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BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記事を再編集して順次掲載。バックナンバーの…
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2020年9月の記事一覧

彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.37

著 / 山田徹 第六章 最終章 其の十三 発見吹雪に閉じ込められたものの、翌日は快晴だった。雪に覆われたモンゴルの大地の起伏が、それは美しく印象的だ。夏の記憶を何もかも覆い隠そうとしている。それにしても雪は美しい。いったん捜索チームはアルベイヘールに引き返すことにした。ラリーが終わって一ヶ月になろうとしていた。 アルベイヘールの警察署で署長らと会見した。そのあと市長の息子の警察官の家に招かれた。小学生の弟が自動車を運転して、母親を乗せて帰ってきた。

アンダルシアの古い都で - 亀畑清隆

札幌出身のフォトグラファーが白黒フィルムに焼き付けた、FIMインターナショナルシックスデイズエンデューロ、ISDEグラナダ2000の風景。 ●写真家 PROFILE 亀畑清隆 かめはた・きよたか 47才 北海道 駆け出しの頃はテントを背負って全日本モトクロスを追った。その後、国内外のオフロードレーシングをフォロー。BAJA、オーストラリアンサファリ、ISDEなど多数撮影。バックカントリースキー、スノーボードにも精通。現在も北海道を拠点に、さまざまなアウトドアアクティビティ

No.230より「最大の危機に直面する ENDURO GP」

ここ数年のENDURO GPは、すでに瀕死の状態だったという見方をする人が多いだろう。ここに来て、ENDURO GPを支えてきたプロモーターであるABCコミュニケーションズが、今季限りでプロモーター契約を終了するというニュースが飛び込んできた。今回、ABC代表のバスティアン・ブランシャールにインタビューした記事を掲載しているが、その前にこれまでの経緯について整理し、解説する必要がある。 Text : Hisashi Haruki プロモーターABCとは? ENDURO G

No.230より「ENDURO GPへの再挑戦 大神智樹」

2020年9月、ウイルス状況下でようやく再開したENDURO GP = FIMエンデューロ世界選手権に、大神智樹が再び挑戦する。その目的とは何か。。 Text : Hisashi Haruki 飯塚翼と保坂修一 合宿の目的は ちょうど今、合宿の帰り道なんです。保坂修一と飯塚翼、それから渡辺誉、ジュニアの青木琥珀も。去年ぐらいから、若手の彼らが集まってトレーニングしていて、それにぼくも呼んでもらえるようになって。今日はスピード練習でしたね。栃木の八方スポーツランドです。とに

彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.36

著 / 山田徹 第六章 最終章 其の十二 捜索難航ス九月になった。期待されたモンゴル人たちの捜索も空振りに終わった。 「一度日本に帰って、ご家族に会ってくる。状況を説明する。資金調達も必要だ」 なによりラリーそのものの後始末の支払いも、待ってはくれない。捜索の継続を指示し日本に飛んだ。日本では、テレビや新聞に追われることとなったが、数日で所用を整理し素早く関空に向かった。

「ポーランド2004」連載 エンデューロ・シックスデイズ 1994~2006、ライダーの理想郷を探す旅 その9

インターナショナルシックスデイズエンデューロ。毎年、世界各国の持ち回りで開催される国代表チームによるチーム対抗戦。世界中のアマチュアライダーが目標にする、オフロードバイクの祭典でもある。華やかなモータースポーツのイメージとはかけ離れた、ストイックとも言えるこの競技のなにが人々をひきつけるのだろう。 隣の芝生は青く見える、というか…外国の文化を見る時、ついつい理想化、純化して見てしまうことがある。だが、現実世界の人間は、どこも似たり寄ったりで、醜いくい面だってあるのが当然だ。

彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.35

著 / 山田徹 第六章 最終章 其の十一 ウランバートル対策本部 ゴールの日は、安堵感に包まれていたものの、いつにもない鉛のような疲労は、ホテルの部屋から一歩も出ることを許さないほどだ。まだ現場に残る者たちのことを思うと、バスタブに身を沈めることも、糊の効いたシーツにもぐりこむのも気が引けた。ましてレストランに出かけるなどもだ。現場のチームは、現地の警察の言う走行中の日本人ライダーを捕捉するまでは帰ることが出来ないのだ。そしてそのライダーが、万が一違っていたら、と考えると

「灼熱のブラジル2003」 連載 エンデューロ・シックスデイズ 1994~2006、ライダーの理想郷を探す旅 その8

インターナショナルシックスデイズエンデューロ。毎年、世界各国の持ち回りで開催される国代表チームによるチーム対抗戦。世界中のアマチュアライダーが目標にする、オフロードバイクの祭典でもある。華やかなモータースポーツのイメージとはかけ離れた、ストイックとも言えるこの競技のなにが人々をひきつけるのだろう。 ステファン・エバーツが初めて出場した6日間エンデューロがこのブラジル大会。彼の所属したベルギー代表チームは、ISDEには珍しいサンドのスペシャルテストで、水を得た魚の活躍を見せ、

No.230より KTMのヒストリーを素材にして「エンデューロバイクとは何か」を考察する。

Definity of Enduro Motorcycles 市販されるモーターサイクルの性能試験として発生したこの競技が、次第にオフロード競技的な外観を備え「エンデューロ」と呼ばれるようになったのはそんなに昔のことではない。また、それ以前に、この種のモーターサイクルが「エンデューロバイク」と呼ばれることもなく、KTMの機種名ではそれより先に、Six Days(1968年式)という名称が用いられている。まずはこのスポーツの代表的ブランドであるKTMの歴史から、エンデューロバ

No.230より SHERCOラリープロジェクトの近未来像

Shercoラリーチームのエース、元ENDURO GPジュニアチャンピオンのロレンツォ・サントリーノ。COVID-19によるロックダウン、自身の怪我、そしてShercoラリーチームが目指すゴールについて、今まであまり語られなかった本音を訊く。 才能を信じる 今のところ、幸運の女神、あるいはラリーの女神はロレンツォ・サントリーノの側にはいないのかもしれない。ISDEにおけるスペインワールドトロフィチームのメンバーであり、2010年のENDURO GPジュニアチャンピオン。その

彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.34

著 / 山田徹 第六章 最終章 其の十 捜索 捜索は夜を徹して続けられた。大会本部のゲルでは、集められた情報と各捜索チームとの衛星を通じた電話のやり取りや、無線交信で騒然としていた。広げられた広大な地図には、赤鉛筆で捜索範囲の消し込みがなされ、広大なエリアが少しずつ絞り込まれていった。 アルベイヘールの警察の捜索協力も得た。こうした活動にあたる軍の警備捜索チームの専門官も合流していた。バイクの目撃情報も寄せられ「まだ走っている」という観測がわれわれ捜索チームを支配していた

「チェコ共和国」 連載 エンデューロ・シックスデイズ 1994~2006、ライダーの理想郷を探す旅 その7

圧倒的に不利なマシンで6日間を制してきた、不屈の軍人チームの伝統。東欧のエンデューロはキツいという前評判から、期待と若干の畏怖を抱いてドイツからチェコに向かう。ドレスデン、エルベ河を渡り、いったんポーランドに入って北側からチェコに入国した。(本分抜粋) インターナショナルシックスデイズエンデューロ。毎年、世界各国の持ち回りで開催される国代表チームによるチーム対抗戦。世界中のアマチュアライダーが目標にする、オフロードバイクの祭典でもある。華やかなモータースポーツのイメージとは