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エッセイその32.砂漠でホリデー

火曜日に2時間続きで日本語を習ってくれている生徒は、
今まで石油で潤ってきたので有名な国に住んでいます。


今日は、開口一番、

先生、がっかりな話があります。

と言うので、興味津々で聞いてみたら、なんかすごい話でした。

「先生、砂漠に家族と遊びに行ったのですが、
砂嵐が来てしまって目も開けられず、
たった1時間いただけで、帰ってきました」

ほうほう、それは残念でしたね。車で?

「はい、50人で車で行きました」

15・・・人?

「いえ、50人です。一台の車にたくさん乗ります」

なんで50人・・・
あ、前に言っていた、年に一度の一族の楽しい集まり?

「そうです」

その年に一度の楽しい集まりが、スケールが違っていました。

まず、砂漠だらけのお国と言いながら、砂漠にいろいろある。

近くて人気、しっとりしていて人気、
子供の多い一行に人気、
ちょっと命の危険はあるけれども、
ワイルドなので若者に人気。

砂漠も各種取り揃えだそうです。


そこを業者に、1ヶ月も前に予約をするのだそうです。

・・・砂漠を予約。
砂漠を予約ぅ〜?

アメリカで、ビーチが囲われていて、
お金を払って、ブレスレッドをつけられた時も驚いたけど、
あんなに広いに違いない砂漠を、予約するとはこれいかに。

いくら一行が50人とか100人だったりしても、
仲良く分散して、砂漠で遊ぶことはないのでしょうか。


いやいや、私が無知でした。
家から車で1時間の砂漠に、大きな車に分乗して一行50人が到着します。
するとそこには、業者が用意した、遊ぶ施設が待っているのです。

まず、砂の上に、世界のお金持ちが見ても目を剥くようなペルシャ絨毯が、
全くの砂まみれで、何十枚も敷いてあります。

男女別れて食事やお茶、語らいをする巨大テントが、
50人分、いくつも張られています。

トイレは、どこかから運んでくるのではなくて
現地で一から、ピッカピカのものを建造するのだそうです。

ビーチバレーのコート。
ジップライン、あの、ロープにハーネスでくっつけられて、
きゃ〜っ、って空中を滑るやつ。
乗馬のための馬たち。
砂漠を疾駆する4Dや、なんていうんですかあれ、
ギザギザの太いタイヤのついた・・バギー?

食事はBBQで、おやつやお茶も別に用意されるそうです。

もちろん、運転手・コック・メイド・ウェイターその他、
一行に仕えるスタッフも現地入りしています。

私が、

砂漠遊び?
ふう〜ん・・・
あれでしょ、鳥取砂丘みたいなところにみんなで出かけて行って、
段ボールの切れっ端をお尻にあてて砂丘を滑り降りるやつ?

ぐらいに思っていたのは、とんだ間違いでした。

「そ〜んな至れり尽くせりの準備をしてもらったら、
1週間とか居続けでしょう?」

と訊きましたら、いえいえ先生、日帰りですとのことです。
費用は一人1万円。
1日の行楽に、50万円。
(でもこれだけ遊び倒して一日中の食費含めて、1万円は安いかも)

そして今回は砂嵐のために撤退して、払い戻しはないと言う。
こちらの都合でキャンセルするのではなくて、
自然災害なので、責任は負わないそうです。

「うわ。じゃあまた予約しないとね?」

はい、でも、週末は3ヶ月先まで予約いっぱいです。
平日は、仕事をしている人もいるので、半数になってしまいます。

それは本当に残念ですね。

「あのね、先生の砂漠のイメージは、昼間は暑くて死ぬ。
夜だけ移動。
それも、お姫様と王子様が、金と銀とのく〜ら〜置いて〜♪
しっとりとミステリアスに月光の下を行く感じでした」

あ、今は冬なので、昼間も大丈夫です。死にません。
だから砂漠は混んでいるね。

「先生のステレオタイプな砂漠感は崩れました・・・。
日本には、素敵な砂漠の旅路をイメージした歌まであって、
月の砂漠公園には、こんな像もあるんですよ」

写真も見せてあげました。

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私は外国はほとんど行ったことがないのですが、
毎日いろんな国の人を教えていますと、結構な異文化体験ができます。

「自分のおじさんは、結婚式場のスタジアムに象で入場したけど
(アラジンかい!)
自分の時はヘリコプターで上から降りました」

というインドの方などは、何年経っても忘れられません。
また何か思い出したら書きますね。





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