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日本語教師日記140.生徒のタイプ−①日本語学習でデスパレートな人

1対1。1回1時間、と「1」づくしである日本語レッスンですが、
ずっと緊張感を保ちつつの、遊びのないレッスンは、
私は教える方なのでできますが、教わる方にはきついものです。

なので、適当にブレイクを入れて雑談していますが、
それとは別に、改まった感じになった生徒の方から
「ちょっといいですか?」
と相談を受けることがあります。

深刻なことが多いです。

例1)
日本語で仕事ができると明言して入社したが、実は日常会話の域を出ない。
仕事をしながら伸びて行けると思ったが、かなり無理がある。
会社側からは、話が違うということで自己都合での退社を求められている。

週に1時間の日本語では、仕事で困らないレベルにはいけません。
どんなに仕事が欲しくても、結局自分が困ってしまうので、この辺は本当に気をつけてほしいです。

ちなみに私は、未知の生徒候補の人から、
「今から日本語を学んで上級者になり、日本に行って日本企業で就職したい。
何ヶ月ぐらいでできますか」
「そうなるように教えてもらえますか」
という問い合わせがあるときは、正直にお答えするようにしています。

例2)
日本語能力検定試験のN1をパスして、転職をしたい人。

このタイプに多いのは、言語の4技能、読む・聞く・話す・書くの、バランスが偏っていることです。耳が良いため、日本語を勉強しなくても、日本人の友達から聞き覚えたことを応用する力があり、会話がスムーズにできたりします。基礎ができていないので、助詞や活用は間違っています。
でも、通じます。聞こえてきた言葉で、想像で補ってなんとか理解できてしまうため、わかっているように見えてしまいます。これが不幸です。
敬語や教科書体は苦手です。日本人の友人知人には無責任に「とても上手」と褒め称える人が多く、「日本企業で十分やっていけるよ!」と励ましたりします。ためにならないので、やめてあげてください。
どうしても、やはり漢字が読めない、書けない。
そこで、面接の武器として、JLPTの上級に合格しようとします。漢字も大変ですが、コツコツ積み上げてきていませんので、語彙が不足していることがほとんどです。検定試験合格を目指して、暗記の毎日になってしまって、嫌気が差してしまった人を見てきました。

日本語が達者で有名な外国人タレントさんが、今でも1日に5つは漢字熟語を覚えることにしていると言っていました。そのぐらいでないと日本人に伍して日本企業で働くのは無理だと思います。


例3)子供に将来は良い職を見つけてもらいたいので、日本語のバイリンガルにしたい。

「子供なのでやる気はないです。宿題をたくさん出してください。でも、親は宿題をさせることはできません。親の言うことは聞きません。先生はそこをうまく導いて、楽しく遊んでいるようなレッスンで、バイリンガルにしてください」

ということでした。
そのご一家は家庭内では100%英語。
日本の子供と一緒にいれば自然にバイリンガルになるだろうと、子供さんを日本の私立幼稚園に入れましたが、先生からの指示、立って・座って・静かに・聞いて・・というようなことは、周りを見ながらついていっていたようです。
他の子供と遊んでいるのを見て、お母さんには、日本語が第二言語として育っているように思えていたのでした。
外国語学習の臨界点ということをよく言いますが、それは私にはわかりません。
ただ、子供を外国語環境に入れておけば、自然に多言語話者になる、ということはあまり見たことがないです。日本にある英語の幼稚園で働くネイティブの先生たちも、そういうことを言っていました。


例4)学習する条件が整っていない子どもの生徒。

注意と集中力が課題となっているお子さんがいました。座っていることが難しいので、お母さんと一緒のレッスンでした。画面のこちら側とあちら側で、大人が二人がかりで、それた注意を戻し、スイッチが切れると励まし、手を取って歩くようなレッスンでした。
親御さんの、「得意を見つけてやりたい」という気持ちがひしひしと伝わって来て、私も頑張りました。日本語の発音はものすごく良く、一度聞いたことは忘れないし、理解力も素晴らしいです。その上で、10分でいいから座っていられれば、あるいはいいところまでいったかもしれません。
最終的に、他の媒体で楽しく得意を見つけるべく、日本語はやめていかれました。

そのほかに、健康状態に波があり、決まった時間に画面に向かうことができない人もいます。
当日キャンセルが多かったり、それは申し訳ないということで、レッスンに出てきてくれてから、
「とても勉強できないので、おしゃべりタイムにしてください」
という人もいました。
それが続く場合は、
「調子が整うまで一度お休みをしましょう」と提案します。
その後、戻ってくる人は半々です。


力の足りなさを感じることも多い、教師生活ですというお話でした。

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