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エッセイ243. こんなところに「チッチとサリー」

いろいろ落ち着きましたので、3年ぶりに親戚を訪ねてファンガレイという町に来ています。
昨夜寝る前に、結構寒かったので訊いてみたら、今ニュージーランドはmid winterだということでした。真冬? ってことですか?  冬の真ん中?
「湯たんぽほしい?」と訊かれました。
日本の気温は、先に帰った次女から訊いています。すごいことになっていますね。もうすぐ帰りますが、がたっと調子を崩しそうで怖いです。

ファンガレイへ来るとき、読むつもりだった小説を忘れて来てしまいました。
それで、この家にある本を見てみましたら、夫が帰省のたびに持ち込むので、日本の小説の英訳のものがありました。

でもここしばらく、日本語環境にいないために頭が疲れていますので、気楽なものが読みたいです。そう言うと、親戚が「これはどう?」と渡してくれたのがこれです。


読んだことのある人は少ないと思います。「小さな恋の物語」、チッチとサリーです。とても長寿のコミックで、第43集が2020年に発刊されたそうです。

上の写真は、この第17集のはじめに出てくるポエムです。
春に一冊ずつ刊行されるのを読んでいた頃は、好きなんだけど、チッチの慌てぶりや焼きもちに、ちょっとイラッとすることもありましたが、今読むと微笑ましいばかりです。
このポエムなんて、現代の金子みすゞのようではありませんか。

さっそく読み始めましたが、セリフも全て手書きで字が小さいことから、R眼の私には苦労です。

ああ、子供の頃、
「チッチとサリー出たよ!」「貸して!」
と騒いでいた頃には、まさか自分がこんなところまで来て、遠近両用メガネをずらしながら「小さな恋のものがたり」を読む時が来るだろうとは、全然思いませんでした。


読み出して、いろいろ面白かったので、ちょっと書かせてください。

チッチは高校生だから16〜18才(15才を含む)なのですが、お母さんが〜・・

磯野家のフネさんと、ほとんど同じ感じです。


お父さんは、口髭こそ薄いですが、チッチが「お嫁に行く」頃(22才とか?)は、頭のてっぺんに毛が一本状態になり、波平さんになりそうだと思いました。

磯野フネさんも チッチのお母さんも、いつも着物と割烹着ですね。

お父さんも、会社から帰ってくるとウールの着物に着替えています。田舎のおじいちゃんは、帰ってくると浴衣や、寒い時はウールの着物に着替えていました。うちの父だと、ステテコにランニングの「バカボンのパパなのだ」でした。

15から18さいぐらいの女子高生のお母さんが、一見60才ぐらいのおばあちゃんに見えてしまいます。しかもお母さん、自称「こんなオバーサン」て。「結婚して21年」と言って泣いているけれど、昔は結構結婚が早いとして、22で結婚、泣いている時点でまだ、43才とかであるかもしれません。
「磯野家の秘密」、そんなのがありましたけど、「小川家の秘密」も出版してほしいです。(チッチの本名は小川チイコ)

この17集の発行年月はと見てみますと。

今から39年前なのですね。昭和58年です。

お話の中では、親に聞かれたくない通話は、雨の中でも街角の電話ボックスに走ります。引っ張ってドアをあけるところは、丸く開いた穴です。

「あの原宿の、ナウいハンバーガー屋さん」に行くと、ナウい人ばかりがいて、チッチは緊張してしまいます。

雨が降ると、お母さんがチッチに、「お父さんに駅まで傘を持って行ってあげてちょうだい」と言います。日本のコンビニ第一号店は大阪で、1969年だそうですが、今のように駅内、駅外にあって、気軽に安い傘を買えると言うことはなかったのかもしれませんね。

男の子に見えるボーイッシュな女の子が、女の子にチョコレートを渡されそうになって焦っていたりします。「女の子が女の子を好きになったっていいじゃないの! 愛は自由よ!」と、チッチが声をあげています。

この巻をパラパラめくってみると、学校のシーンはほぼなくて、
友達グループで
海で遊ぶ・お正月に集まる・クリスマスパーティをしています。
バイトにデートにダブルデート。
で、本当に楽しそう。
当時の高校生が夢見ていたような、理想の高校生活なのでしょうか。

携帯もタブレットもパソコンもない。
待ち合わせの時間に遅れるなら、彼女の自宅の固定電話に電話して、怖いお父さんの「どちらの中村さんですか?」等の声を聞かなければならなかった時代・・。個人が「電話」を持って歩くなんてSFの世界でした。

地球温暖化も、トランプ元大統領も、湾岸戦争も、ウクライナ問題も、
もちろん、コロナウイルスなんてパンデミックが起こって、世界の人の流れや経済や文化が止まることも、想像のほかでした。

「サザエさん」なら、終戦の年から始まったそうなので、昔の日本の歴史と思えるのですが、自分が普通に読んでいたコミックが、こんなに短い間に変わった世相を見せてくれると、やっぱり驚きますね。


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