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エッセイ268.飛行機や空港が苦手

私は苦手なことはとことん苦手ですが、特に飛行機に乗ることと、空港が怖くて気が重いです。一人旅や、一人で子供二人を連れて飛行に乗って移動したことは何回かありますが、怖い思いや、びっくりしたこと、それから失敗もありますので、できるだけ一人で行きたくありません。

普段の帰省では、面倒見のとてもいい夫が、私がどこかでいなくなってしまわないよう(だって、海外では回収が大変です)、一緒に行ける時には、
遠足の日の幼稚園の先生のように、きめ細かに付き添ってくれます。
そのため却って、ますます苦手感が増しました。

今日は飛行機や空港にまつわるお話を少しします。


【不思議だったフランス人のお姉さんの行動】

小さかった子供二人を、通路を隔ててB、C席に座らせました。
私は子供に目の届くよう、すごく早くチェックインをして、通路を隔てたD席にやっと席を取ったのでした。昔はネットでチェックイン、同時に席を指定という、便利なことはなかったのです。
ああ、やれやれ・・と思っていたら、E席、私の右隣ですね。そこに座っていたお姉さんが、フランス語訛りのきつい英語で私に向かってこう言うのです。

「おそらく、あなたと私は席を替わるべきであろう」
プロバプリー、ユー アンド アイ シュッド スウォップ シーツ。

は、はい? 😅

私は思いました。

そんなことを、それまでに言われたことはないし、
You and I should swap the seat.
と聞こえたようだが、さすがに should はないであろう。
私の聞き間違いであろう。
たぶんこのお姉さんは、気分が悪くなったとかそういうことで、
私にお願いをしたのだが、英語が私よりへたっぴなので、そういうふうになってしまったのであろう・・・。

不本意ながらも、赤の他人にこんなことを頼むからには、すごく困っているのでしょう。
大いに同情して、替わってあげたのですが、フライトは長い。
仁川空港からオークランド空港まで11時間半であります。
そしてお姉さんは、その後、ノリノリでイヤフォンで音楽を聴いたり、
何度もワインをお代わりしたり、空の旅を楽しんでいます。
あ、あれ?
・・そこでようやく気がつきました。
最初、通路側のDに私、Eにお姉さんでした。
そのお姉さんの隣にアジア系のご婦人が二人座っておられ、
割とよくあることですが、割と、お声が大きい。

わかりました。お姉さんは私の顔を見て、このお二人の一行だと決め込んで、
「お隣に座ればいいではありませんか」
ということを、私におっしゃったのでした。

私はヘッドフォンで音楽を聴いているお姉さんをちょんちょんとして、

「エクスキューズミーなのですが、
私は自分の子供と、通路を挟んで座るためにこの席を取りましたので、
やはりもとに戻らせてください」

そして、すごく小さい声で、
(ちなみに同じ列のお二人と私は、一行ではありません)
と言いました。

お姉さんは、ものすごくむっとした顔で、
(そりゃそうか。今それ言うなら、
もともと替わるなYOと言いたくなるかもしれませんよね)

ふむ!

と鼻を鳴らして立ち上がり、私も立ち上がって通路に出ますと、
彼女はどすんと、自分の席に戻りました。
その後の気まずさは、若かったので、ひとしおでした。
今でしたら、席を替われと言われたならば、
「そういうことはフライトアテンダントにお願いします」
と絶対言うでしょう。


【空港で恥をかいた件】

次は空港です。今年の帰省では、私一人で行きも帰りもシンガポール乗り換えでした。
荷物はセントレアで積まれたら、勝手に積み替えてくれて、到着地で受け取ればいいのですが、手荷物チェックとボディチェックは、いちいちありますね。
履いている靴によって、脱ぐことになったり、
ショルダーとバックパックに1台ずつ入っているiPadの片方を出し忘れたり、
うかうかと液体を持っていて、ビニール袋に入れ替えたり。
今回は、カウンターでは四種類ぐらいの書類を見せなければならず、
私はただでさえ緊張してテンパっていました。

どこかの地点で、ポケットのコインを出し、液体の入ったジップロックを出し、iPad を出し、機械に荷物が通過する直前に思い出して、もう一台のiPadを出し・・と、出しまくって、荷物と一緒に前へ進みました。

