『なろう系』とルサンチマン

小説家になろうは一時代を気づいたといえるサイトだといえるだろう。私も、高校時代は授業中パソコンを広げ『転スラ』を読んでいた。なろう系のテンプレと言えば転生ものである。前世で地味だった主人公が何らかの事件を経て転生し、来世でトンデモ能力を手に入れ無双するというのがなろう系や異世界転生ものと呼称されている。これを読んだ読者たちは、自分も転生してトンデモ能力を手に入れ異性に囲まれる生活を一度は妄想したであろう。しかし、私はひねくれているので一つの問いが立った。これは、ルサンチマンなのではないか。ルサンチマンは哲学者によって意味が少し異なるが、私のいうルサンチマンはニーチェのものである。(以下引用)「このルサンチマンは、あるものに本当の意味で反応すること、すなわち行動によって反応することができないために、想像だけの復讐によって、その埋め合わせをするような人のルサンチマンである。」『道徳の系譜学』
なろう系作品の中では、来世で登場するキャラクターや社会を前世と対比させ、前世で自分が嫌いであったであろう人物をトンデモ能力で痛快に倒したり、世の中の不条理を正そうとするわけである。私は主人公がルサンチマンを持つ人であると考えているわけではない。この主人公を自己投影している読者たちがルサンチマンを持つ人だと考えている。読者たちは日ごろ日常生活で抱えた鬱憤をなろう系作品を見ることで、まさに彼らの想像上の世界で倒しているわけだ。だから、若者が腐敗していると思っているわけではないが、ニーチェ的世界観から考えると、ルサンチマンを抱えるものは弱者であり奴隷であるる。読者たちは、妄想で終わらせるわけではなく、現実に幻想を持ってきて行動することでルサンチマンから脱却できる。
なろう系作品がヒットしている背景には若者たちが未来や現在に対して悲観的であることが大きいと考える。自分たちが不幸なのは世間が悪い、周りの人間が悪い。そのように考えざるを得ない世の中になっているのには異論を呈さないが、諦めて待っていること自体が弱者の本質だと述べている。我々はこのくそったれの世の中に復讐の一歩を踏み出さなければ現状はいつまでも変わらないのだ。

参考文献
ニーチェ『道徳の系譜学』光文社


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