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日本語教師日記48.法則がわかれば怖くない(8)「同じです」と言いたくてもがまん②「〜んです」とは(上)

Q:日本人と話すと、教科書に出てくる日本語と違います。
       「なぜ、なんで、どうして」で始まると、必ず「〜んですか?」
      で終わります。なぜですか?

Q:アニメや、普通の日本人の話すことの中に、
      食べたの?   行かないの?  がんばったんだね。とか、
      の、とか  ん  を言いますが、どう言う意味ですか?

 ネイティブ日本人は、ネイティブであるだけに、そういうことを意識しながら話すわけではありません。違いは体感していても、説明することは難しいでしょう。

日本語のクラスレッスンでは、これの説明を短く終わらせることはできず、媒介後は使えず、またとりあえず今やっている本題とは関係ないために、その場では教えないことも多いのではないでしょうか。

しかし、オンラインでも対面でも、プライベートレッスンでは、やはりどこかの時点で教えてあげたいものです。

今日は、媒介後を使ってのどう教えるかについて、
私がどんな感じでやっているか、書いてみたいと思います。
媒介後は英語です。



【んですか、とは何でしょうか−1 】

「寒いですか」と「寒いんですか」には、違いがあります。
単に、自然な日本語、日本語を使いこなせるようになった人の言うこと、
というだけではありません。(その側面もありますが)

では、2つの例文を見てください。

1)状況:Aさんは、外が寒いかどうかを知りたいと思っていたところ、Bさんが外から室内に入ってきました。

Aさん:Bさん、外は寒いですか?  (外、寒い?)
Bさん:はい、ちょっと さむい・ですよ。(うん、ちょっと寒いよ)


2)状況:Bさんが室内に入ってくると、顔が赤くて、
Aさんはそれに気づいて、「あれ、なんで?」と思いました。

Aさん:Bさん、顔が赤いですね。寒いんですか?
           (Bさん、顔が赤いね。寒いの?)

 Bさん:いいえ、ちょっと 熱がある・ん・ですよ。
            (いや、ちょっと熱があるんだよ。熱が あるのよ)


1)は、「Aさんは事実を知りたい」
2)は、「Aさんはなぜ、Bさんの顔が赤くなっているかを知りたい」
     (理由を知りたい)ということですね。

ではなぜ、「ん」をつけるだけで、この違いが出るのでしょうか。

2)の文では、AさんはBさんの顔が赤い理由を知りたがっていますから、
もしちゃんと全文を言うとしたら、
「あなたは顔が赤いですね。寒い・ので、顔が赤いですか?」かもしれませんが、話し言葉では、「寒い・ので・赤いですか?」
となり、それでもまだ、日本語では「言い過ぎ」」です。
(赤いですか、も実際は「赤いんですか」になります)

そこで、さらにそれがぎゅっと縮められて、
「寒い・のです・か?」となった、と一旦考えてください。
(ちょっと苦しいですが、私はそう思っています)

これをみなさんは、しょっちゅう聞いています。

さて、Aさんの「寒いの?」の中の、「理由を教えて」の気持ちを感知して、
Bさんも「説明しなくちゃモード」になります。

「はい、寒いです」または「いいえ、私は熱があります」では、
ロボット日本語であって、気持ちが入りません。

「その通り、さむい・ので、このように顔があかいのです」
という気持ちがあると、「はい、寒い・ので・す」と言うでしょう。
(カジュアル体なら、うん、寒いの。(女性)ああ、寒い・んだ(男性) )

また、原因が熱があるからだ、ということなら、
「その通り、熱がある・ので、このような赤い顔です」と言いたいために、
・熱が ある・んです
・熱が ある・の
・熱が ある・んだ

と言うことになるわけです。
「のです」には、こんな意味がありました。

さて、コミュニケーションというものを考えてみると、それはつまるところ、

✅理由を尋ねたり、理由を話したり

✅ なんでかなと思ったり、それに説明しようとしたり

✅ 人を責めたり、責められて言い訳しようとしたり

・・することで、多くの時間を費やすんじゃないかなと思います。

ですのでこの「〜んです」は、「他者と関わりたい気持ち」を表して、大変よく使われるのではないかなと思うのです。

でも、注意したほうがいいこともあります。

・単に事実を知りたいとき、特に理由を求めていない、何も疑問に思っていない時に使うと、変ですし、聞いた人はハタと止まってしまうでしょう。

❌(いきなり)
あなた:今日は寒いんですね?
友達:え、なんかあった?

⭕️
あなた:今日は寒いですね。
友達:ええ、そうですね。寒いですね。


❌(いきなり)
あなた:今日は一緒に食べないんですか?
友達:え、なんか約束してたっけ?

⭕️
あなた:今日、一緒に食べない?
友達:あ、いいよ。

というわけです。

「ん」をつける理由がわかったので、使いこなせるようになるまでは、
じっくり日本人の言うことを聞き、「いつ言うか・言わないか」を考えていくといいでしょう。


とても長くなってしまったので、続きをまた次回、
書かせていただきたいと思います。





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