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Hard Enduro vs Super Enduro - ビリー・ボルトのバイク研究 - No.240より

_「一度全員がストック(ノーマル)のバイクという条件で勝負してみたいですね。きっとリザルトはあまり変わらないと思いますよ!」というビリー・ボルト


現在のエンデューロを短い言葉で言い表すのは不可能といっていい仕事だ。伝統的なエンデューロ、ハードエンデューロ、それにスーパーエンデューロ…。先鋭化し、専門的となり、それぞれにスペシャリストが存在する。当然、そこで用いられるバイクも、その分野のために特化している。我々はハードエンデューロ世界選手権、インドアのFIMスーパーエンデューロ、その両方で頂点に君臨する一人のイギリス人に取材し、現代のエンデューロバイクの真実を明らかにした。

Text : Jon Pearson
Photos : Future7Media - Andrea Belluschi


トップライダーたちの選択

ハードエンデューロ世界選手権では2ストローク300が、インドアのFIMスーパーエンデューロでは4ストローク350が現在のファクトリーチームのライダーに好まれる選択となっているということは、小誌の読者にも良く知られている事実だ。2ストローク300バイクの、エクストリームエンデューロにおける適性は、トップレベルのライダーだけではなく、多くのアマチュアライダーにも恩恵を与えるものだ。 一方、インドアエンデューロでは、昨シーズンまでは4ストローク450cc、それ以前には2ストローク250ccも選択されることが少なくなかった。なぜ現在、より軽量で俊敏な350が選ばれているのか、ということについては、次第に明らかにされるだろう。 ビリー・ボルトは、我々の取材に対し、彼のハードエンデューロ用のTE300iと、インドア用のFE350の違いを説明するが、正直、これは、単なる燃焼サイクルの違い、排気量の違いという単純な話では終わらないということを前置きしておくべきだ。
 ビリー・ボルトに限らず、ファクトリーライダーたちは、多くのラインナップの中から、自分に合ったバイク、そして数多くのマテリアルを自由に選択することができる。それは紛れもない事実だが、彼等にとってもっと重要なのは、すべてのレースに合わせて、それぞれ最適なセッティングを施したバイクに乗ることができるということだ。それは、2ストロークとか4ストロークといった差異よりも重要なのだ、とビリー・ボルトは説明する。

ハードエンデューロ用のバイクはTE300iだ。エンジンの違いというよりもセッティングの違いが大きいのだ


快適さとは無縁
インドア用バイク

「大前提として、特別に作られたパーツ、マテリアルは使っていませんし、秘密もありません。その気になれば誰もが同じようなバイクを作ることができます。すべて、ストックのパーツの組み合わせです」とビリー・ボルトは前置きする。ハードエンデューロ世界選手権用のTE300iと、インドア用FE350の最大の違いはサスペンションセッティングと実際にそこから得られる乗り心地の違い。エクストリームエンデューロのための2ストローク300は、グリップ力のためのソフトなサスペンション。スーパーエンデューロ用のバイクはハードで、地獄で受ける拷問のような乗り心地だ。
 「スーパーエンデューロのトラックは非常に特殊で、そのため私たちのバイクは、特にサスペンションにおいて特殊なセッティングになっていますが、完璧なセットというのはあり得ません。ロックガーデンでは、本当ならソフトで路面に吸い付くようなサスペンションが欲しいところですが、次の瞬間には、3速で直径60センチの丸太をできるだけ強く叩いて、マトリクスを一気に飛び越さなければならない。そのために、剛性が高く、動かないアシが必要になる。結局、低速セクションは犠牲にして、スーパークロスのようなバイクで岩場も乗りこなすことになります。もっとひどいかもしれません」さらにビリーは続ける。
 「だからインドア用のバイクは。他の場所ではまったく使い物になりません。スペインでのトレーニングでは、しばしばMXコースも走るわけですが、そこでも仕方なくこのバイクに乗りますが、まったく快適とは言い難い経験になります」。

「普通の人は乗れないし、インドア以外では乗りたくない特殊なセッティング」というビリー・ボルトのFE350、全体としてリア下がりの姿勢はログやジャンプでショートした場合に備えたもの


カタいサスペンションを
筋力で乗りこなしている

「もちろんライダーによって少しずつ傾向は異なります。私の場合、スーパーエンデューロでは、大きなジャンプ、ハイスピードセクションでの走破性のために、他のライダーよりハードな設定になっています。硬いセットアップは、身体に負担がかかります。ファクトリーチームのライダーは、それぞれ自分が良いと信じているセットアップでレースに臨んでいます。例えば、マニュエル・リッテンビヒラーと私のセットはかなり違っていますが、それは秘密ではありません。私のFE350のフレームはストックと同じジオメトリーですが、コルトン・ハーカーとタディ・ブラズジアクは異なるフレームにエンジンを載せています。そうした情報は、同じファミリーに属している私たちの間で共有されています」。


リア下がりの姿勢

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