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tm125 144 EN Fi - レーシング専門メーカー その真骨頂を体感する - No.235より

このイタリアンメイドのエンデューロバイクが目指すのはただひとつ、トップレベルのコンペティションで勝てるマシンをエンドユーザーにまで届けること。その哲学がもっともよく表現されるのがこの小排気量クラスだ。世界に先駆けてのインジェクション化に挑戦者の魂を見る。

n_これは125モデル。プラスティックはブルー基調。144にはオプションのホワイト外装が装着されていた

これは125モデル。プラスティックはブルー基調。144にはオプションのホワイト外装が装着されていた

n_ハイスピードになるほど安定感を感じる強靭なシャーシ

ハイスピードになるほど安定感を感じる強靭なシャーシ


Test & Text : Hisashi Haruki
Images : Masanori Inagaki


単なる問題解決
その手段ではなく


 スポーツモーターサイクルに搭載される2ストロークエンジンのフューエルインジェクション化は、累進的に規制値を強める排出ガス規制への対応策という段階を越え、キャブレター方式では得られなかったライダビリティ、また利便性を獲得するに至った。マッティグホーフェンのKTMグループが、まずTPI(掃気ポートインジェクションシステム)として、250、300ccモデルを市販。2017年のISDEフランス大会には、すでに、ISDEライダー向けのレンタル車両にもラインナップ。2019年には150ccモデルにもこれを採用。tm Racingが、2019年に先行モデルとして250/300モデルを発売、2020年にはそのブラシュアップバージョンへと進化させている。
 フューエルインジェクションは、もちろんその制御系の完成度にもよるものだが、キャブレター式のようなジェッティングの手間がなく、幅広い環境下でセッティングフリー。さらに燃料オイルが分離給油のために、混合燃料を作る手間がかからない。センサー類とコンピュータ、インジェクションシステムを連動させた高度な制御によって、常に良好な燃焼状態を維持することができ、パワーデリバリーが安定しており、いわゆるカブった状態になることが少ない。低エミッションであることは、パワーデリバリーにも好影響なのである。今後、2024年に排気ガス規制はユーロ6の段階へと進み、ドイツ、北欧では2030年以降、ガソリンおよびディーゼルエンジンの販売を禁止する方針を打ち出しており、以降、先進国がこれに追随することになる。そうした中、極めて小さなマーケットである2ストロークエンジンのスポーツモーターサイクルの分野において、なお、このようなエンジニアリングが続けられている原動力は何かというと、これはもう、スポーツに向けて情熱というほかない。これは、その結晶だ。

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