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No.112から - エンデューロの根本精神とは何か - XR250で世界タイトルを獲った男が見せた不屈の魂

これがエンデューロライダーというものか。

FIMインターナショナルシックスデイズエンデューロ・1999年ポルトガル大会。前日白煙を出し始めたXR250の4ストロークエンジン。その鍛造ピストンを朝10分のワークタイムで交換するという。小排気量スペシャリストのジャンマルコ・ロッシが見せた不屈のエンデューロ魂。


写真・文 / 春木久史

タンク、シートを外し、エキパイ、キャブレター、シリンダーヘッドカバーを外すまではあっと言う間だった。そこから少し時間がかかる。ヘルパーのアドバイスを無言で受けながら、ロッシは全神経をマシンに集中させて、修理を続ける。慎重にシリンダーを抜き取ると、やはりピストンの交換が必要であることがわかった。残り時間は4分 (本文抜粋)

Portugal 1999

 ISDEや全日本2日間エンデューロと同種の競技形態を持つ、いわゆるオンタイム制と呼ばれる競技の面白さ、エンデューロの醍醐味は、パルクフェルメシステムに凝縮されている。走っている時間を除いては、基本的には車両保管されており、メカニックも含めた第三者はおろか、ライダー本人でさえマシンに触れることは一切許されない。わずかに、スタート前の10分間と、毎日の最終チェックポイントから、パルクフェルメに入れるまでの15分間だけが、整備のために与えられている。整備が長引いて、スタート時刻に遅れたり、パルクフェルメに入れるのが遅れたりすると1分つき60秒のペナルティが課せられる。整備を的確にこなすのも、スペシャルテストを速く走るのも、ライダーにとっては同じように重要なことなのだ。もちろんマシンを整備できるのはライダー本人だけ。メカニックはブレーキのエア抜きやガソリン、オイルの補給などの限られた行為を除いては、マシンに触れることが許されない。自分の力で、それも限られた時間で手際よく修理、整備をこなす能力が求められる。6日間を走るということは、だから、一定のライディングスキルがあるかどうかということだけではなく、整備や時間管理の能力も含めたライダーとしての総合的な力量を試されることでもある。

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