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「四国のラリーで体得したものが活きた6日間」杉村晋吾 No.244より

距離と時間。スピード持久力。エンデューロに取り組んでまだ数年の、決して若手とは言えないライダーが初挑戦でブロンズメダルを掴んだ。そのバックグラウンドには何かあったのか

Text Hisashi Haruki

縁遠かった6日間

 ISDEのことを知ったのは、モンゴルとか北海道4デイズも走っていた伊藤キヨハルさんを通じてです。伊藤さんのスゴさの根っこにISDEへの参戦経験(11回)があるって。どんなレースかな、って興味は持ってましたけど、ぼくなんかが出るようなレースではないとも思ってました。2019年のポルトガル大会に釘ちゃん(釘村忠)たちが、トロフィチームで出場するっていう時も、応援(スポンサー)はさせてもらったけど、少し縁遠い感じがしてたんです。今だったら「そんなら自分も一緒に走る」って言ったと思いますけど。当時はあまり関係ない感じでした。
 それからアフリカエコレースに参加して、JECにもフルシーズンで参加するようになって、だんだん、ISDEにも出てみたいと思うようになってきました。アフリカエコレースの拠点として、ルマンの近くにある菅原さんのガレージにお世話になっていたので、そのうちまたフランスで開催される時に、って思っていたんですが、2017年のISDEがフランスだったから、しばらくは無いと思っていたのに、意外に早くチャンスが来たって感じです。ちょうどコロナでアフリカエコレースも中止になって…、いろいろタイミングが揃った感じです。


長距離競技の感性

 ISDEもいろんな捉え方があると思いますが、ぼくにとってはスペシャルテストで攻めるというより、ラリーに近いですよ。完走するかどうか、っていうところでは特に、時間と距離の感覚を、身体でおぼえているかどうかが大事じゃないかと思います。USDEだとおおよそ8時間で200~250kmぐらいですね。いろんな道がありますけど、こういうところではどれぐらい体力が消耗して、必要なペースを維持するのにどの程度体力を出していけばいいか。
 マラソンみたいな長距離走では「スピード持久力」って言うんですが、その計算をしながら走るんです。
 1日目を走って、10分、15分っていう感じで遅着する。遅着のリミットが30分なので、あと10分遅れると失格っていうペースです。でも、これを維持していければ完走できるって計算しました。
 ただし、確実にペースを維持できれば、っていうのが前提なんです。だから、ちょっと遅れたからといってオーバーペースで体力を消耗しちゃったり、転倒してタイムロスしたり、スタックしたり、難所で無理したりとか…。こういうのはしょうがないんですけど、それに影響を受け過ぎないメンタル的な安定性が必要です。このペースでいけば大丈夫なんだ、っていう自信が。
 マラソンって、バイクのレースに比べるとテクニカルな要素が少なくて、だから実力よりも10パーセントどころか、ほんの数パーセントでもペースを上げるなんていうのは無理なんです。とにかく、自分の持っているスピード持久力を最後まで維持するしかない。
バイクも長距離になるほどそれに近くなってくると思います。ただ、テクニックの要素が大きいので、練習でレベルアップするスピードは早いですよね。

距離と時間の方程式

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