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エッセイ287.東京へ帰る(7)さよならがいっぱい④

10/25  引っ越し前日。

この日から31日まで、夫は引っ越し休暇。

9時、エアコン取り外しの工事入る。

10時、ホットヨガスタジオに退会に行く。

深夜、同じ廃品回収業社が最後の粗大ゴミをみんな持って行ってくれる。
軽トラ一杯分ということで、今度は追加はなくて、8800円。

それにしても急に引っ越す人は全く、大量に出る粗大ゴミを普通はどうしているのだろう。
名古屋市は月に1度、予約したものしか粗大ゴミは出せないので、
不用品処理には今回は本当に苦労した。



10/26  引っ越し

午前中、夫と二人、隣に住む大家さんにご挨拶に。
奥さんは涙もろくて、話しているうちに3人でうるうるしてしまった。
マスク越しのお別れ。
コロナの時代が来るなんて、名古屋に来たときは夢にも思わなかったが。
大家さんは、名古屋に1ヶ月滞在した義母にもよくしてくださり、洗濯物を干していると、フェンス越しに野菜や果物をいただくこともあった。
こんないい大家さんに会うことはもうないと思う。
子供が子供から大人になり、反抗期で大暴れした家。
二人がそう間をおかずに巣立って、広くなっていった家。
家と同じぐらいの大きさの庭があり、草取りは大変だったけれど、
花や野菜をたくさん育てて本当に楽しかった。
家は「箱」という物質ではあるけれど、
中に詰まっているものによって、生き生きと息づき始める。
長年の友達に別れていくのに似て、とても寂しい。

一歩遅れて引っ越し先にやってきた夫が、あとから言った。

「何もなくなった家が、本当にからっぽで、奇妙だった」


12pm、アート引越センターが来た時は、まだ冷蔵庫の中身を出していた。
手順悪すぎ。
搬出に4時間かかった。
皆若いスタッフで、女性も段ボール2つは重ねて「うっ!」と言いながら持ち上げてしまう。移動は大体駆け足。感服しました。

途中、お隣と近所の奥さんが、お別れを言いにきてくれた。
回覧板の順番の3軒だった。
淡々と立ち話だけだったけれど。
左隣のIさん。ご主人も畑をやる人で、種や肥料のやりとりをしたこともある。
斜向かいのMさん、長い休みには子供さんたちが集まり、
賑やかにBBQされていて楽しそうだった。
なんの問題もなくご近所つきあいができたのは本当にありがたいこと。

空っぽの家の掃除が終わったのと、外が暗くなったのが同時。
もう台所しか電気がない。
(夫は翌日のハウスクリーニングと、明け渡しの立ち会いのために、
この晩は何もないこの家に一人で寝袋で過ごした。
台所の床に座って深夜まで仕事をしたそうで、おつかれさんです)

午後6時、夫に見送られて名古屋の家を出る。
急坂の途中に建つ借家から朝に夜に、何百回この坂を下りただろう。
夜は坂の下の家やマンションの明かりが綺麗だった。


名駅に向かう前に、「とりとり亭」で名古屋最後の外食。ここのチキン南蛮フライ(ハーフ)も食べおさめ。


ゴロゴロとキャスターケースを引っ張りながら植田駅までの道は、通ったスポーツセンター。スーパー、カフェ、ドラッグストア。また来ることがあるのかなと思う。来たとしても、住んでいた人間としてこの通りを歩くのは最後。
愛着のできた場所を離れるのはとても寂しい。



次女宅に10時半ごろに着く。


10/27
次女のアパートを7時に出て引っ越し先へ。
アート引越センターが来たのが8時半で、昼までには搬入が終わる。
搬出のときと逆に、家具が先に入って、最後に段ボールが運び込まれる。
終わった時は、全ての部屋に段ボールが積み重なって、
これ、どうにかなるの!? と、愕然としてしまった。


長々お付き合いいただきました。
以上が、引っ越しを終えるまでの記録です。

仕事も全部やっていたので、余裕が全くありませんでした。

お世話になった皆さん、特に郡上おどりで仲良くしてくれたみなさんには、感謝しかありません。円頓寺商店街のあのバルで・・楽しかった!
 勝手にみんなで駐車場で踊りましたね。

おどりのこと、ゆかたのこと、着物のこと、たくさん教えてくれたみなさん。寸法の合った浴衣を縫って下さった方。
何も知らない名古屋で始まった生活に、本当に力と彩りを与えてくれました。

忘れません。お別れが辛いです。
お知らせできずに去り、申し訳ありません。

後日、個々にご連絡させていただきますね。

大きな引っ越しを人生で二度経験してつくづくわかったのですが、住めば都は本当です。
そして「都」とは、心の交流のできる人たちと出会えた場所、
ということなのでした。
いくらお金があっても、誘い誘われて話に花が咲く、そういう人がいなかったら、虚しいのですね。

ほんと、学びました。

名古屋ありがとう!
そして、東京、またよろしくです。




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