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エッセイ252.「東京暗黒街・竹の家」−② ドクター・マッコイ

2回目になり、いい加減にして?って言われそうです。
でも続けます。

アメリカのギャング団の悪事を暴くために東京にやってきたらしいエディ。
彼は私の見たところ、東京では谷中の墓地・浅草・銀座という下町エリアと、神奈川県だと山下公園・鎌倉ぐらいしか足を伸ばしません。予算や日程の関係もあったのでしょう。

日本の屋外シーンは、横浜・東京ロケで、そのほかの多くの場面はアメリカで
青い幕の前で撮影し、東京の映像を後ろの合成したもののようです。

屋内シーンほぼ全て、アメリカでのセット撮影だそうです。
チャイナタウンも入っているかなと思われるシーンもあります。

エディはまず、マリコ・名古屋を探して月島エリアに行きます。
そこは有名な水上生活者の町で、大阪が舞台の小説・映画の「泥の河」に出てくるのと同じような感じです。
そこを、スーツ、いや背広か、背広にトレンチコートを着て、ボタンをしないで背広の腹を見せながらキュッとベルトを締めるという不思議な着方をしたエディが、小舟から小舟へ渡ったりするシーンがあります。

場面転換が早く、説明がありません。ついていくのが大変です。

次のシーンはいきなり銭湯です。

銭湯育ちの私は、この銭湯のセットがすごくフェイクで、女湯が見えてしまう作りにびっくり。
そして、番台に座る人も、従業員?の女性も、
看護師のような服にセットしたパーマネントの髪、棒読みで、
「あ、それから、明日は桶が20参りますのよ。
よろしくお願いいたしますですわね」
みたいな会話をしています。
そこへエディが(相手に英語が通じようが、頓着なく、)

Where is Mariko Nagoya?!
Where is she?!

などと、ドカドカ踏み込んできてから、大声で聞いてきます。

☝️
すると、大きな脱衣場と浴場を隔てた向こうの、さらに奥で湯に浸かっていた女性が、その声を聞き取り(嘘つけ〜😅)、なぜかもう、湯船の中から大きなバスタオルを掴んで巻きつけ、逃げようとし始めます。
(私は銭湯育ちですので、湯船へのタオル持ち込み厳禁、そして、バスタオルは浴場には持ち込まないものであることを知っているので、
嘘〜嘘〜、と騒ぎながら見ています)

さっと着物を着付け、逃げていくマリコ名古屋。
それを番台から見ていた女性が、意地悪なのかどうなのか、

あ、マリコ・名古屋!(フルネームを知っている!)

と叫ぶ、エディはマリコが逃げていくのに気づき、ぶきっちょにドンガラドンガラと、そこらの風呂桶を蹴散らかしつつ、マリコ名古屋を追います。

☝️
銭湯にくるのに、長襦袢にどうやらあわせの着物、
変だわよ、マリコ名古屋?!
駆け抜けるのは、正月の晴れ着のような袂の長い着物を着た子供たちが
「かごめかごめ」をしているお寺の境内。
どう見ても、放火心中事件で焼け落ちる前の谷中の五重塔の建っている、
谷中の墓地にしか見えません。
マリコ必死に走る走る。
(銭湯育ちで、銭湯がないとすごく困る地域に住んでいた私は、
家から徒歩5分以内に、「不二の湯」「幸泉湯」「椎橋湯」の三軒があり、
定休日をずらして経営してくれていたのを覚えています。
なので、まさか谷中から月島まで走った設定ではないにしろ、こんな真っ昼間のだだっ広いお寺を経由してまで遠い風呂屋へ行くのは、
「嘘じゃろう!」と、また騒ぎ立てるのでした)

やっと家に着くマリコ。マリコの家の不思議さは、「マトリックス」「モンスターズインク」「ベイマックス」に出てきた日本風の建物より、更に激しく不思議です。障子には障子紙がないか、ガラス張り。固そうな床に、薄そうな茣蓙ござ、寒くないのか、脚が痛くならないか、マリコが心配です。

☝️
気持ちを落ち着かせようと、鏡台の掛布を上げて鏡に見入るマリコ名古屋。
そこへ、靴も脱がずにドガドガと飛び込んで来たエディが飛びかかり、揉み合い、固い床に倒れ込むと、不必要なまでにぎりぎりに、マリコの太ももがエクスポーズします。

エディが「聞いてくれ、俺は君のハズバンドのお友達だ!」と言ってから、まり子の口を覆っていたでかい手をゆっくり外しますと、マリコはすぐに落ち着き、流暢な英語で、ことの次第を全て語ります。マリコ、なぜ?

まり子の後ろの、枠だけの、やけに大きな障子の向こうには、浴衣や「金目鯛」が吊るされています。
マリコの言うのには、マリコは彼と結婚してまだ新婚2ヶ月でした。ある日、夫が殺されたと聞き、仕方なく日本に戻り、叔父の元へ身を寄せます。
ところでこの叔父の家ですけど、すごく大きいです。お風呂もあります。なので、銭湯通いは、趣味だったようです。だからあそこまで脚を伸ばしたのかもしれません。
それはともかく、マリコはエディから、
「そんなときは警察に言うものだろう、なぜ言わなかったんだ」
と問われて、
「夫は、私たちが夫婦であることを絶対に隠せといっていたのです」
「でもあの4ヶ月は、パラダイスでした」
と言って、初対面のエディの胸に倒れこんで、ヨヨと泣くのでした。

さて、場面はまた、何の説明もなく変わります。
この開店祝いの花輪、懐かしいです。今でもあるのでしょうか。
2軒のパチンコ屋へ行くのですが、1軒目は背中に籠をしょった「クズひろい」、2軒目はその前を、チンドン屋さんが通って行きます。

両方とも、入口の人に
Where's your boss?  Where is he?
と問い詰め、日本人従業員に「おっしゃることわかりませんです」と言われると、
「ナンバーワン・ボーイ!」
と、私たちに分かる日本語に切り替えます。
「ああ、そうですか。ナンバーワンボーイ、あっちあっち」
と教えてもらいます。

奥にいた支配に詰め寄ります。
Do you speak Enlish?
--はい。リロー(a little)
How much is 25 dollars in Yen?
--あ~, 9000yen.

と、日本円で9000円をもらっています。(1ドル360円時代です)
エディ何やってんの?
わかりました、2軒のパチンコ屋を回って、
9000円ずつの「みかじめ料」を受け取っているのでした。

えっ、シアトルからわざわざ氷川丸(多分)で来て、
そのビジネスちっちゃくね?

ところがエディは、2軒目では簡単に殴り倒され、
バリバリ破れてあっち側へ倒れ込んだ障子の向こうには、
たくさんのアメリカの悪者の人たちが待っていました。
パチンコ屋のみかじめ料を取り立て始めたエディに対して、
ボスのサンディーは、えらいご不興の様子です。
そりゃそうだろう。
で、殴られて気絶したエディに、氷のいっぱい入った水をかけたりするのでした。

ところで、ロバート・ライアンとロバート・スタックは有名どころですが、
意外だったのはこの方。

親分サンディーの、三の子分ぐらいなんですけど、わかりますよね?
そう「スター・トレック」の、ドクター・マッコイです。
スタートレックはタイムレスな宇宙船の中なので、時代を感じませんが、1955年のこの映画に出ているのを見ると、この人は昔の人だったんだなぁ、ってよくわかりました。

あと一回で終わらせます。


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