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2019年ルヴァンカップ決勝「川崎フロンターレVSコンサドーレ札幌」
見返したい名試合。
このお題を見たときに真っ先に浮かんだのがタイトルにある試合だ。
私は川崎フロンターレのファンになって10年以上のファン歴なのだが、この日も当然フロンターレの応援をしに現地の埼玉スタジアムに足を運んでいた。
このルヴァンカップ(旧ヤマザキナビスコカップ)はフロンターレにとっては悲願のタイトルの1つだった。
というのもこの前々年の2017年にJリーグを制覇し悲願のクラブ初タイトルを手にし、翌年には勢いそのままにリーグを連覇。
常勝クラブという貫禄を持ち始めていたがフロンターレは一度もカップ戦のタイトルを手にしていなかった。
特にルヴァンカップは何度もタイトルへ手にかけつつも逃していたタイトルであった。
2000年、2007年、2009年、2017年と決勝に計4度進出しているものの全てタイトルを逃していた。
私は2017年のセレッソ大阪との決勝戦も埼玉スタジアムで観戦をしてタイトルに手が届かず涙する選手たちの姿を目にしていた。
フロンターレはリーグは勝てもプレッシャーのかかる一発勝負では勝てない
そんな不名誉なイメージがあった。
5度目の決勝の舞台、悲願のカップ制覇の期待と、また逃すのではないかという不安の両方を胸に抱えていた。
繰り返される歴史
フロンターレがカップ戦決勝で今まで勝ててなかった理由がある。
それは4度のルヴァンカップ決勝で一度も得点を上げたことがなかったのである。
フロンターレというクラブは常に攻撃力が売りのチームであるのに関わらずルヴァンカップ決勝では1得点も上げたことがなかった。
フロンターレの在籍が長い選手ほどこの負の歴史をプレッシャーに感じている選手も多かったはず。
しかし私はこの不名誉な記録も今回は打ち砕かれると予感していた。
それはこの年に補強したブラジル人フォワード、レアンドロダミアンの存在だ。
ブラジル代表の経験もある彼は海外のビッククラブでもプレーの経験のある実力経験の両方を兼ね備えた選手である。
クラブの歴史とは無縁のダミアンがきっと無得点の呪縛を打ち破ってくれると信じていた。
攻撃を売りにする両チームの対戦となり決勝戦には珍しくお互い序盤から積極的に攻撃をしていく。
前半10分。
コンサドーレにサイドを突破されフロンターレは先に失点してしまう。
早い時間での失点に私は一昨年のセレッソ戦をフラッシュバックしてしまった。
その10分後、フロンターレにも超決定機が訪れた。
細かくパスを繋ぎゴール前へクロス。
後は押し込むだけという場面でレアンドロダミアンが放ったシュート。
ポストに弾かれてしまった。
あのレアンドロダミアンでも決まらなかった。
歴史を動かしたのはまたしてもこの男
超決定機を逸したフロンターレであったがその後も何度も果敢に攻撃していく。
しかしことごとく決まらない。
0−1のまま前半終了に差し掛かり
「ああ、今回も得点できないのか。」
そう感じていたフロンターレサポーターは私だけではなかったと思う。
しかし前半終了間際、そんな嫌なムードを断ち切る待望の時が訪れた。
前半48分フロンターレのコーナキック。
ファーサイドに流れたボールが阿部浩之の元へ。
冷静にトラップをして角度のないところから蹴り込んだシュートがゴールネットを揺らした。
5度目の挑戦にしてやっとの得点の瞬間であった。
2017年にガンバ大阪より移籍してきた彼は奇跡の逆転優勝を決めた大宮アルディージャとの試合(フロンターレ5−0アルディージャ)でも彼は早々に得点を叩き出していた。
今回も彼はプレッシャーなどどこ吹く風といった様子で大仕事をやって退けたのである。
希望、絶望、また希望
前半ラストプレーで追いついたフロンターレは最高の雰囲気で後半戦へ臨んだ。
その勢いそのままに後半はフロンターレがペースを握る。
ペースを握るも得点を奪えない中、64分中村憲剛、73分小林悠を投入し勝負をかける。
そして迎えた88分。
