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伊坂幸太郎の魅力について

伊坂幸太郎の「ペッパーズゴースト」をAmazonオーディブルで聴き終えました。

私は元々伊坂幸太郎が好きなのですが、「ペッパーズゴースト」でその気持ちがさらに高まりました。

私が思うに、伊坂幸太郎は「読書嫌いの人を読書好きにする」そんな魅力があります。

その魅力について、聴き終えたばかりの「ペッパーズゴースト」をもとにお伝えしていきます。

伊坂幸太郎の魅力①:伏線回収

まず何よりの伊坂幸太郎の魅力は伏線回収のうまさにあると思います。

伏線回収は小説の醍醐味の一つですが、伊坂幸太郎はそれがとにかくうまい。

「ペッパーズゴースト」でも登場人物の過去にビール売りのバイトをしていた話が出てきます。
私は聴いていた時はこちらにキャラクター像をしっかり捉えてもらうための、あくまで本筋には関係のない話だと思っていました。
それも物語の後編でしっかりと絡めてきて、「この人のこの話いる?」なんて考えていた自分をぶん殴りたいです。

また、伊坂作品には珍しく冒頭に人物紹介がありました。
オーディブルで聴いていると問答無用でそのページが読み上げられ、「いやいや、ばーっと紹介されても覚えられるわけないでしょ。律儀に読まないでよ。」
とか思っていましたが、この人物紹介すら意味があったと。
これは最早お手上げです。笑

(念のためこれから聴くor読む人へ忠告ですが、全て覚える必要はありません。人物紹介があったと言うことだけが意味があります。)

伊坂幸太郎の魅力②:限定的な特殊能力

伊坂幸太郎の作品にはよく、現実ではあり得ない特殊能力を持った登場人物が出てきます。

特殊能力を持ったキャラクターは小説でも漫画でもたくさんいます。
その中で伊坂幸太郎が魅力的なのは登場人物に持たせる能力が「限定的で役に立ち辛いこと」。

ペッパーズゴーストに出てくる檀先生も特殊能力を持っています。
それは作中では「先行上映」と言われる能力で、他人の唾液や飛沫が体内に入ると感染し、その相手の翌日の印象的な出来事を見ることができる、といった能力です。

他には「魔王」という作品の主人公は「腹話術」といった、数メートル離れた相手にこちらの思うことを喋らせる能力出会ったり、「フーガはユーガ」では誕生日に双子が2時間おきに場所が入れ替わるといった能力を持っていました。

どれも現実ではありえない能力ですが、その使い所が難しくその能力だけで全て解決できるほどのものではありません。

しかし、その能力があることで読者の予想を超える展開に持っていける。
そして現実ではないことを書けるのがフィクションであり、伊坂幸太郎の小説の魅力とも言えます。

伊坂幸太郎の魅力③:読後の爽やかさ

どんな物語にも何か問題があり、エンディングは大きく分ければハッピーエンドかバッドエンドの2種類になります。

伊坂幸太郎の作品は全てとは言えませんが、そのほとんどがハッピーエンド寄りで終わります。

ハッピーエンドばかりでは単調だという人もいるかも知れませんが、個人的にはどんな作品もハッピーエンドで終わってくれていいと思ってます。
映画でも本でもゲームでも、何時間もその作品に費やした挙句バッドエンドで不快な気持ちになるなんて私はごめん被ります。
FF IXのような大団円の終わり方が一番です。

閑話休題

先ほどあえて「ハッピーエンド寄り」と表現したのはいわゆる大団円の終わりではなく、おそらくこれからは良い方向に進んでいくだろう、という話の締め方が多いからです。

これはネタバレになるので詳しく書くのは控えますが、伊坂作品の多くはラストは伏線回収をしながら良い方向へ進み、かつその後を作品中で描き切りません。

今回聴いた「ペッパーズゴースト」しかり、最近読んだ中では「バイバイブラックバード」なんかもそうでした。

最後まで書かず、それでも話の流れ的には「こうなるんじゃないか、こうなって欲しいな」といった感想を読者に持たせ、話が終わった後も読者それぞれにその後のストーリーを想像させてくれます。

その想像が基本はハッピーエンドの方向になるのでとても読んだ後に爽やかな気持ちになる、それが伊坂幸太郎の魅力です。

まとめ

伊坂幸太郎の小説は、ノンフィクションを最大限に活かした魅力的な作品が多いです。

個人的にいわゆる純文学ではなく、絵がないだけで話の展開は漫画に近いと思っています。
(ちなみに先ほど触れた「魔王」は実際に少年サンデーで漫画化されています。)

読書が苦手、特に漫画は好きだけど読書が苦手な方にはぴったりの作者かな、と思うので是非読んでみてはいかがでしょうか?


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