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日本語教師日記47.法則がわかれば怖くない(7)「同じです」と言いたくても我慢①イントロ


日本語を教えていて、気持ちを引き締めなければならないときがあります。

それは、聞かれたことがわからなかったときです。
どうするかはとても大切です。

「ば」と「たら」はどう違いますか。どう使い分けますか。

とか、

行く? と  行くの? の違いはなんですか。

とか、他にもありますが、自分がよくわかっていないと、言葉ばかり多くなって、必要十分な説明ができないことがあります。
(今はこの辺の理解と説明は大丈夫です(^_^;))

私は最初の頃、「その場で答えないで、もちこたえる」ということができませんでした。
わからないのを知られたくない気持ちが働いて、その場で適当に答えてしまい、つっこまれて沈没、ということが、少なからずありました。
あとで「あ〜、嘘教えちゃったかも!」と冷や汗を流すことも。
鳴呼、もう帰らないあの夏の日・・・。(遠い目をする)

その苦い経験から、わからない場合には、「次のレッスンでお答えします」と、
持ち帰るようにしていた、という時代があります。

でもそれは駆け出しの頃、プライベートレッスンに限られました。
クラスレッスンは複数の教師で回り持ちで教えることが多かったですし、
初めに予定された進度というものもありますので、余計なことはできません。
かといって、教え不足の状態で次の講師へ投げることはできません。

クラスレッスンでは、「あとで」もよく言いました。

生徒たちからは、
「先生たちはいつも、あとで、と言う」
と、不評でしたが、これは必要なことでもあります。

理由は、そのクラスでそのことは、まだまだ早いということがあります。
そのレベルでその疑問に答えるための言葉を相手が持ち合わせていないとか。
(クラスレッスンでは、特定の外国語を媒介に教えることはできません)

習いはじめは、疑問でいっぱいですので、質問したいことはたくさんあるのですが、全部に対応しているとレッスンが滞ります。

いずれ近い将来、日本語での説明が理解できる力はついてくることなので、
ちょっと我慢して、しばらく待っていただきます。
それが「あとで」です。

自分が答えられないので言う「あとで」は、「悪いあとで」。
生徒のためを思って言う「あとで」は、「良いあとで」ですね。

しかし、いつまでもそれでは、生徒に信頼してもらうことができません。
そこで、可能なら、クラスであっても、確信のあることは短く、しっかりその場で教えます。
その上で、「みなさんには少しむずかしいです。あとでたくさん練習します」
と言うべきです。
相手は大人ですので、あとで・あとでばかりでは、欲求不満が溜まりますね。


しかし、私が駆け出しの日本語教師の頃から、自戒していたことがあります。

それは、ちゃんと違いがあるのにもかかわらず、自分が教えきれないために、
(そして、たいして違わないと自分で思ってしまうために、
ということはつまり、自分がわかってないために)

「同じです」

と言ってしまうことです。

現実には、今その違いをしっかりと教えても、
そのときに頭でわかっても、使いこなせないし(定着しない)、
ということが、大変に多いです。

教えればいいというものではなく、提出順も大変に大事です。


でも、「同じです」は私は、一種の職場放棄だなと思ってきました。

私は、ではどうするかというと、正直に言うようにしています。

「はい、違いはあります。意味もニュアンスも違います。
    でも今それをお教えすると、枝道がすごいことになりますが、よいですか?」

脅かすわけではないですが、正直そう思うし、そう言います。

「その沼に、私と一緒に踏み込みますか?
  それはあなたのチョイスです。
  行っちゃいますか?」

ほとんど100%、行っちゃいますとおっしゃいます。

日本語だけでと特にリクエストの出ている人には、

「英語でないと教えきれないので、英語でいいですか?」

と断って、力一杯教えます。

この辺が、プライベートレッスンの面白さとやりやすさです。



次回お話ししたいと思っているのが、

「おいしいです 」と 「おいしいんです」
「いかない?」 と 「いかないの?」

あたりについてですが、日本語の先生たちの中に、これを生徒に訊かれると、

「意味は同じです」と教える先生と、
「上級者が使います」

と答えるという方がいます。

「自分でもよくわからないので、同じですと答えています」
「私もです。それでいいですよね? 説明してもわからないしね?」

とおっしゃっている先生たちに会い、むむむ・・・と思いました。


それ、やめてあげてください。😭

続きます。



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