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日本語教師日記その5.  「また今度ね」とは?(インスタ投稿より)


普段  ガラパゴス諸島に引きこもっている私ですが、
この夏から思い立って、インスタグラムに投稿を始めました。

レッスンで質問がよく出るものや、
普段から言い足りないなと感じていることを、
「じっくり読むという形で」理解していただきたくて。

こちらには、それに加筆したものを、
ときどき投稿させていただきますね。



一回目の今日は、「今度」とは結局なんだろう 🤔  です。



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また今度ね!  

よく聞きますが、「いつのこと?」
明日?  来週?  今決めちゃう?
・・というと、野暮である感じがしてしまいます。

外国人に理解しにくい言葉の一つです



辞書には、「今回、this time 」、「次回=next time」とあります。
このような感じです。

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「今度」とは、未来・これから起こることについてである
ということになっていますね。

ところが、そう信じて使っていると、
どうもそればかりではないらしい。🙄

そこで、日本人の友達に訊いてみますと、

「今度?  次という意味だよ。
あ、この前という意味もあるけど」

と教えてくれたりして、却って混乱します。


でも、「今度」の特徴を知れば、いつ使うかわかりますし、
間違えることもなくなります。



「今度」の漢字は、「今」と「度」=「頻度・回」を使っています。
でも、学習者が漢字の意味からアプローチすることは少なく、
つまり、kondoはkondoであって、ただの音以上のものではありません。


さて レッスンで、

「今度」は、過去・現状・未来をカバーできます。
 「今度のテストは良かった」
といえば、今回の、一番最近に受けたテストの点が良かったということです。
これがまず、「今度」が過去のことに使える例ですね。

と言いますと、

「先生、毎日小テストを受けているとして、
昨日受けたテストのことを言うなら、
「今度のテスト」でも、「前回のテスト」でも、
どちらでもいいのではないですか?
なぜ、二つの違った言い方があるのですか?」

と言ってきます。
(出たなぁ〜妖怪!  じゃなくて、
いいんですよ、どんどん訊いていただいて・・)

それを聞かれて、「同じです」と言い切れる日本人は少ないでしょう。


「今度」と「次」の違いをちょっとみてみましょうか。

「今度」は、あなたが経験したもの(同じものの複数回)と、
このあと経験するもの(同上)のうちの、
体験的時間軸の中で、あなたに一番近いものです。

一方、「次」の方は、いつ起きたか・起きるかではなくて、
「順番」の方に視線が行っています。

・スープの次に前菜が出ました。
その次のメインですが・・・

・医院で順番に呼ばれる場合は、
「次の方、どうぞ」であり、
「今度の方どうぞ」ではありません。


それから、「今度」は、「同じ種類の物・人・事について」です。

今回以前・以降の、同じもの、類似のものと、
無意識に並べ、比較しているのです。

【今度とは、主体となる人から見た、
一番近くて、かつ、同じ種類のナニモノカである】

(却ってわかりにくでしょうか)


レッスンで情報が多すぎるのはよくありませんが、
一度に以下の三つを示すと、わかってくれることが多いです。

【未来形】
今度の電車は西船橋止まりです。(今から来る電車のうちの、一番最初のもの)

【現状】
 彼の今度の奥さんは  いい人みたいだね。
(「今度はうまくいくといいね」というと、もう未来を見ています)

【過去形】
 今度の台風は、本当に怖かったね。
(「今度あのレベルの台風が来たら、絶対避難しよう」
と言えば、次に来る一番近い未来の台風を見ています)




板書ではこうなります。


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❌ の時間が、「今度」ですね。

ちなみに、板書などでささっと描く、必要最低限な感じの人体を、専門用語で「竹ヒゴ人間」というそうです。


だいぶわかってきた生徒ですが、

【今度】と聞いて、それが過去なのか未来なのか、
どこを見ればわかりますか?

という、もっともな質問が来ます。

「今度、と言葉だけを聞いたのでは、私もわかりません。
    文の終わりの時制で判断します」

と お答えしています。


一つの会話の中でさえ、「今度」の時間があっちこっちしますね。

A:今度のプレゼンはうまくいかなかったよ。(過去のプレゼン)
B:どんまい!
      今度はもっとよく準備してやればいいよ。(これからやるプレゼン)

それから、「今度」がポジティブに使われる場合と、
ネガティブに使われる場合もあることも伝えています。

使い方によって、「今度」が、
「これから来るだろう楽しい機会」と、
「できればそれをする日時を決めたくない未来の、あるとき」
になります。


「いつも今度今度って・・・今度っていつよ!?」
と美人に迫られる、幸運な男性は多いのかな?


インスタグラムでは、以下のように説明してみました.

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この例だと、行く気満々ですね。

でも、別の友達から、全く同じことを言われても、
こちらの気持ちが違うと、「今度」の使い方も違ってきます。

別の友達:今度、映画に行かない?
あなた:あ、うん、え〜と。今度、今度ね・・。
別の友達:今度っていつ?
あなた:え〜と、あ〜・・・今度電話する。💦
           

これだと、ものすごく鈍い人でない限りは、
あなたがあまり乗り気でないことには気がつきます。
(でも、いつも 今度今度で逃げ切ろうとせず、
たまにはアサーティブネスを発動して、断る練習もしてみましょう)




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   ↑
このページでは、一つ目は、
「はっきりした答えを避けようとして」
今度が使われていますねと書きました。
そして、
「あなたが こんなふうに「今度ね」と返されたら、
『今度っていつ?』なんて、深追いはしないでおきましょう」
と、余計なお世話なことも書きました。


子供におねだりされたときの例文も。

親が避けたいことだと、つい、
「今度ね」で対応してしまったりすることがありますね。

うちの子供達がまだ可愛くて、
「お母ちゃん、どっか行こう」とか、
「あたいも行く〜」と言っている間は、
「あ、ああ〜、今度ね」と言ってしまうことがよくありました。

子供がせっかく子供エプロンをかけて、
「お手伝いしゅる〜」と言っているのに、
「あ、ありがとね。
    今度 お母ちゃんが忙しくないときに頼むよ!」
なんていうことも。

今になってこちらから誘っても、
「あ、大丈夫です。お父さんと行ってら」と言われてしまうし、
お手伝いなんて銀河の彼方に飛んで消えて行きました。
「今度」濫用の、バチが当たったわけですね。

何年も前、
「今度の電車と次の電車、先に来るのはどっち論争」があって、
日本各地から、
「うちの方の駅では、【今度の電車】が先でした」
「この地方では逆です」
などと盛り上がったそうです。


「今度」は、複雑な文法事項ではないですが、
勉強していて楽しい言葉の一つです。

同じ「今度」でも、
「渋々感」や「期待感」がはっきり出ている例文を出しますと、
わかってもらいやすいようです。

長文を読んでいただいてありがとうございました。
今日はこれで終わりです。

よかったらこちらにも遊びに来てくださいね。




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