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時代はビッグバンド!?まだまだいるぞ、日本の人気アーティストのビッグバンドコラボレーションの紹介。音楽市場のライブ重視傾向とビッグバンド自体が持つ魅力が合わさって環境が出来てきている?という話

はい、ビッグバンドファンです。今日も「時代はビッグバンド!!」という話をしていこうと思います。人気のアーティストのビッグバンドコラボレーション、まだまだありますので紹介していきたいと思います。

JUJU「JUJU BIG BAND JAZZ LIVE “So Delicious, So Good”」

JUJUさんです。そもそもJUJUさん自身がジャズの影響をもろに受けている方ですし、芸名もウェインショーターのJUJUから取っている方なので自然な組合せではありますが、ゴージャスで心地よいビッグバンドサウンドを聞かせてくれます。毎年10月10日を「JUJUの日」としてライブを行っているようなのですが、2017年10月10日は記念の10回目ということで"So Delicious, So Good"と題しビッグバンドとの競演が実現した、それを翌年にアルバムとしても発売したというものです。アレンジはピアニスト・作編曲・音楽プロデューサーでもあります島健さん、このコンビは2011年にJUJUが初のジャズアルバム「DELICIOUS」のサウンドプロデュースをした時から続いているということで満を持してという感じですね。島健さんもCDリリースに寄せたコメントの中で「音楽的にも見た目にも華やかでゴージャスなビッグバンドというスタイルは、スタイリッシュなJUJUにぴったりだと思ったし、僕自身も編曲家・ピアニストとして、とてもやってみたいことだったのです。」とおっしゃっています。そうなんですよ、ビッグバンドって本当にライブで圧倒的な威力を発揮するフォーマットなんです、音楽的にも見た目的にも華やかでゴージャスという点でね。

中身ですが、女性に起こりうる様々な事柄を曲を追って表現するという趣向だったようで、1曲目は1937年の作品、アニタ・オデイ、エラ・フィッツジェラルト、フランクシナトラ等も歌った名曲「The Lady Is a Tramp」、内容は我が道を進もうとする女性の若いころをうたったもの、そして3曲目には、その女性が恋に落ちたらという流れでスタンダードナンバー「Night And Day」へという流れ。そこからそのまま「We are in Love」、ハリーコニックJr.の1990年のアルバム曲ですが、この辺は女性が男性に夢中になっている姿が目に浮かんでくる、とてもウキウキした演奏で、アレンジがまた茶目っ気たっぷり、歌もその流れにのってきます。ライブ盤なのでね、曲が終わるとお客さんが「ヒャー」なんて声をかけているのが聞こえるのもいいですね。そこから「Take Five」、ステージングと選曲とアレンジが完璧ともいえるかみ合い方、思わず鳥肌が立ってきます。そんなまさに恋の絶頂にもってくるのがペギーリーがカバーしたことでも有名な「Fever」、そしてダイアナ・クラールの「The Look of Love」、続いてキエン・セラでも有名なラテン音楽のスタンダード・ナンバー「Sway」という。ここで私は完全にとけました。いやね、JUJUの歌の軸がぶれないというのは勿論なのですが、バックのビッグバンドがとことん世界を構築するんですよ。なんか嫌が応にも世界に引きずり込まれるというか、聞いてて流せない。The Look of Loveなんかね、ボーカルと絡み合うトランペットのリリカルさ、それとねサックスがこれは恐らくクラリネット持ち替えでやったと思うのですが、更にねしっとりとした音色になるわけです。これはズルい。惚れるがな、こんなん聞いたら、という感じです。そこから、あぁと思わず言いたくなる展開、ミシェル・ルグランの「What Are You Doing The Rest Of Your Life?」、かなり低い音域で切々と思いを伝えるように歌いかけてくる、そのバックからビッグバンドが更に熱くサウンドを響かせる。そして、恐らくこのアルバムの中でここが一番スリリングなところでしょうか、すっかりとろけきった心と脳みそに「Guess Who I Saw Today」をガツンと入れてくる。これ、要は男の浮気を目撃して問い詰めていくという曲なんですよね。もうね、ここまでストーリーが出来上がってると曲の中間部で入ってくるピアノソロが普通に聞こえない。バッキングなんかもね、トランペットがカップミュートでね、ちょっと微妙な音程で入ってきたりしてね、全体として決して大仰でない、これがまた味わい深いわけです。そこから「Cry Me A River」で女性の嘆きを渋く歌い上げたところから、名曲「Lullaby of birdland」。イントロのあのお馴染みのフレーズ、JUJUとサックス隊が入ってきた瞬間、空気が変わり、そこから安心の4ビートに入ると、世界が変わる。音数を減らしたエンディングから音数多いイントロの繋ぎというね、こうしたところも決してわざとらしくしないでもそうなる、技術もあるでしょうがビッグバンドならではと感じられる部分でもあります。エンディングトーンもメジャーで明るい感じにまとめ、最後は自身の持ち曲でありアルバム「DELICIOUS」から「A Woman Needs Jazz」と、この辺が分かってるなぁと思うところです「It don’t mean a thing」。ビッグバンドを完全に活かした構成です。嬉しいのがバンドのプレイヤーがこの辺の展開を完全に理解していて、ソリストもアンサンブルも完全に振り切れている。これはライブだからこそ出来た演奏だろうなぁ、スタジオでこのテンションは出ないと思う。そこから更にJUJUが煽る煽る、サックスソリとJUJUの一体となったスキャットはもう何度聞いても凄い、完全に一体となったバンドのバッキング、完璧でした。

