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日本語教師日記 91.法則がわかれば怖くない(21)発音指導②両手を使う(実践はあとで)

前回の続きになります。

横顔のイラストが意外に有効だということと、
でもそれだけでは用が足りないこともある、というお話をしました。

イラストを見せながら、

この音は、舌のこのへんを、ここに近づけます。
この音は、柔らかい音なので、舌の奥を軟口蓋に寄せましょう。

など、はっきり見せられるからです。

ただ、それだけでは足りない理由は、

「発語は、唇と口の中を動かして結果的に音を作るもの」

だからです。

英語で昔、Fの発音は、下唇を噛むと教わった方もまだ多いかもしれません。
これは正しいのですが、噛んだだけではどうにもなりません。
噛んで、止まって、あれ? になりやすいです。

わかりやすい例で言いますと、英語の

Fで始まる(fix, for, from など)
Fで終わる(proof, staff など)
Fがどこかに入っている(unfixable, unfrendly など)
いずれであっても、話している時は発音器官が動いています。

Fなら、言い初めは、唇は奥に向かって引き寄せがちで、口をすぼめながら、下唇を前に送り出す、そのときに、上の歯が下唇の内側を擦っていく音です。
そんなことを考えながら話せる人は少ないでしょうが、
大人ならば、こう聞くと、「噛めばいいわけではない」と理解できます。
私たちの苦手な th で始まったり、挟まっていたり、終わっていたりする言葉
(the, weather, tooth など)も、
「歯の間に舌を挟む」という教えられ方をした方もいらっしゃると思いますが、
挟むと言うより、極く細い上歯と下歯の隙間に、素早く舌の先をぶつけて、ひっこませているときの音になります。

横顔の絵では、動きは見せられませんので、
発音の指導は、絵を見せて動く場所の確認をした上で、手を使って動きそのものを見せています。

「つ」と「す」の違いを聞き取れない人は多くて、

机=すくえ
津波=すなみ

と言っている人が結構います。
そんなとき私なら、
Cats
と言ってもらってから、
今いった、その最後のところを、最初に持ってくるんですよ、
と言うことが多いです。

なんなら、  cats-nami と書いて、それを読んでもらいます。

ほら言えた! 今言った、その真ん中の ts を使って、
つくえ、つなみ、といってみてください。

と言うと、これで大抵1発で治ります。
机、罪、津波、つまらない・・など、「つ」で始まる音は、
標準語の発音では母音の U が落ちることも、ついでに教えます。

このやり方をさらに補うのが、両手を使うやりかたです。
これはやっていらっしゃる方が多いと思います。


「す 」と  「つ 」の 違いです。

「す 」は、舌の先を、限りなく上の歯の裏に近づけ、それをくっつけないで息を吐く音。  

「つ」は、舌の先を、上の歯の裏にある歯茎にちょっとくっつけてから、
奥に向かって解き放つ、というか戻す、というときに作られる音です。

そんなことを、口で言ってもややこしいので、見えにくいと思いますが、こんな形を作ります。


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上の手の指の第一関節が、上の歯の生えているところということです。
これで、「す」なら、もう片方の手(=舌のつもり)は どこにもくっつけず、「す」と言ったら、そこで止まっています、ということを見せられます。

「つ」なら、少し奥側から動き出して、舌が前に行って、上の歯茎を一瞬触って、そのまま元に戻るところまで、見てもらうことができます。

両手を使って他に結構うまくいくのが、「ん」。

日本語の「ん」を、英語その他言語の 「N 」であると解釈されてしまうと、
舌の先を、割と強く、口の天井の始まるところにくっつけます。

ところが日本語の「ん」は、

・両唇音=唇はくっつけ、口腔内はかるく空いていて、呼気は鼻から出る。
いわゆる M の音

と、

・名前がついているかどうかはわからないのですが、
「舌は口の中で、
次に続く音によって、口の天井にくっつく、くっつかないの違いはあるけれど、平たいままで あまり動かず、口は薄く開いたまま」
という音があります。

上の、両唇音は、例えば「しんばし」という言葉。
んの次に「ば」=唇をくっつけて作る「B」の音がくるために、
「ん」と書いていても、「M」音になります。
英語で書くなら ShiM/bashi であって、shi/N/bashi ではないのです。

その次に書きました、名前のわからない「ん」ですが、

きりん
きりんを見た
バン!
バンと叩いた。

とおっしゃってみてください。
舌の動きは不活発で、なんとなく平たく口の天井に元気なく貼り付き、
そのあと、次の音がくるので、渋々そこから離れたりしていませんか?

英語の N と、ここがだいぶ違います。

英語で plan, wine と言うときは、
舌の先が一生懸命に口の天井の前の方にくっつこうくっつこう、
としているのが  おわかりになるかもしれません。

これ、面白いのですが、日本語学習者にJanglishと呼ばれる言葉群、
外来語のことなのですが、これを苦手とする学習者は結構多くて、

先生、一字一句読めるのに、意味がわからない!😱

と嘆いている人によく会います。

私のアドバイスは、

「読めているのにねぇ・・悔しいですねぇ・・慣れてください」

です。

でこの、私の言うところの「英語の、粘っこいN」に生まれた時から慣れている人は、「ん」を 英語の N として発音しようとします。

なので、テストで、

wine   ⇨ ワイヌ

lemon ⇨ レモヌ

lesson ⇨ レソヌ

と書いて、❌をもらっている人が、最初の頃は多いです。

 外国語学習では、今までしたことのない発音をしますので、
画像(へんてこな横顔)と、動画(というか、手ですが)で迫ると、
時間をかけずに発音が良くなると言うことがよくあります。

近いうちに、実践編ということで、特に発音しづらい言葉の直し方についてまた書いてみたいと思っています。

日本人に苦手な  wh.....     th.....    L, R も、これで結構できるようになりますよ。




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