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THINK BIKECOLOGY - ファットなアシスト生活365日- No.237より

イタリア製、FanticのアシストMTBを導入して1年が経過。もはやこれ無しの生活は考えられないほどの存在になった。55万円は高いのか? その価値を検証しよう。

まず自転車のスゴさを知ろう

北海道はクルマが便利な土地柄だが、ぼくは日常、公共の交通機関をよく利用している。自宅からバス停まで、徒歩6分ほど。天気の良い日には自転車も使う。徒歩に比べると速く、らくちん。
 わずかにペダルを動かすだけで、大きな車輪がすいすいと動き「自転車とはなんと効率の良い乗り物か」と、乗るたびに感動する。同時に、いつも「バイコロジー」という言葉を思い出すのだ。
 小学生の頃に、暇さえあればページをめくっていた百科事典で知った言葉。「バイク」と「エコロジー」を合わせた造語で、1971年にアメリカのサンタバーバラ出身の青年が提唱し、その後、第一次オイルショックによる世界的な環境保護機運の高まりとともに普及した言葉だという。バイコロジーの進んだ社会としてオランダの例が紹介されてもいた。語感の良さもそうだが、環境保護という考え方に初めて触れる機会だったということで、強く印象に残っているのだと思う。市民の生活スタイルが地球の環境に影響を与える、その考え方も小学生のぼくには衝撃的だったのだ。とにかくそれ以来「バイコロジー」はぼくの脳に刷り込まれた。
 自転車という乗り物の効率の良さは、ぼくのように、同じ道を徒歩と自転車の両方で日常的に行き来していると本当に良く理解できる。車輪の力はすごい。エンジンなどなくても車輪があれば充分だと思えるほどだ。

むしろ雪のほうが楽しい。ファットの走破性はアシストで100倍に(オオゲでもない)


ほぼバイク!

そんなぼくが、FanticのE-Bikeに出会って1年になる。たちまちその便利さと楽しさのトリコになり、まったく手放すことができない存在になった。電動アシスト自転車である。その嚆矢たるヤマハのPASSのことはもちろん知っていたが、自分の世界観とオーバーラップするものではなかった。だがこれは違った。
 Fantic FAT SPORTS INTEGRA - かっこいいのである。ガレージに置いたこれを一目見た高1長女は「お、ほぼバイク」と少しだけ鋭いことを言った。確かにかなりオートバイに近いでしょう。
 サスペンション代わりといっていいほどのクッション性を有する前後ファットタイヤ。フロントにはテレスコピックサスペンションを装備する。ファットバイクは乗り心地が良い。良いのだが、重いし、走行抵抗も大きいという弱点がある。しかしこれは電動アシストで、その走行抵抗の分は、モーターが有り余るトルクでカバーしていて重さを感じることはまるでなく、ただただ、ファットタイヤの走破性だけを享受できるのである。
 ダートはもちろん、道路の段差、階段の登りだって下りだって、ファットのエアボリュームがサスペンションとなって、無敵の走破力なのである。

雪のトレイル、すいすいいけます。楽しいよ


トルクは正義だ

札幌は雪国の街である。こんなに積雪がある土地にこんな大きな都市がひらけるのは世界中で珍しい。平均の年間降雪量は5メートルに近く、除雪と雪対策の予算は、札幌市だけで年間220億円もあり、しかも毎年、シーズン半ばには予算が不足して補正予算が充てられている。
 そこを、ぼくのINTEGRA FATは、実にすいすいと走ってくれる。ファットタイヤの空気圧を少し低めに設定してクッション性と設置面積を増やす。タイヤはいい音を立てながら、雪面、アイスバーンをとらえてまったく不安感が無い。圧雪の上に粉雪が積もったような状態でも直進安定性があって、不安感がない。少しトラクションをかけると直進性が強くなるのはオートバイと同じで、そのコツをつかむとさらに乗りやすくなる。ペダルを踏むとすぐに大きなトルクを発揮するのもアシストのメリットだ。
 ちなみに、一冬を通じてずっとノーマルのブロックタイヤで走ったがまったく不安を感じることはなかった。全然滑らないのである。スパイクタイヤがいい、という人もいるが、ぼくは必要性を感じていない。

フロントには専用のROCKSHOX、前後の油圧ディスクブレーキは強力デス


航続距離100キロ超

ぼくが暮らしているのは札幌といってもはじっこのほうで、決して田舎という感じではないが、山坂が多い。だからアシスト自転車が活躍する。このバイクに乗っていて一番多く受ける質問が「いくらするの?」。値段の次に「どれぐらい走れるの?」が来る。
 パワーモードが段階的に調整できる。平地、下り、上りで大きく「燃費」も変化するが、ぼくは大抵フルパワーで使用していて、平地が長く続く場合に、少しパワーモードを下げる。そんな使い方で、50~60kmは余裕で走ってくれる。空気圧でもバッテリーの消耗は変化するので、遠出する時は少し空気を多めに入れて走行抵抗を減らすというような使い方をしている。道東の中標津で同じFAT INTEGRAを愛用している仲間は、ロングランにトライし、空気圧の調整などの工夫で100km以上を走り切ったと話していた。
 わずかなパワーでアシストするだけで、こんなに長い距離を快適に走ってくれる。自転車という仕組みの効率の良さがベースにあってこそのパフォーマンスというべきだろう。これはまさに現代的なバイコロジーではないだろうか。
 単体で見ればプレーンな普通の自転車のほうがよりエコロジカルだろう。だが、アシストバイクには、これまで化石燃料による移動手段に頼っていた多くの人たちを呼び込む力を持っている。その点ではこれもバイコロジーと呼べるのではないだろうか。

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