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about tools - 連載 工具の世界 「六角レンチの取捨選択」 No.242より

筆者プロフィール
山田卓弥
工具の販売だけをやり続けて30年ちょっと。普段の趣味ではダートバイク(ハスクFE350)に乗って遊んでいる工具専門店エイビットの店主です。お店は東北自動車道羽生ICから車で5分。



一日でかなりの距離を走ることになるラリーやエンデューロ。まして周回路になっていない場合も多いので、道中でのいわゆる整備ピットというものは存在しません。そんな時に頼れるのは車載または携行している工具のみとなります。さらに積載量が確保出来る自動車とは違いバイクでの移動では持っていける工具の量や重さにもある程度限界があります。また国際ラリーのように携行出来るモノの総重量がはっきりと規定されている場合もありますので、持ち出す工具の選定にはさらに慎重になることでしょう。
 多くの人は鉄の塊である工具に関して「出来るだけ小さく、そして軽く」と考えます。もちろんそれは正解ではあるのですが、いざ工具の選定をする際に正しく小さく、そして正しく軽いものを選んでいるのか、そしてその工具は非常時に活躍するだけのスペックを有しているのか、より深くまで考えた事がある人はあまりいないのではないかと。そんなわけで今号からそんな車載工具のお話を数回に分けて書いていきたいと思います。
車載工具と言ってもラチェットやドライバー、プライヤー等々いろいろな種類の工具がありますので今回はお店でよく質問されることの多い六角レンチについて。
 ちなみに六角レンチという工具は業界が変わると呼称も変わったりしまして、自動車やバイクの車両整備の現場だと「HEXレンチ」で大抵通じます。これは英語のヘキサゴン (hexagon)からきているので感覚的にも覚えやすいと思いますし、実際ヘキサゴンレンチとも呼ばれたりします。これが自転車の業界にいくと「アーレンキー」と呼ばれたりしますが、どれが正解とかはなく業界や業種ごとに呼び方が違うことがあるって事を覚えておけばOKです。
 さてみなさんが一般的に六角レンチと言われてまず想像するのは「L字型」をしたものだと思います。片側が短くもう片側が長くなっていて六角レンチの基本とも言える工具ですね。ただしこのL字型の工具ってかさばるし重たい印象がありますよね。
そこで車載工具として選ぶ場合には軽量で持ち運びにも便利なビット形状の六角レンチが車載工具としては一番人気となっております。ビット形状の工具はHEXレンチだけでなくプラスビットとかも選ぶ事が出来るので車載工具としてとにかくコンパクトさを追求するなら外せない選択肢です。また他の選択肢としてはトライアングル形状の三叉レンチなども車載としては人気の工具ですね。出先で細かな工具を出し入れしたくないって人にはオススメです。
バイクで携行する工具としては先述した通り軽量コンパクトというのはひとつの正解ですので、ビット工具や三叉レンチのような形状のものが好まれるのはよく分かるのですが、本当にそれらの工具は出先での作業を確実にこなし、さらには軽量でコンパクトなのかというと多少疑問点が残ります。

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