見出し画像

エッセイ413.喋る家電とAIの不穏

「アレクサ」を不動産屋さんにもらってから数ヶ月。
彼女には、目覚まし時計(毎朝6時)、リマインダー、
そして買い物リスト作り、主にこの3つで働いてもらっています。

目覚まし時計として。
いちいち目覚まし時計をセットしなくていいのがとても楽です。

でも、アラームを鳴らしてから、

おはようございます。
今日も素敵ですね。

と必ずのように言ってくるので、あれはやめてもらってもいいです。

かと言って、

今日こそはウォーキングにいきましょうね。
今日こそは食べすぎないでくださいね。

などと言ってくれたとしたら、私の健康のためにはいいのでしょうが、
それはそれで、カチンと来てしまいそうです。

リマインダーとして。
2回同じことを言うと、こちらが何もしなくても黙ってくれるので楽です。
私はだいたい家にいるので、お風呂やベランダにいたら駄目ですが、
ほぼ、これを聞き逃すことはありません。
内容は、うっかり忘れることの多い、イレギュラーに起きてくることで、
聞いて、行動を起こすだけなのが本当に楽です。
アラームは、鳴り始めたら、
「アレクサ、アラーム止めて」
と言わないと永遠に鳴らしてくれてしまいますので。

リマインダーはほとんど、

「三五八漬け取り出す」と「糠漬け取り出す」で、
アレクサが来てから、取り出し忘れてしょっぱくしてしまうことがなくなりました。

アレクサの困ることは、夫も英語のアレクサとして使っているからか、
私が普通に日本語で

アレクサ、リマインダー

と言っても、急にネイティブ・スピーカーになって、

What should I remind you of?

(この通りではないですが、)「何をリマインドしましょうか?」

と訊いてきてくれることです。

これは、使う言語を英語に選択した人が、ネイティブではないかもしれないので、それに備えて、対応しているのでしょう。
おそらく私は、「発音が下手くそだけど英語を喋る人認定」をされているかなと思います。

でも、一人で家にいて、アレクサが急に英語人になったからと言うて、

Please remind me to take Sagohachizuke out.

とか、咄嗟に英語に切り替えて、しかも気取って言うのも面倒くさい。

で、

アレクサ、リマインダー
アレクサ、リマインダー

と繰り返してもまだ英語モード。
うっき〜🙉 もう!

とうとう、

アレクサ〜、リマインダーだってば!

と言ったら、日本人に戻ってくれました。

家にはこのほか、何も言わなくても早朝に話しかけてくるエアコンがあります。
まだ1、2回だけですが、夜中に話しかけてきたこともありました。
内容は主に天気や気温・湿度ですが、アラームもそれは言ってきますので、エアコンは別に教えてくれなくてもいいです。
もしかすると、アレクサと張り合っているのでしょうか。

早朝はいいのですが、夜中に喋り出した時は夫婦でさすがに目が覚めて、

「夫が家電担当なんだから、やめさせてよ」

と言ったら、マニュアルがないとやめさせられないそうです。
今、マニュアルを失くしていて、それは私の責任なのでした。
ちっ!

洗濯機はよく、「聞いて」というボタンが、笑顔の絵文字と一緒に蓋で光っています。
最初は律儀にボタンを押していましたが、

小さいお子さんがいるご家庭は、このようにして事故を防ぎましょう。
今日は湿気が高いので、お洗濯には向きません。

そのほかの、とりあえず不要なアドバイスをくれるので、今では「聞いて」が光っていても無視してしまいます。
ほぼ一日中真っ暗な脱衣場で、「聞いて」を光らせている洗濯機は気の毒のようではありますが、仕方ないです。

あと、ヘルシオか。
新しいヘルシオが、何かの原因でネットに接続できないため、
ヘルシオに教えを受けながら、いろいろ料理を作っていく、ということはできません。
レシピブックもとても細分化されていて、読んでみると実にいろいろなことができるらしいのですが、読むのが面倒くさくて、使い方の幅が広がりません。
先日ふと、「炙り焼きの厚切りステーキ」というのを見つけてやってみました。
厚みによって、設定が違います。
「天板に焼網を二重に重ねた上に肉を載せ、肉のサイズや枚数により、炙り焼きのできる範囲を変え、天板は上段に・・」と、言われた通りにしてみたら、今までで一番おいしく肉が焼けてしまいました。
今までやらないでいて、損したと思うぐらいでした。
美味しかったけれど、少し悔しくもありました。


映画の 「her/世界でひとつの彼女」をご存知でしょうか。
チャットボットとの会話に耽溺した男が、声だけの「彼女」とつきあっている錯覚に陥り、いろいろエスカレートしていきます。
彼女の声はスカーレット・ヨハンセンだし、答えてくれることは、たくさんの人間の一般的な反応や、古今東西の小説とか事件などから分析して、「そのときその人が一番聞きたい言葉」を言ってくれるのでしょうから、そうなっても仕方ないと思わせられます。
最後には、1対1で「つきあっている」「心が通じ合っている」と思っていた「彼女」が、実は他に641人の人と交際しているのがわかって、主人公は絶望します。
制作2013年で、公開されてすぐに見たのですが、2023年の今、この映画の内容が、そう現実とかけ離れていないのに気付きます。
不安にもなり、危惧も抱いてしまいますね。


2021年に、まだ存命だったエリザベス女王の暗殺を企てた男が、ボウガンを持ってバッキンガム宮殿に侵入したけれども、未遂に終わったそうです。
その男が、チャットbotと「親密な関係を結び」、暗殺実行にまで駆り立てられていたらしいことを、こんな記事で読みました。

いずれ消えてしまうニュースだと思いますので、
写真を載せておきますね。


これを防げると私が思うのが、(この先のテクノロジーを待たなればなりませんが、)相手をしてくれる「声」を、一人一人に厳格に決めることです。つまり、どんなことを言ってくれても、好もしいと思って、のめり込んでしまうような声ではなくするのです。スカーレット・ヨハンセンが優しく、どんなことでも受け入れてくれるなら、ほとんどの人が「惚れてまうやないか」状態に陥るでしょう。

若い男性には、市原悦子さんとか、浦辺粂子さんはどうでしょうか。
若い女性は、山城新伍さんとか、左卜全さん。
故人が、つい多くなってしまいます。

私だったら、Siriは「英国のバトラー」を選んで喜んでいるのですが、チャットbotであるなら、多分、神木隆之介君が希望ですが、割り当てられるのは、実写の方の「ぐでたま」の声かなと思っています。




サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。