見出し画像

日本語教師日記ー185.言わなきゃならないときもある

「寅に翼」ウォッチャーの私は、朝の放映時にレッスンがあって見られないときと、夫の出勤時は8時前後なので数分見逃すときがあるとか、いろいろですが、一話につき、昼の再放送で見たり、NHK➕で見ますので、最低2回、大抵3回は見ています。

今日も良かった。

1)自らが処分した部下に対する寅子の素晴らしい対応。

2)溝ができてしまった娘と、時間をかけて取り戻そうとしているところ。

3)イケメンに磨きがかかって来た星に、誘われたのかそうでないのか、寅子も私も、もやもやする! というところ。

4)今日は金曜日で、あと2日も見られないというのに、
いきなり涼子様が再登場して、「2日も待てないよ〜」となったところ。

たったの15分弱に、4件も、注目アイテムがあり、悶々とするばかり。


冒頭、寅子に処分される部下が、

「ぼくは、支部長の考えをきちんと言葉で聞きたい。お願いします」

と言いました。
これがまた素晴らしい。
忖度や気の弱さで言いたいことも言えずうじうじし、あとで悔し涙や後悔にくれていた若き日のオノレ(いや、今もか〜)に見せてやりたいシーンでした。

それに対しての寅子の言葉が良かったです。
デクテーションしましたので、シェアさせてください。

「わかった。
この仕事をしている以上、どんなに酷いことを言われても、手を出しては駄目。酷い相手と同じ次元に落ちて、仕返しをしては駄目。
だから然るべき処分を受けるべきだと思った。
穏便に済ませたりして、ああいう人たちに借りなんか作って欲しくないから。
あなたを確実に傷つけて、心にできたかさぶたを、
ことあるごとに悪気なく剥がしていくような人たち。
彼らにずっとへいこらしてほしくない。
自分の意思で物事を受け流すのと、受け流さざるを得ないのとは、違うから。
私がいなくなった後も、この件にあなたが縛られないように、
したいようにできるように、怒りたいときに怒ることができるように、
そう思って処分しました」

日本全国でみんながうんうんと頷いた、
その力で発電ができるのなら、今月の電気代はすごく安くなるでしょう。


寅子の言葉に、私は言うべきことが言えているだろうかと、反省しきりです。

自分の子供達に対しては、子育て時代、

「言うことで、嫌われても、この子のためには言わなければならない」

と思って、いろいろうるさく言ってきました。
もちろん嫌われましたが、後になって考えてみると、そのときにくどくど言わないで、手綱を長くして見ているべきだった事が、多々あります。
子供には、余計なことを本当に言い過ぎました。

でも、言いたいこと・言うべきことを言わないのは、
百害あって一利なしと、今では思っています。


そんな私でも、日本語の生徒に対しては、
自分でも意外に思うほど、言うことができたりします。

目黒の邸宅に住むエグゼクティブなファミリーの兄・妹を1時間ずつ教えていた時です。
もう20年前なので、時効として書きますが、お母さんは二人を日本語教師に見させておいて、お買い物などに出ていました。
途中電話が入って、
「もう少しかかるので、帰るまでいてください」
と言われることもありました。

妹さんの方は、
「お兄ちゃんは先生を、あの日本女と呼んで馬鹿にしている。
ママは先生に、私たちのベビーシッターとして来てもらっているんだよ」
と言っていました。
この子は集中力に乏しく(まあみんなそうですが)
「あっそうだ先生、この間言ったバリではねぇ、
私のベッドルームの前にプライベートビーチがあってねぇ、もう最高!
ビーチでは髪を編んでくれる人がいてねぇ、できたのが気に入らなかったんで、
やり直しさせてねぇ・・」

というふうに、延々と話し続けるのでした。

兄さんの方は、アニメやコミックの話をし続け、それを止めると今度は、消しゴムがあれば消しゴムを千切って投げてくる、輪ゴムがあれば飛ばす、ノートがあれば落書きをする。
とうとうテーブルに何も出さずにレッスンをすることにしました。

日本語学校から派遣の身でしたので、自由に発言できないことを感じていましたが、このままでは三人とも不幸だな〜、と思いましたので、
ある日 兄さんの方に言いました。

君ね。
自分のしていることはわかっているよね。
多くは言わないから、聞きなさい。
これは私の仕事ですが、君からお金をもらっているわけではありません。
そして今私は、君のお父さんのお金と、君の時間を 無駄にするのは嫌だと思っています。
なので、訊きますが、君は日本語を習いたいですか?
もしやりたくないなら、私は教えることができません。
私はやめますが、私の代わりに、他の先生が来るでしょう。
だからもし本当に日本語レッスンをやめたいなら、
それは君が自分でご両親に言わなければいけないよ。
私には何もできないからね。
いいですか?

彼はちょっと固まっていましたが、
日本語はやりたくない、自分にとって意味がないから、
と、ちゃんと言ってくれましたので、帰ってきたお母さんに言って、このレッスンはやめさせてもらいました。
理由は、自己都合にしました。
なんとなく、思い出しても後味が悪いです。

ちゃんと話して、多少うまく行ったこともあります。
ある生徒は当日キャンセルが多く、それどころか、画面を空けて待っていてもただ出てこない、ということが多かったです。
そして、10回に1回しかやらないそのレッスンでは、お喋りだけになってしまう。

それで、言いました。

「たくさん日本語で話し、聞くことで、上達することは期待できます。
そして、あなたは日本語だけで会話をすることができるレベルです。
でも私から見ると、まだまだ勉強が足りません。
今は、退屈でも、石にしがみつくようにして、コツコツ学ぶときです。
私は日本語教師ですから、教えていないで、お話し相手をして、授業料をいただくことはできません。
なので、教科書に沿って宿題をしますから、必ずやること。
授業ではお喋りのリードを取らず、進め方は私に任せてくれること。
お喋りは息抜き程度にしてください。
それから当日キャンセルは、決まり通りフルチャージに戻します。
当日キャンセルは、私の仕事と、ウェイティングリストにいる他の生徒たちの学習機会を奪っています。
以上のことを承知してもらえるなら、レッスンを続けますが、どうしますか?」

続けることになりました。

この人は、それ以降、当日キャンセルはフルチャージにしました。
(普通は、お互いにコロナ感染とかインフルとか、急用がありますから、
当日キャンセルはフルチャージと決めていても、いただいてはいません)

その後も、宿題をしてこないこと、お喋りの方に身が入ってしまうのは、
私としても残念ですが、大人のご本人の決めることですので、どうしようもありませんでした。
きっちりやったら、週に1時間でもぐんぐん伸びるのに、惜しいことですね。

伸びない生徒は、以下のような人たちです。

キャンセルが多い。
日時変更リクエストが多い。
言い訳が多い。
常に体調が悪い。
変な自信を持っている。
他責。
いろいろな教科書を買ってみる。

ちなみに
伸びない人=すぐやめる人
でもありますので、こちらの被害は僅少です😅


写真は、ブルーベリー以外はみな100円の、近所の農家の無人スタンドの野菜です。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。