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北京~ウランバートルラリーの記録 - 中編

2006年に開催された北京~ウランバートルラリーにKTM400EXCRで出場した時の記録。世界一美しい大地を走った10日間。前編・中編・後編としてお届けします。

BEIJING-ULANBAATAR 2006
北京~ウランバートルラリー
2006年8月7~16日
主催 : SSER ORGANISATION
Text : 春木久史
Photos : Yasuaki Jibu

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ETAP-2 平原を西へ

 翌日はアルベイヘールという比較的大きな町まで、ほぼ真西へと進む約500km。アルベイヘールには大きな空港(やはり比較的というべきか)があり、ラリーをバックアップしているヘリは、期間中に何度かここに駐機して燃料補給をするようだ。
 5年前の記憶では、このあたりはまた、高緯度でもあり瑞々しい草原地帯という印象があったのだが、この年の気候のせいか、あるいはこんなものなのかもしれないが、いくらか茶色っぽく、乾燥した風景に見えた。
 そんなことより、俺はまた何度かミスコースをしている。どうも、コマ図とそこからイメージする風景と、実際の風景とに感覚的なズレがあるようだ。まだラリーに慣れていないのだろう、ピンとこないのだ。何度もルートを見失い、そのたびに次のGPSポイントに向かってあてずっぽうの道を選んで走ることになる。せっかく全力で走っても、ミスコースによるタイムロスが大きくて台無しだ。GPSポイントは、1日15ヵ所ほど記されている。30~40km間隔で設置されていることになるまので、これをフォローしていけばいいのだと思うかもしれない。確かにそうなのだが実際には、コマ図に示されている正規のルートは、実は最短距離をを結んでいるものなので、とにかくオンコースを行かなければ遅くてどうしようもないのだ。
 そうやってひとつのGPSポイント、360℃、見渡す限り目標物がないような大平原の1点だったが、そこにたどり着き、コマ図と、デジタルコンパスを交互に見て、進むべき方向を検討をしていると、尾島嘉男のKTMが、あらぬ方向からやってきた。彼も、あまりナビゲーションが良くないようだ。
 途中、今度はやはりコースを見失っている前田啓介に行き会う。スティーブ・ランドン、芦葭誠(あしよし)らと走ることになるが、芦葭は、アルベイヘールのビバークまであと少しというところで、川渡りに失敗して水没していた。リカバリーには2時間ほどもかかっただろうか、ビバークにはそのぶん遅れて到着した。

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