大島からの芸術的なループパスに反応した小林悠が胸トラップから振り抜いた左足のシュートがゴールネットを揺らした。
揺れるフロンターレスタンド。
ついに逆転。後半の残り時間もほぼない。
「ルヴァンカップ初制覇。」
時間的にも誰もがそれを確信していただろう。
そのまま試合が進み90分が終わりアディショナルタイム5分の表示。
95分コンサドーレ札幌のコーナーキック。
ここを凌げば優勝。
しかし、そうはならなかった。
コーナーキックから相手選手のヘディングシュートがゴールネットを揺らしてしまった。
歓喜に沸くコンサドーレサイド。
一方起こったことが理解できず言葉も発せないフロンターレサイド。
そしてそのまま後半終了の笛が鳴る。
掴みかけたタイトルがまたしても遠のいてしまう。
気を落とすフロンターレに更なる不運が襲う。
延長突入後4分。
守備の要でもある谷口彰悟が決定機阻止のジャッジを下され一発退場。
それだけでも絶望的であるのに、その後のフリーキックを直接叩き込まれてしまう。
一度は逆転し勝利を掴みかけたはずであった。
それが延長線で再度逆転されしかもこちら一人少ない。
絶望
そうとしか形容できなかった。
しかしフィールドの選手たちは違った。
10人になってからのフロンターレは猛攻撃を仕掛ける。
どっちが10人か分からないくらいの攻勢っぷり。
その姿を見て徐々にもしかしたらいけるんではないか、サポーターはそう感じていた。
その予感が実現する。
迎えた109分、フロンターレのコーナーキック。
中村憲剛が放ったボールを山村が折り返し小林悠が押し込む。
10人のフロンターレが延長後半で試合を振り出しに戻した。
この試合一の盛り上がり。
フロンターレサイドはもはや優勝したかの如く歓声を上げる。
逆転し逆転され再度追いつく。
こんなシーソゲームは滅多にお目にかかれない。
観客たちの感情はジェットコースター並みに上下されもはやついていけない状況であった。
得点後はコンサドーレがまた攻撃を仕掛けてくるも10人のフロンターレはなんとか凌ぎそのまま延長戦が終了した。
勝負の行方はPK戦に委ねられた。
名勝負に相応しい最後
迎えたPK戦。
フロンターレのゴールを守るのは新井章太。
フロンターレには2016年に加入し2022年現在も正ゴールキーパーに君臨する元韓国代表ゴールキーパーのチョンソンリョンがいる。
しかしこの試合は彼が調子を落としていたこともあり新井が決勝も含めルヴァンカップ全試合でゴールを守っていた。
PK戦、フロンターレは先行となった。
4人目までお互い譲らず成功。
迎えた4人目、車屋紳太郎が放ったシュートはクロスバーに嫌われる。
コンサドーレの4人目はPKに成功。
崖っぷちに立たされたフロンターレ。
5人目のキッカーは家長昭博。
外せば負け。
私だと吐いてしまうくらいのプレッシャーの中家長は普段と変わらない態度で冷静にゴールネットを揺らした。
さすがとしか言いようが無い姿であった。
しかし追いついたもののまだ首の皮が一枚繋がっただけ。
コンサドーレの5人目。決められれば負け。
しかしここからが新井の時間。
ショウタイムの始まりだった。
札幌5人目、ゴール左に放たれたシュートを新井が横っ飛びでセーブ。
フロンターレがまたしてもスコアを振り出しに戻した。
PK戦の6人目からはサドンデスとなる。
フロンターレの6人目、長谷川竜也。
サドンデス一人目のプレッシャーがかかる場面も冷静に決める。
コンサドーレ六人目、外したら負けとなる場面。
コンサドーレの選手がシュートを撃った。
ボゴォ
ゴール左に低空で飛んだボールを見事に新井がキャッチ。
歓喜の瞬間。
巻き起こる歓声。
新井に抱きつきにいくフロンターレイレブン。
ラグビーよろしくキャッチしたボールを持ったまま駆け寄ってくる選手を避けつつ走る新井。
そしてハーフラインでボールとともにダイブする新井。
それはまさしくフロンターレの悲願のルヴァンカップ制覇を知らせる完璧なトライだった。
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