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Factory Bike - タディのインドアウェポン - GASGAS 4T 350

エクストリームエンデューロのマエストロがFIMスーパーエンデューロとAMAエンデューロクロスという2つのインドア選手権で勝利するために作ったスーパーウェポン。フルモデルチェンジした4ストローク350マシンはどのようなコンセプトで仕上げられているのだろうか。

Text & Images : Future7Media Team



狂気のレースを戦う
異常な兵器の真実

 私たちがファクトリーマシンを紹介するこのPRO-BIKEのシリーズでは、通常、パドックで撮影できそうなバイクを見つけたら、その後チーム監督とメカニックに話を聞く、というパターンで仕事を進めることが多いのだが、今回はタディ・ブラズジアクに直接取材し、しっかりと話を聞き、そしてより詳細な記事を製作することができた。
 タディのGASGAS EC350Fは、アメリカと欧州、2つのインドアエンデューロシリーズを戦うためにセットアップされたファクトリーマシン。
 「インドアエンデューロは本当に狂気の世界です。巨大な障害物にアタックする時、私たちは正気ではいられません。バイクは、そんな狂気のレースのための特殊なセットアップが施されています」とタディは前置きする。
 「ギアが5速か6速か、なんてどうでもいいですよ。大体2速しか使っていないので…。実際のギアボックスはモトクロッサーとエンデューロのハイブリッドです。みなさんフォークが52mmか48mmかなんてことをよく質問しますが、18mmが乗りやすいというのであれば私は18mmのフォークを使うでしょう。トライアルバイクのほうが速いということがわかればトライアルバイクに乗りますよ」と笑う。
 そして少し真顔になってこう続ける。「インドアではスタートがとても重要です。すべてが決まるといってもいい。だから、猛烈なスタートダッシュにこだわります。最初のターンを最初に抜けること。バイクにもそのためのダッシュ力を求めます」。


「まったくトレイル向きではなく普通の人は乗れない」というインドアスペシャル
トライアルジュニア選手権出身、2007年にエルズベルグにデビュー以来、ワールドレベルのレースで活躍。AMAエンデューロクロス、FIMインドアで多くの勝利を挙げてきた、ハードエンデューロ、エクストリームエンデューロのマエストロ。1983年ポーランド出身

奇妙なバランス


-- 簡単に言ってあなたのEC350Fとはどんなバイクなんですか?

Taddy : インドア用のバイクは、基本的にはスーパークロスとENDURO GP用バイクの両方の要素を備えたバイクだと思います。ハードエンデューロ用とはまったく違います。エンジンもサスペンションも、きびきびとしてレスポンスが良く、クイックなものがいいですね。私は特にアグレッシブなライダーなのでその傾向が強いです。エンジンは必要な時に必要なパワーが出るようにレスポンスが良いこと。サスペンションは衝撃に耐える強さが必要です。一般的なライダーが考えるような乗り心地の良さは犠牲にされます。インドアでの走りをよく見ると理解できると思いますが、私たちは常識的に言うとやってはいけないことをやっている感じです。サスペンションはそれに対処できるようにハードでなければならないんです。
 サスペンションのバランスも異常です。急減速、急加速の連続でトラクションを得るために、リア荷重で、また障害物にハードにヒットする時のためにフロントがハードになっています。そのため、フロントが高く、リア下がりの奇妙なバイクが出来上がります。普通のライダーはこんなバイクには乗れないと思いますよ。

-- つまり乗りにくい、トレイルライドには適さないバイクということでしょうか?

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