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日本語教師日記42. 初心者の1回目レッスンは(違いをわかってもらう)


今日は、日本語教師の皆さん向けではなく、たまに聞かれること、
「日本語だけで日本語を教えるって、想像もつきません、どうやるの?」
という質問に対して、お答えしようと思います。

プライベートレッスンの場合です。


初級者にとって、最初の数レッスンは、楽しいと同時に、
いろいろ圧倒されることが多いと思います。

おぼえることがとても多いこと。
言葉の順番が全く違うこと。
「助詞」という、聞いたこともないものがあること。
まだまだあります。

教師は一つ一つ、丁寧に導入し、
練習してもらい、テストやクイズで定着を確認してから次へいきます。


こんなに違うんだ、という認識から始まるのが日本語学習ですが、
こんなことがありました。

レッスン1回目に、

先生、youはなんですか?

「え・・・あなた、ですが」

thisは?

「これ、ですが・・・あの、これから一歩ずついきますので」

for は?
is は?

どんどん質問され、ニコニコしながら全てメモを取られました。
首を捻りながら1回目のレッスンを終えましたが、
2回目に伺うと、入り口に立ってニコニコしていらっしゃいます。

そして、持っていた小箱を私に差し出しながら、

これ、です、に、あなた!

とおっしゃいます。

This is for you! 

と言いながら、レッスン記念ギフトを渡してくださったのです。

もちろん、ありがとうございます! と 日本語でお礼を述べ、
そのときには何も言いません。
せっかくの熱意、好意に水を差すだけですから。

この方には、2回目のレッスンの1時間、

日本語は英語ではない (変な文ですが)

という部分を、まず一緒に確認しました。

この人に限らず、全くの初心者へのアプローチは以下のようになります。

普通 初めにやる、挨拶などは実は丸暗記なので、
私は後回しにしています。

そして、

(a) 私は・・・です。
(b)これは・・です。

の練習に絞りました。
初心者の教科書もそうなっていますね。

これは0初心者でも楽しめる部分だと思いますが、
これをしっかりやると、語順の違いがわかり、まず自己紹介ができます。

それから、「は」の存在の紹介と、
名詞のbe動詞の現在肯定系は「です」なんだな
ということが ぼんやりわかりますね。


【私は(名前・仕事・国籍)です】

は、1時間ですぐ定着できます。
これだって、自分の仕事を日本語ではこう言うんだ、という新情報ですし、
国籍は、国名に「じん」をつけるんだ、という新情報ですし、
イギリス人・韓国人・中国人・・の方であれば、
その法則がきかない(イングランド人とか言えないので)しで、
結構大変です。

スタミナがあって、「彼・彼女」が入る人なら、もっといいです。
それだと、人物の写真を見ながら、他の人のことも紹介できますね。

彼はトランプさんです。
彼はアメリカ人です。

彼女はアンジェリーナ・ジョリーです。
彼女はアメリカ人です。
彼女はスターです。

彼はホーキンスさんです。
彼はサイエンティストです。

多少苦しいですが、ここで「科学者」を入れなくても支障はないので、いいとします。

日本語に取り入れられた外国語は、こんなに発音が違うんだということに気づいていただけます。

ついでに 「これは」を入れます。

ここでも、外来語祭りになります。

これはエアコンです。

これはパソコンです。

日本語になると、短縮されたりして、ちんぷんかんになることが多い、
ということを、楽しみながら知ることになります。

ここで、動詞文を出してしまうと、大混乱に陥りますので、しません。

A は B です。

を最初に定着させる。

クラスレッスンでは勢いがありますし、
意外に生徒同士でこしょこしょ話しながら助け合うので、大丈夫です。

媒介語を使うプライベートレッスンは、
合間にいろいろな質問が出ますので、そこはお答えしておきます。
勢いのある人だと、

これは日本語でなんと言いますか?

がたくさん出ますが、たいていまだ早いので、
それは後で
と言うことになります。

初級者のレッスンは、励まし、くじけさせず、1回のレッスンでお持ち帰りのできる、意味のある内容を定着させるという大事なところです。

単調になりがちな内容を、喉につまらせないように、
食べ過ぎにならないようにと気をつけながら、生徒の表情をよく見ながら進めます。

とても面白いので、私は初級者レッスンが大好きです。


日本語に外来語がたくさんあってよかったな、と実感するレッスン。
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