見出し画像

「シックスデイズにかける」 - 滑川勝之 - No.236より

日本代表の重責と屈辱の2017年フランス大会。今年は単身、ウイルス状況下のイタリアへ。シックスデイズとの出会い、そして思い。エンデューロライダー滑川勝之に訊く。

Images : Masanori Inagaki



-- 今年のISDEイタリア大会には以前から出場する計画があったんですか?

滑川 : イタリア大会は昨年にも参加予定だったんですが、オリンピックと同じようにコロナで1年延期になってしまって…。今年は、と思っていたんですが、出入国でそれぞれ10日間自主隔離しなければならないということで半ば諦めていたんです。それで現地での準備期間も含めると、全体で40日ぐらいは休まないといけないので。エントリーの締切が5月31日だったのですがこれはダメだと思ってそのままにしていたんです。そうしているうちにイタリアからメールが来て、ワクチン接種していれば隔離期間無しで入国できる、と知らされました。それが6月6日だったと思います。通常のエントリーは終わっているけど、うちのチームでとっている枠があるからそれにいれてやる、って。それで急遽、出場を決めました。


-- イタリアにいい友人がいるんですね。

滑川 : グエリーノ・ザナルドっていう、たぶん62歳ぐらいだと思うんですが、おじさんのライダーで、以前に出場したISDEのアルゼンチン大会(2018年)で知り合ったんです。ファイナルクロスの時にジャージを交換したり、なんか仲良しになって。彼は、Jolly Racingのスポンサーとかも長くやっていることもあって「ZANARDO」って文字よくバイクについているじゃないですか、それでイタリア大会にスポンサー枠でエントリーできるから一緒に走ろう、っていってくれて。バイクもISDE仕様のものをレンタルしてくれるということで。GASGASのEC350F、4ストのサンゴーです。本当は、自分がずっと乗っているKTMのサンゴーがいいと思っていたんですが「ヴェローナのと同じやつがあるからGASGASにしろ、KTMとそんなに変わらないから!」って。まあ、同じですよね。サンゴーはずっと乗っているのでとても安心です。

1年延期されたイタリア大会へ。滑川はたった一人の日本人選手として出場する。写真はすべてISDE2017フランス大会より、稲垣正倫撮影

1年延期されたイタリア大会へ。滑川はたった一人の日本人選手として出場する。写真はすべてISDE2017フランス大会より、稲垣正倫撮影


-- なぜ今年のISDEに?

滑川 : ISDEに参加して走るのが好きだから、っていうのが一番ですけど、毎年、誰でもいいから、一人でもいいから日本人が参加していたほうがいいんじゃないか、って思うんです。前回の2019年は、せっかく釘村さんがゴールドメダル獲ってくれて、それで日本にもエンデューロライダーがいるってことが、また少し伝わったと思うんです。それを継続させていきたいな、と思っています。それがきっと今後、世界のレースに参加しようとする次の世代の人の役に立つんじゃないかって。パドックに日本の国旗を立てるのって、意味があると思うんです。ぼくみたいなライダー一人でも。

-- いろいろな競技があるなかでISDEを選んでいる理由とは?

滑川 : ライダーの祭典でもあるし、世界中のライダーが集まって、プロもアマチュアも一緒に腕を競い合えるところですか。いろんな人に会って、交流できるのもいいですし、走ることそのものも、とても楽しいしやりがいがあります。
 ISDEという競技があることは、少しだけ知っていましたが、実際に興味を持つようになったのは、2007年のSUGOに、ジョバンニ・サラが来た時でした。ああすごいな、行ってみたいな、と思うようになったんです。自分は速くもないしプロでもない普通のライダーだけど、そういうライダーでも世界中のライダーと一緒に走れるエンデューロがあるんだ、と思いました。それからエンデューロにもっと積極的に出るようになって、2014年のアルゼンチン大会に初めて出場したんです。阿部道夫さん、井上雄介さんと3名のクラブチームでした。その後、2017年のフランス大会、2018年のチリ大会に出場させてもらいました。

-- フランス大会は日本代表のワールドトロフィチームとしての参加でしたね。他のメンバーは内山裕太郎、鈴木健二、前橋孝洋。滑川さんは、初日にリタイアという結果でしたが、当時を振り返るとどんな気持ちでしたか?

ここから先は

2,579字 / 3画像
1998年に創刊。世界のエンデューロ、ラリーのマニアックな情報をお届けしています。

BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?