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1-ON-1 飯塚翼 インタビュー - No.239より

マディでは成田MXPの連中にかなわない。若手ライダーたちの活躍がJECを席巻する。飯塚翼は、実はパドックでは目立たない存在だが、それは口数が少ない寡黙な選手だからだ。「他のライダーのことは気にならない」という飯塚の視線は、ただ目の前のトレイルにだけ注がれる。JECの新しいチャンピオンの本音に迫るインタビュー。

インタビュー 飯塚翼


Text : Hisashi Haruki
Images : アニマルハウス



飯塚翼 Tsubasa IIZUKA
1998年04月19日生
茨城県龍ケ崎市出身

チーム
SHERCO with 成田MXP

●スポンサー
SHERCO
SHERCO Japan
成田MXパーク
SHERCO with 成田MXP
三恵技研工業株式会社
MICHELIN
SHOEI
RS TAICHI
Moty's
NAstyle
MondoMoto
Ashita planning
HIGH JUMPER
いいづかこどもとおとなのクリニック
南急モータース
kingbee
カネト自動車


-- バイクとの出会い。

翼 : 家から10分のところにMX408っていうモトクロスコースがあったんです。「なんか音が聞こえるね。バイクかな?」って最初に興味を持ったのは父だったと思います。小学校1年生の頃です。そのうちMX408を運営しているウエストウッドのチラシが郵便受けに入ってて、500円でオフロードバイクが体験できます、って。それで父がぼくを誘って行ったのが最初ですね。父がバイクに乗っていたわけではないんです。

 それをきっかけに、父がやらせてくれるようになり、当時のウインズアサノさんのコースでレンタルバイクに乗るようになって、そのうちチームに入って、50ccでモトクロスっぽいことを始めるようになりました。少しずつレースにも慣れてきて、キッズスーパークロスにも出たり、65ccにステップアップしてから少し経ってから、渡會(わたらい)さんのKライズとピュアテックにお世話になりました。

-- エンデューロへの転向。

翼 : 高校に入ってもモトクロスを続けていて、IBでも1年だけフルシーズンで走りました。IAに上がりたいと思っていたんですが、なかなか簡単ではなくて…。大学に入るとフル参戦するとか、ちょっと無理だったので、レースには一区切りをつけた感じです。エンジョイライダーとして楽しもうって。

 成田モトクロスパークには65ccの頃からよく通ってました。千葉にデコボコランドっていう、エンデューロの人が多いコースがあって、それも渡會さんがメインで運営されていたんですが、デコボコが閉鎖されたことで渡會さんが成田の中にエンデューロコースを作ることになったんです。自然に、成田にもエンデューロの人たちが集まるようになって、少しずつ興味を持つようになったんです。鈴木海斗とか、いつも一緒に走っている仲間と、福島のY2っていうレースに出たり…。

 最初の頃はエンデューロなんか出ない、って思っていました。モトクロスしか視野になかったんです。でも成田のエンデューロコースとかでいろんなところを走ったり、いろんな走り方を試したり、それとエンデューロが好きな人たちと接しているうちに、だんだんと好きになっていった感じです。

-- JECを選んでいる理由。

翼 : JNCCにも年に数回は参加しているんですよ。JECをメインにしているのは、やっぱり成田に集まる人たちが、どちらかというとJECに出ている人が多いからだと思います。お世話になっている田中(弘行)さんとか、ナメック(滑川勝之)さんとか、渡會さんもそうです。会場に行っても、雰囲気がいいというか、人の感じが好きなんです。

「海外のレースならISDEがいいですね。仲間と、楽しみのために出場してみたい」
2019年のJECオフィシャルシューティングにて


2019年の日高。超スリッパリーなクロステストを全開で駆け抜ける
2021年、開幕の広島から絶好調。しかしその後、環境の変化に悩む時期も



-- 2021年はJECチャンピオンを獲得しました。タイトルを意識したのはいつ頃だったのか。

翼 : 2019年にIAに昇格してから、タイトルは常に意識していましたが、絶対にとってやる、という気持ちになったのは2021年になってからですね。2021年のシーズン前に、それまでの2ストから4ストのShercoに乗り換えて、練習を始めたぐらいからです。4ストロークがすごく良くて、タイムも出ている。これなら勝てるかもしれない、って。

