された。レベルアップ著しい最高峰クラスから、一度は日高を、と目標にしてきたライダーまで、国内外から240名の選手が秋の日高山脈に集まった。
JAPAN ENDURO CHAMPIONSHIP R5
MFJ全日本エンデューロ選手権 第5戦
2023年9月15~17日 北海道日高町
Images : off1.jp, Akihisa Tsukada
その歴史
日高のエンデューロは、日本国内において特別、あるいは特殊な存在になってしまった。ISDE(インターナショナルシックスデイズエンデューロ)を範として、それに準じた競技規則、競技形態を持って開催が続けられてきた。起源は1984年に、北海道苫小牧市で開催されたITDE(インターナショナルツーデイズエンデューロ)にある。当時、日本人としてただ一人のISDEライダーだった西山俊樹氏が立ち上げたその競技会は、その名が示す通り、ISDEのような競技を、まずは2日間のイベントとして日本に再現しようとするものだった。その後、1986年から開催地を同じ北海道の日高町に移すことになる。
日高のエンデューロは、実はこの頃まだ、オンタイム方式の競技ではなく、スタートからゴールまでの速さを競うタイムトライアル形式のレースだった。パルクフェルメ方式を採り、整備や修理が選手本人だけ許されるというルールがISDEに似ていたし、1周か数十キロという長いコースを持つことから結果としてエンデューロ的でISDEによく似た外観を持ってはいたが、競技形態は異なっていた。
それがオンタイム方式に変わったのは1993年。それから少しずつ競技形態を整え、台風災害等による数回の休止を経て現在に至る、COVID-19状況からも逃れることはできなかった。2020、2021、2022年は休止。JEC(MFJ全日本エンデューロ選手権)の北海道大会は3年連続でルスツが開催地となっていた。日高ツーデイズエンデューロは、今年4年ぶりの開催となった。
幅広い選手層
また以前のことになるが、1993年にオンタイム方式(タイムチェックがあり、スペシャルテストがある競技)に転換するまで、日高は有体に言ってハードエンデューロに近いレースだった。2日間競技だったが、350名が出走し、1日目を完走できたのは20名、2日間を終えると6名しか残っていなかったということもあった。当時のイメージは現在も残っているかもしれない。だから「ヒダカのエンデューロは過酷」と思っている人が少なくない。実際には、すでにそのような競技は行われておらず、ISDEがそうであるように、大半の選手がすべてのスケジュールをこなして2日間を終えるように組み立てられている。
しかも、JECでランキングを競う上位クラスから、中級者、初級者のクラスまで用意され、それぞれにタイム設定も異なり、一部ではショートカットのルートも用意され、スキルや目標に合わせて参加クラスを選ぶことができ、どんなライダーでも本格的な2日間競技を経験することができるように組み立てられているのである。
今年は235名の選手が参加。そのうち約1/3が、JECでのランキング対象ではないオープンクラスの参加者だった。
ハードルは高いが
冒頭、日高が特別あるいは特殊、と書いたのは、日高(また3年間代替開催されたルスツ)の競技が現在、日本で唯一、公道を使用して行われるエンデューロ競技となってしまっているからだ。一般公道を走行することができるストリートリーガルの車両は、JECシリーズでもまったく主流とは言えず、例えば、ヤマハのYZシリーズのようなクロスカントリー競技専用の車両のユーザーが多い。同一のシリーズ戦でありながら、ひとつの大会だけで公道仕様の車両を必要とすることが、多くの選手の負担になるとの観点から、統括団体のMFJエンデューロ委員会は、今季からシリーズランキングに有効ポイント制を導入。今年は各選手の獲得ポイント全7ラウンド中、5ラウンドを有効とする方式とし、日高に参加しなくても不利にならずにランキング争いができるようにしている。公道仕様の車両が必要なこと、そもそも多くの選手にとってフェリーを利用した渡航が前提であることなど、ハードルが高いうえに有効ポイント制を敷いたことで敬遠される懸念もあったが、結果としては、JECクラスだけで170名のエントリーを集めることになった。4年ぶりの開催への期待がそれだけ大きかったということだろうか。
日高のトレイル
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