創作その2.「亀になったけちんぼ姉さん・名古屋弁編」 2018年版から2022年改訂版。その1
ドキュメントの断捨離をしていたら、すっかり忘れていたへなちょこ台本が出てきました。2018年に書いたもので、ルーマニアのお話集「りこうなおきさき」野中の「かめのせなかはなぜまるい」を下敷きに、勝手に名古屋弁に直そうとしていたものです。
今読み返してみると、いや全然だめ。
そして、もうこっちに来て12年目に入ったというのに、アウトプットもインプットも不足しているため、一向に上達しません。名古屋に来ると決まったとき、名古屋弁とのバイリンガルになると決め、何冊も本を読んだというのに。
これはあれですね、私がよく生徒に言うように、
語学は、ターゲット言語を話す恋人を得ると、えげつないほどに急に上達する
これなのですが、私はもう既婚者なので、名古屋のイケメンに人たちには全然相手にされないのです。
独身だったとしてもされないけど。
で、今回読み返してみて、これはいくらなんでも間違っている、というところを一生懸命直してみました。
ですが、どう考えても、もともと知らないので直せないところは、変なままですし、語彙も不足なら語尾変化もだめだめです。
ネイティブの方は、お腹立ちなさらず笑って許していただき、それ以外の方は、これが正しい名古屋弁とは絶対に思わないでくださいね。
では、はじまりはじまり。
【亀になったけちんぼ姉さん・名古屋弁編】
登場人物
おじいさん 実は神さま
優しい妹
けちんぼなお姉さん
・・・・
鳥の声とともに幕が開く。
姉妹の住む質素な家の台所。
妹がせっせと床を掃いている。
ナレーション:昔あるところに、働き者で親切な妹と、怠け者でけちんぼの姉が二人で暮らしておりました。
姉:あんたぁ、それ終わったらでええでねぇ・・
妹:うん? なんだね姉さん?
姉:ちょっとこっち来て、ふくらはぎもんでくれん?
ゆうべちっと、踊りすぎてまって・・。
妹:はいはい。これだけやってまうで、まちっと待っとってねぇ。
ー この会話の間に、ボロを着たおじいさん、実は神さまが 上手よりよろけ出てきていて、すがるようにして家のドアを叩く。
妹:はいはーい。誰かねぇ、こんな朝早くに。
はいはい、今行くでねぇ。
ー 妹、箒を立てかけ、急ぎ戸口へ出る。
妹:はいはい、何か御用かね。
ー おじいさん、妹の顔を見て、口をぱくぱくさせるのみ。
すぐによろけて膝をついてしまう。
妹:あらまあ、大変だがねぇ!
おじいさん、おじいさん!
まあ、しっかりしてちょう。
おじいさん もしかして、
おなかが空いてるんでにゃあかね ?
ー おじいさん、ガクガクと頷く。
妹、おじいさんの両手を取って立たせ、肩を貸して、家の中に導きながら・・
妹:お姉さん、ちょっとちょっと、そこ空けたってちょう。
このおじいさんが大変なんだがね。
なんだかでら、ひもじくてあらっせるようで・・。
姉:ええ〜、なぁにぃ・・勘弁してちょう。
むやみに浮浪者を家に入れたらかんて、
ついこないだも お上からお触れがあったばっかりだがね。
・・うわ、くっさ!
妹:お姉さん、
そんなこと言ってるときだにゃぁでしょう。
このかた、立っていられにゃあほど おなかがすいて、
お疲れなんだがね。
ー 姉、渋々立ち上がる。
妹:さ、おじいさん、ここへすわったってちょう。
お姉さん、お水持ってきたって・・
姉:あ、はい。
(ひとりごとのように)
あ〜あ。水ぐらいで済めばええが・・。
ー 姉、嫌そうに水を茶碗に汲み、
なるべくおじいさんから遠いところから
腕をのばすようにして妹に渡す。
妹:ありがと、お姉さん。
さ、おじいさんまず、これを飲んでちょう。
今すぐ、何か作るでねぇ。
・・けどまあ、朝早くてまだお店も・・。
おじいさん、すぐにパンを焼だで、
ちょっとだけまってちょう。
ー おじいさん、目をつぶったまま頷く。
妹、大きくて深い小判形のパン捏ね桶を大きなテーブルにのせ、
中に 小麦粉を入れ、水を注ぎ、塩を入れ、こねて丸いパンを3つ作る。
板にパンを並べて、その上から濡れ布巾をかぶせ、しばらく待つ。
妹:おじいさんね、そこでは窮屈でしょう。
さあさあ、むさ苦しいところだがねぇ、
私の寝床に横になってちょう。
パン種が膨らむまでまだ少しあるで、
お休みになっとってねぇ。
ー おじいさん、妹に導かれて寝台に横になり、向こうを向く。
妹:少しでもお休みになれるといいが・・。
お姉さんお姉さん、かまどに火をおこすで、
申し訳にゃぁけど、ちょっと外へ行って、
ホダ木と薪を取って来てちょーせんか。
姉:あーあ、めんどくさゃあ。
なんであんたって人は、こういうときになると、
妙に張り切るのかねぇ。
うちだって、お金がうなってるわけじゃないんだがね。
きいとる? わかっとりゃーすの?
ー 妹、姉に構わずにふきんをちょっと持ち上げてパンのようすを見たり、
おじいさんに毛布をかけなおしたり、
甕から薬缶に水を汲んだり、まめまめしく立働く。
姉、外へ出て、ホダ木と薪を外から抱えて来て、
大義そうにかまどの前に投げ出す。
妹:ありがとう、お姉さん。
ー 妹、手際よく火を起こし、ホダ木を重ね、薪を置いて火を起こす態。
妹:あとねお姉さん、庭に鶏が隠してる卵、
ちょっと取って来てちょうでゃあ。
姉:まあまあ、人使いの荒いこと。はいはい。
ー 姉外へ行き、カゴに卵を入れて戻ってくる。
チーン、と時計のチャイムがなる。
・・・続きます。
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