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エッセイその20. 気まずいときは あれで(上)



みなさん、証明写真好きですか?

私は年々歳々、嫌いになりますね。
特に、5年に一回撮るとか、10年ぶりに就活するので撮るとか、
そういう久しぶり・真正面写真は、
もう、自分のイメージの中の自分と違うんですね。

自分が洗面所の鏡の中で見るのは、
まず上目遣い、あごをあげまして、たるたるの顎周り伸ば〜す!
あと、シミとかシワとかちりめんじわとか
あるような ないような、いやいやなかったことにして見ています。

なので、外出して、ちゃんとした外光に照らされたオノレの顔を見て、

嘘でつか!

ぐらい驚くのは毎回です。

鳴呼、歳月人を待たず。


5年前に撮って、ゴールド免許証にくっついた写真はひどかった。
それは生涯で一番太っていた時で、
豪雨であったために髪の毛は爆発。
多少側湾であるので、片方の肩上がって、
なんか、あきれて、肩をすくめているみたい。

この度、昨日なんですけど、免許更新に行く私は
余計な力がいっぱい入っていました。


あのような写真を撮られてはなりませぬ。

あれから5年分歳をとっているのだけは確かです。
もしかして、最後から数回目の免許更新になるのでしょうが、
次回はさすがに諦めがつくだろうことはおいといて、
今回、変な、レ・ミゼラブルな写真が撮れてしまってはいけない。
自ずと、余計な力が入ります。

朝シャンプーをして、髪の爆発を抑え、
一番お利口に見えるメガネをかけて出かけました。

申し込みをして、印紙を貼った紙をいただいて、
驚くほどにスムーズに運ぶ免許更新のプロセスにしたがって、
やがて私は、写真を撮るところへ流されていきました。

Aのセクションに促されて入りますと、

か、鏡がない!

ないですよね、フォトスタジオで素敵な写真を撮ってもらう、
というわけではないのですから。

「はい、そのカゴにお手荷物を置いてね、座ってください」


座った途端に、変な顔の写真を撮られてはならじ。

「ちょちょちょっと、待ってくださいね」

と言って、目の前のダークなガラスに映る自分を見ながら、
せせせせ、せめて髪ぐらいはと思って、撫でつけます。

びしっ

と正面を向きますと、係の方が、

あの〜、お荷物を置かれた方が、綺麗に撮れますよ

と言ってくださいます。

気がつくと、暗証番号がプリントされた紙やら、
もうしまっていいはずの、免許更新のお知らせ葉書やら、
はずしたマスクやら、首からはずしたヘッドフォンやらで
両手が塞がっています。

あ、そうか・・・とつぶやいて、それをカゴの中に置きます。

びしっ

と また正面を向きますと、また係の方が、

「あのう・・襟元を直された方が・・・」

と言ってくださいました。

丸首のユニクロのトップスが、右の方に大きく ずれていたのでした。

危ない危ない、ブラのストラップが見えそうな勢いで、
襟元がぐにゃ〜、となっている写真を5年間使うところであった。

あたふたしながら撮っていただいた写真。

そのあと、30分間の講習を受け、
無事いただくことのできた運転免許証の写真は。

素晴らしい!

なんなら一生使いたいぐらいに素晴らしい。
遺影に使っていただいても大丈夫です。

どういうわけか、にやっと大きく笑っています。

なんでだろう。
昔のパスポートなら、拒否されそうな笑顔です。


ほっとしました。

そして、次の更新も、瞬く間に来てしまうのだろうなぁ、
その時は免許返上?

などと思いながら、帰ってきました。


けし粒ほどの出来事を、今日も大きくふくらませました。


で、題名ですが・・・

気まずい時はあれで

って、そうそう、なんか知らない人が混じっている会食。

自己紹介なんかして、途中で急に重たい沈黙が降りてきたり。

そんなときには、免許証とか、
外国人がいたならば、外人カードとかを、

「面白いから見せ合いっこしましょう」

って言ってみてください。

え〜、やだよお

とか言いながら各々が取り出す、証明写真付きのカード。


笑えます!

みんな、ちゃんと準備ができないままに、
ぱしゃ!
と撮られてしまいますから、

三白眼であったり、無用に目を見開いていたりします。

また、数年前のものも多いので、

やだ〜、こんなに痩せてたの?
うわ、こんなに太ってたの?

ということも普通にあって、本当に笑えます。

全員がてらいを捨て、恥ずかしい写真を披露した後は、
もう10年の知己! (それは嘘)

かなり場がほぐれることは、経験者の私が保証します。


マイナンバーカードは激しく拒否しているので知りませんが、
あれも写真がついているのでしょうか。

免許証と学生証、外人カード以外は、
写真のついた証明書は 考えるとあまりありません。


でも、少し人数の多い集いでは、
誰かしら、写真付きの証明書を持っていますから、
しら〜・・・っとしてしまったら、すかさず披露しあいましょう。

これが、「お見合いにはお好み焼き」と同様に、
気まずい同士を深く結びつける、お役立ちアイテムです。


続きます。


サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。