日本語教師日記133.「松本」が読めなきゃ
生徒が一生懸命N3のドリルを音読してくれています。
「え〜・・・・はやし・・・はやしもと駅・・えっ」
ーーうーん?
「はやしもと駅、じゃないですよね?」
ーー残念、違います。ヒントね。 ま・・・
「あっ、まつもと、まつもと駅ですか?」
そうですね。
「ああ〜、私が『松本』を読めないのは、よくありません」
ーーなぜですか?
「松潤の松本ですから」
大好きなんだそうです。でもちょっと、世代が違わないですか?
いえ、そうなんですが、オーストラリアでは、新旧の日本のドラマ、かなり見られるそうです。いい時代になりましたね。
ーベッキーさんは、何で松潤が好きになったのですか?
「花男」です。
ーーあっそう?! 私は「ごくせん」の方が先でした。
ごくせんも見たそうです。
テレビドラマ化されたのが2002年だそうですから、時の経つのは早いですね。
ーーベッキーさん、花男のあの主人公の女の子、つぐみでしたっけ?
「先生、なんかちょっと違います」
ーーあ、違いますね、つくしでした。
ベッキーさん、つくしには松潤はもったいないわ。と思いませんでしたか?
「思いました!」
ーー思いましたよね! でも、もったいなくない女性はいないですよね。
「その通りですよ!」
ーーつくしでいいなら、なんであたしじゃ駄目なの松潤、
って思いませんでしたか?
「思いました!」
ーー思いましたよね!
・・師弟は手を取りあわんばかりに画面のあっちとこっちで興奮するのでした。
世界が狭くなって、遠く離れた、会ったこともない若い人たちと、おすすめのコミックやアニメ、Youtubeの情報を交換し合う。
オンラインレッスンの時代になる前は、思いもよらなかった事になっています。とても楽しいですね。
私は、日本語のお試しレッスンのときには 生徒候補の人に、
なぜ日本語を勉強することになったのか。
日本語を学んで何をしたいのか。
日本に来ることができたら、何をしたいか。
この辺は必ず質問させてもらっています。
はっきりと好きなことがある人は、とても熱心で、長く続きます。
昔、対面で教えていたころは、
滞在期間が、1年から長くて5年ぐらいまでの駐在員の生徒が多かったです。
そういうみなさんは、特に日本に興味を持って勉強を始めたわけではなく、
赴任先で必要最低限の日本語を習う必要があった人。
会社払いのレッスンで、日本語の時間を休憩に充てている人もいました。
盛り上がるのは、旅行や食べ物のことが多く、
趣味の話はあまり広がらなかったように思います。
それでも中には面白い人も。
凧揚げが大好きで、
日本橋のたいめいけんさんのやっている「凧の博物館」に
たびたび行っていたビジネスマンがいました。
東京での凧揚げ場探しに苦労していたので、
葛西臨海公園で海に向かって揚げると楽しいことをおしえました。
茶道をやっていて、日本のお茶の先生のお茶会に出席するために来日しては、リサイクル着物や帯を買っていく人もいました。
私はいま、「花男」についてのやりとりでスイッチがはいって、「ごくせん」と「ポーの一族」と「綿の国星」を最初から並行して読み返しています。
それで、生徒おすすめのコミックやアニメに向かえないでいるのですが、
毎回のように、生徒から「宿題」をチェックされてしまいます。
Cくん11歳が、
「先生、SAOはどこまで見ましたか?」
と訊いてくるのです。
SAOとは、ソードアートオンライン、1万人がRPGの中に閉じ込められてしまうという恐ろしいアニメですが、とても面白いです。
ーーまだシーズン1のエピソード5までしか見ていません。
「早くもっと話がしたいので、どんどん見てください」
ーーはーいわかりました、すみません。😅
あと、「竜とソバカス姫」でしたっけ、それも見なくてはいけないし、
草刈りもしなければいけないし、気忙しいです。
そういえば、娘たちからも「絶対これを見ろ」と、Netflixで見た映画やドラマシリーズのお勧めがあります。
全部見ていると、何もできなくなりそうです。
前述の11歳Cくんですが、最近「刀」と「刃」の違いを訊かれました。
刀は sword,そして、あの種の武器一般を指すそうです。
一方刃は、刀の、切れる部分、bladeなのだそうです。
そんなふうに思ったことはなかったので、勉強になりました。
だから、「お主、今日は刀持ってる?」「御刀は預からせていただきます」
とは言っても、「古物商でいい刃に出会った」とは言いません。
Cくん、君、全米広しといえども、刀と刃を 読めて、書けて、
その違いもわかっている子供って、君ぐらいかもよ?
と言ったら、いえ〜い と喜んでいました。
見たい映画を全部見て、読みたい本やコミックを全部見るには、
人生100年時代でも、時間が全然足りないなぁ、と思っています。
若い人にいろいろ教えてもらい、退屈することはありません。
幸せです。
サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。