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【Otonoha②】まさかの展開


みんな、号泣だった。


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迎えた、子どもたちと練習1日目。

あまり大声では言えないけれど、
どうしても行きたかった職場の運動会が午前中にあった。

5人で足を結んで進む、ムカデ競走と
久しぶりにタータントラック全力疾走のリレー。

くもりだったものの、太陽の光をあびて
からだを全力で動かして。

photo by me @bigsmile_photo_ (Instagram)

つかれたからだ
この後の打ち上げ

行かないとは言っていたけれど、
行きたいし、職場のみんなと交流したい。



たのしみにしていた舞台の本番。
正直、行きたくなかった。

3日前に、こんな大きなもやもやを抱えたまま、
わたしはどうしたらいいのだろう。
どうしようもなかった。

帰り道。
同期にこの子どもたちとミュージカルの舞台のことを話しながら、眠りにつき、電車にゆられた。

そうか、この体力消耗したなか、
子どもと関わるとなると、さらに体力が消耗されるのか。

普段、ちいさな子どもとふれる機会がなく、
どんなものかも忘れた。

ただ、赤ちゃんことばをつかうのは苦手。
自分をとりつくろうように感じて。
そんなのは苦手だった。


あぁ、どうなるのだろうか、
行きたくない、まぁ最後だからいいか。
そんなふうに心をなるべく軽くして、
それでもからだは重く走る体力もなく、
ひとり、あるいて会場に向かった。


着いた。
舞台上にみんな集まって、
ワークショップをしているようだった。
子どもたちがたくさんいた。

どきどき。

人見知りしないけれど、
さすがに役割も状況もわからず、
スタッフの友達が数人いた客席側に座った。

スタッフに背中をおされて、
舞台上に上がり、子どもとはじめましてを交わした。

まさかの、同じ名前の子がいた。
それをきっかけに、仲良くなった。
突然来たわたしに、拒否なんてひとつもせず
わたしを、すぐに輪の中に溶けこませてくれた。


小学生、中学生の子どもたち。
関わり方がわからなかったけれど、
子どもたちが、わたしを招き入れてくれた。
とても、居心地がよかった。

子どもたちと過ごす時間は、
今までは歳の差をリアルに感じていたからこそ
その歳に合わせられなくて
たのしくなくて、居心地がよくなかった。

でも今回は、わたしはわたしとして、
あなたはあなたとして、接することができた。

普段、病院でリハビリ職をしていて
おじいちゃんおばあちゃんと接していたからかもしれない。
歳の離れたひとと関わることって、
どこか似ている氣がする。

子どもたちが、かわいかった。
愛おしくてしかたなかった。

そんなこんなで、距離を縮められて、
子どもたちのおかげで救われた1日目だった。

photo by me @bigsmile_photo_ (Instagram)



その日の夜、みんなで最後の夜を過ごす。
その前に最後の舞台の通し。

コンビニで晩ごはんを買う。
その後は、それぞれタクシーで最後の通しをする場所に移動。

そのとき、
”倒れたって”

え、、大丈夫かな。

だいすきな友達であり、
この企画をたてる会社の社長。

身体的にも疲れがたまると、
こうなりやすい。

そばに行った。
普段、おじいちゃんおばあちゃんの患者さんの相手をしているから、
倒れやすい方向の介助位置にいるという
意識がはたらいた。

ぐったりして、話せない状態。
意識はあって、薬を飲んで、すこしずつ
いつもをとりもどしていく。

”どっちにしろ、お断りしようと思ってたの、
ごめんね!”

このことばをもらったひと。
大切でだいすきな友達。

あぁ、今、からだを支えている。
わたしの夜ごはんなんて、荷物なんて
ほっぽりだして、ただからだを支えている。

前にも、こんな状況には出逢ったことがある。
周りのみんなも、よくこうなることを知っている。

それでも、わたしがこのからだを支えたいと思った。
ここのだれよりも、からだのスペシャリストなんだもの。
そしてなにより、
わたしにとって、だいすきで大切な存在だから。

あぁよかった、
わたしは嫌いになったわけではなかった。


力になりたいと想えた。

たまたま、この企画に参加していた友達で
医師の友達が向かい側の道を通りかかった。

” 大丈夫〜?!”

” なにもないよーー!! ”

こちら側にいた、キャストの友達は伝えた。


無事、倒れた大切なひとは
同じシェアハウスに住むひとに連れて帰られ、
わたしたちはタクシーで次の場所に向かった。



それでもわたしはなにかあったらと心配で。
あの子が医師だと知っていたから。

倒れることはいつもと同じだとしても、
頭を打っていたと本人から聞いたから。

万が一のことがあったら
数時間後にお別れなんて絶対いやだから。

タクシーの中、ひそかに連絡をとった。
急いで状況を説明して、
連れて帰ってくれたひとにも連絡をとった。

うん、ひとまず大丈夫か。
すこし安心して、あとは任せた。


こうして、次の場所に着いた。
凄絶なのは、ここからだった。



キャストみんなで輪になって、
子どもたちのことを話していた。

そのはずが、氣づいたらみんなが泣いていた。
それぞれ、いままでのもやもやが溢れだし、
次々と、泣き崩れていくひとが続出した。

それは、キャスト同士でなく、
運営キャストに対するもやもやが多かった。

明日の本番に向けて、
たしかに、もやもやを抱えたまま臨むのはちがう。
でも、前日にこんな状態になってしまうのも、、

でも、こうなるべきだったんだ。
すべての出来事は起こるべくして、起こる。

わたしのもやもやだって、消えたわけじゃなかった。
言うこともできた。
それでも、わたしは言わないという選択をした。だって、これ以上、空氣をわるくしたくなかったから。
せっかくがんばってくれている運営メンバーを
責めるようなことはしたくなかったから。
ほかにも、わたしが言うことで影響をうけるキャストもいるかもしれない。
もう、わたしにとってはじゅうぶんだった。
そんな大したことじゃなくなったから
今回が無事終わるまで、もっていこう。

この子に寄り添おう、そのキャストのとなりで
こんなわたしの心も打ち明けた。

すこし、大人になれたのかな。
いつもだったら、我慢できずに言ってそうだった。


そこから、舞台上で通すと言いつつ、
みんなが立ち直るのは不可能だった。

運営キャストやキャストが何人も泣き崩れ、
通しができるどころではなかった。

しかたなく、できるキャストだけで
最後の通しを行った。
重い空氣を、なんとかうごかして。


そうして終えた1日目。

明日の午前中は子どもたちと練習して
夕方は観客もたくさんのなかで
大人だけのステージと、
大人と子どものステージがある。


みんな明日、集まれるのだろうか。

泊まる場所は、みんなが同じでもなく、
家に帰るひとがいたり、
あとは3つに分かれている。

わたしたちが泊まるメンバー4人。
みんな比較的落ち着いていて、
もうひとつの場所のキャストたちを心配していた。

また話すうちに堕ちていくのではないだろうか。
励ましあって、上がってこれればいいのだけれど。

同じ場にいないのだから、しかたない。
祈るしかできなかった。


キャスト全員が集まって、
無事、ステージを創れますように。

そう祈りをこめて、眠りについた。


つづく_


Otonohaこどもミュージカル Vol.3 ②

2023.10.8  Sun

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