 モトクロスの時も4ストロークだったし、やっぱり4ストが合ってるなって。乗ってても楽しくて、すごくいい感じでした。自然にトレーニングにも力が入るようになりました。毎年、自分的な開幕のレースはJNCCのプラザ阪下なんですが、そこでも調子が良かったし、JECの広島もやっぱり良かった。それで今シーズンは行けるかもしれないって思いました。ただ、ランキング1位っていうのは、その時点では強くは意識していなかったと思います。

-- 同じ成田モトクロスパーク出身の酢崎友哉とともにマディに強いと言われていますが。

翼 : トモ(酢崎)とはずっと一緒に走ってきました。成田は雨が降るとよく滑るので、ウェットでは乗らないライダーも多いんですが、雨が降っても、いつもトモと一緒に走ってきました。自分ではそんなにマディが得意だと意識していることはないんですが、自然に慣れてきたんだと思います。雨でも乗ればバイクは楽しいんですよ(笑)。

-- Shercoは強い味方ですか?

翼 : 軽くてコンパクトで、どんなところでも乗りやすいですね。だからJECみたいに、いろんなシチュエーションが混ざっているレースでは強いと思います。エンジンも、他のメーカーのバイクは低速からピックアップが鋭いけど、Shercoはゆっくりパワーが出るので、滑りやすいところでもトラクションが良くて、安心して開けて行けます。それとハンドリングがいいですから、難しいコースほど速いし乗りやすいですね。自信を持って走ることができるバイクだと思います。

-- 得意なコース、またはレース。

翼 : 去年のルスツは、ルートは移動って感じでしたけど、テストが良かったです。広くて開けて行けるテストが最高に気持ち良かったです。ただ、そこで、怪我して遅いはずのヨシカズ(保坂修一)が速かったのはアレでしたけど(笑)! レース全体としては、JEC広島のテージャスランチが好みのタイプかな? だいたいいつもマディだし…やっぱり得意ですね。テストもテクニカルで、スピードが出て、その後にタイトコーナー、っていうのが多いレイアウトもいいと思います。逆に苦手なのはSUGOのエンデューロテストです。狭いウッズ(林間)でスピードを出していくのがちょっと怖いんです。

2021年最終戦SUGOにて。ファイナルクロスを終えてタイトルが決定した瞬間だ
Shercoの4ストロークが好調。ルスツ2デイズも2日間の総合優勝を決めた
パドックでは寡黙。人一倍冷静に見える選手だ




-- 結果としてはタイトル獲得というシーズンでしたが、苦しかった時期はありませんでしたか。

翼 : 社会人になって1年目で、地元の関東を離れて静岡に移り、環境の変化もあったり…シーズンの初めでは精神的に落ち込むこともありました。1ヶ月ぐらいは仕事にいく他は部屋にこもってました。

 社会人になったし、レースもあきらめて、本当に、楽しみのためだけに乗るエンジョイライダーになってもいいと思ったり。今までのようにたくさん乗る時間も作れなくなって…。

 一方で、ヨシカズ(保坂)は、大阪に引っ越して新しいチームで、さらにライディングとレースに集中できる環境を作っているし、もう置いて行かれたな、って感じもして、少しヤケになっていたと思います。

 悩んでくさっている頃、カイト(鈴木海斗)と電話で話をしていたら「とにかくバイク乗れよ」って励ましてくれて。休日に、いなべ(中部)で開催されるJECのエリア戦を見に行ったんです。釘村さんとか、みんなの走りを見ていたら、やっぱりいいな、って。バイクに乗ったらやっぱり元気も出てきて、少しずつレースに向けての気持ちを取り戻すことができました。

 それからまたトレーニングを開始して、仕事が終わってから走り込みしたり、レースに向けて気持ちが上がってきたんです。 


-- ライバルとして意識しているライダー。

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