するとなぜかわかりませんが、コロコロベルトコンベアーが止まり、荷物が出てきません。こっち側に待っている人も、あっち側にいる人も、一様に首を伸ばして、ちょっと心配顔。
時間はありますのでそれはいいのですが、見回してみますと、コンベアーがUターンする当たりのデスクに、難しい顔をした係員の皆さんがいて、そこのデスクでポケットの中身を出したり、座って書類に記入している人たちがいます。
そうか、コロナ禍でようやく始まっている空の旅、いろいろ厳しいのだな。
そう思ってさらに見ていると、コンベアの曲がり角に張り紙がありまして、

あなたのトレイをここに置きなさい

と書いてありました。
ここ、というのはその、むずかし顔の人たちのいるちょっと手前です。
なるほど、コロナ以前と違い、赤外線か何かでざっと荷物を調べた後も、さらに人力で調べるのですね?
私は、そう思ってしまいました。
子供らや夫と一緒だと、そういうことを私が口にすると、
「ちがうちがう、これはね・・」
と、的確な答えが返ってくるのですが、この日はあいにく私一人。

「ひとりでできるもん」モードでテンパリストになっていますが、心を落ち着けて、「そこ」へ、荷物を乗せたままのトレイが出てきたのを、よっこらしょ、と置いたんですね。

と、数秒後、すごく遠いところから、係の女性がかなりのスピードで駆け寄ってきました。そして、私に向かい、

あなたはなぜ、あなたの荷物を、ここに置いたのですか?

と言っていらっしゃいます。

あ、違った?

違いました。

張り紙は単に、空いたトレーを、なんだったらここに置いてくれたら嬉しいなということで、お願いするポスターでした。
で、そこに数個の空のトレイが重なると、いきなり穴が開くかどうかして、トレイがそこへ消えて、回収されていく機構だったのです。
お姉さんは、私の返事を待たず、ぱぱぱっと私の荷物を取って私に渡してくれました。

微笑んでくれていましたが絶対に、
(このおばさん変)
と思ったのは確実です。

その部分に Tray hopper とか、(今ちょっと不確かですが・・)
ステッカーが貼ってあって、いかにも、
数枚溜まったら、ガッシ〜ン! 
と、トレイが奈落に落っこちていく感じでした。
本当に危ない危ない。
恥ずかしくて誰にも言えませんでした。
今、書いていますけれども。


【ターバンの人】

最後ですがやはり今回ですね。
シンガポールからオークランドへの九時間半の飛行機の旅。
一生懸命ネットでチェックインをして、通路側の席を取ったのですが、その私の右隣が、大きなターバンを巻き、胸板も厚く、ボディビルダーのような立派なお体のシーク教徒の若人でした。ターバンとマスクの間の濃く、つぶらな瞳で、かなりのイケメンと見ました。シーク教徒は、映画「イングリッシュ・ペイシェント」にも重要な役で出てきましたが、昔から戦士の部族として有名で、体格の良い方が多いそうです。それで、絶対にわざとではないのですが、この方が普通に座ると、肘掛けは両方ともこの方が使うことに。そして、本当に苦しそうでしたが、肘掛けの上からは立派な肩と二の腕、下からは立派な太ももが境界線を越してきて、私に密着し、私を圧する勢い。そして、この方が眠っている間ですが、半分の時間は私の方へ、半分の時間は反対側へ、寄りかかってしまわれます。そして、私の方へ来ている間は、その大きなターバンが私の顔の前にありました。ときどき、そーっとやさしく押し返しましたが、あちら側のお隣の人もそうしているらしく、彼はやがてまた、私の方へゆっくりと戻って来るのでした。
私、考えました。この方よりはるかに身体が立派な力士のみなさんは、この小さい席に収まるのだろうか。いや収まりますまい。

帰りのフライトですが、私は万一を考え、エコノミー席の中でも一番前、赤ちゃんを寝かせるバシネットに面した列の通路側を取りました。普通は、席が一つ二つ空いていても、赤ちゃんのために、ぎっしり詰めることはあまりないと聴いていたからです。
そして、果たして、空港でのチェックインのときに、かのシーク教徒の若者が私の後ろでチェックインをしていました。席は全然離れていました。

その話をしましたら夫が
「それは君、ターバンとマスクと髭で、
君の目には同じ人に見えただけではありませんか?」
と言いました。

「日本人はみな同じに見える」
と言われてむっとしたこともあります。
私も大いに反省しました。


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