No.229 より特集「人生最後の一台に選ぶバイクは何か 後藤武の場合」
写真提供/ 2ストロークマガジン
古今東西、世界にはいろいろなモーターサイクルが存在してきた。だが未だに「究極の一台」というものが存在したことはない。しかし、もし人生最後の一台を選べ、と言われたら、否応なく、それがあなたにとっての究極ということになるかもしれない。人類の危機とも言えるCOVID-19ショックの最中、ぼくは尊敬する数人のモーターサイクリストに、その究極の質問を投げかけた。
質問は次のような内容だ。
「もしも今、突然、目の前に神様が現れてあなたにこう告げたとします。
「残された人生で購入できるバイクはあと一台だけになった。しかも今すぐにどのバイクにするか決めないと、そのチャンスもなくなってしまう」と。
あなたは、どんなモーターサイクルを選びますか。
これは、ぼく自身がとても興味の持てる命題である。モーターサイクルは常に人生の最大のパートナーのひとりだったし、これらかも多分そうだ。それは、ライフスタイルを決定づける最大要因のひとつであり、どんなモーターサイクルを所有し、手元においておくか、というのは人格形成の一部なのである。
そう考えた時、最後の一台は、本当に重要な意味を持ってくる。ある人にとっては人生とは何か、という質問にも久しい。いや、みれはほとんど自分のことだ。
この特集は、ぜひ、自分なら何を選ぶかということを思い浮かべながら読んでほしい。そしていずれ、ぼくにあなたの「究極の選択」を耳打ちしてほしいのだ。
決して譲れない信念について
後藤 武
Takeshi Goto
元クラブマン編集長。90年代後半、スーパーモタードを日本に呼んだ張本人。自らもエアロバティック機を操縦する航空ジャーナリストとしても活躍。
バイク選びは恋人選びと同じである。人生最後の一台を選べということはつまり、生涯一緒に生きていくパートナーを探せということである。ただし、過去の女を選ぶことはできないが過去乗ったバイクを選ぶことはできる。これはとても悩ましい。バイクのことを考えているつもりが、いつの間にか過去の女のことを考えて眠れなくなってしまった。
「バイクを一台だけ所有するとしたら何を選ぶか」というのはバイクに乗り始めた頃からオレにとって大きなテーマだった。理想の一台は年齢や経験と共に変わっていく。20代の頃はXL500Sに純正のデザートキット(隠れ品番を知っている人だけ入手できた)を組んだマシンだった。ハーレーのXR1000こそ求めていたバイクだと騒いでいた時期もある。
30代でヨーロッパ製シングルの素晴らしさを知ってからはOHC時代のハスクバーナの過激さに夢中になった。バイクの使い方はオンロードがメインだが、オフの楽しさも知っているからこれを捨てることは出来ない。一台しか所有できないのであればオフロードを走れることは必須。なおかつオンロードも楽しいバイクということになる。バイク好きの友人達と酒を呑むとこんな話ばかりして盛り上がったものだ。
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