大橋トリオ「ohashiTrio & THE PRETAPORTERS YEAR END PARTY LIVE」

続いては大橋トリオ。この名前一見するとグループ名に見えますが、ソリストですね。一人で色んな楽器を操るからということでつけた名前だそうで、2007年から活動されてます。この人もJUJUさんと同じくジャズから影響を受けている人で、オスカーピーターソン。オスピーですよ。ただご本人の曲を聞くと、ソウル、フォーク、ロック、AOR、ヒップホップ等様々なものを通過してきているのは分かりますし、その中にアドリブソロなんかも聞くと、ジャズを基盤にしてるのかな?なんていう感じもします。この方が「OHASHITRIO and THE PRETAPORTERS year-end party live」と題して2014年以降毎年年末にスペシャルライブを行うということで、この「THE PRETAPORTERS」というバンドがビッグバンド編成のバンドということで、CDや配信でも聞くことが出来ます。原曲が持つアコースティックで素朴なサウンドの魅力、そこにややハスキーな声色とビッグバンドの生演奏が絡み合うと実に独特な世界を開いていきます。曲にもよりますが全体的に、淡々としたラインに語りかけるような歌声、それなのに曲からとめどなく溢れてくる「エモさ」、これはきっとどっしりとしたビッグバンドのサウンドが後ろに控えているからこそ出てくるのではないか、そんな風に感じられる箇所が随所にあります。

ゴスペラーズ「高崎音楽祭」

それから、これはライブでしか聞けないようなのですが、ゴスペラーズとビッグバンドライブ。ライブと言ってもゴスペラーズのライブではなく、彼らが5年程前から参加を続けている「高崎音楽祭」という音楽祭があり、この音楽祭でしか聞けないコラボということでこのコラボ目当てで聞きに行く人がいるほど人気とのことです。高崎音楽祭というイベント自体は開催回数も30回を超え、毎年3週間、様々なアーティストが参加される一大イベントということです。はてさて、このゴスペラーズとビッグバンドのコラボ、もう何かこれだけでも聞きたいと思いますよね。ビッグバンドのゴージャスなサウンドをバックに、圧倒的なハーモニーを展開するゴスペラーズ。アレンジとバンマスを務めるのは、高崎市出身の音楽プロデューサーでもある笹路正徳氏!!ご存じの方も多いと思いますが、プリプリ、SHOW-YAのプロデュースから始まり、1993年スピッツ最高ヒットシングル「ロビンソン」を手掛けたほか、2001年にはコブクロ、2006年からは森山直太朗のCDプロデュースならびに全国ツアーの音楽監督を担当するなど、ゴスペラーズに限らず日本のトップミュージシャンから絶大な信頼を集める方です。この方、実は慶応大学のジャズ研でジャズ・ピアノの研鑽を積み、ビッグバンドにも2000年「M.Sasaji&L.A. Allstars」というアルバムを2枚出している他、2010年にも「Masanori Sasaji & Japan All Stars」というビッグバンドを率いてライブをやっている他、Nintendo Special BigBandのアレンジを担当されるなど、ジャズやビッグバンドの文脈でも色々活動されているんです。笹路さんのアレンジ、私実はご本人からスコアを1曲購入して演奏したことあるんですが、王道を踏まえつつ、かっこよさとシャレを忘れないという実にバランスの良いアレンジされてました。このゴスペラーズとビッグバンドのコラボもきっと見事なバランスで聞かせてくれるんだろうなと思うのですが、残念ながら音楽祭でしか聞くことが出来ない

・・・と思いきや、何と2019年にテレビで放映されたようで、これが「Paravi」というサイトでアーカイブとして残っているようです。ちょっと見てみましたが、1曲目は大ヒット「永遠に」。これは完全にビッグバンドが伴奏にまわる形になっていましたが、バッキングのラインが曲のストーリー性を際立たせ、エンディングに向け転調していく展開においては、徐々に音数が増え華やかさを漂わせ、そして再びしっとりとしたエンディングに戻っていくという、ゴスペラーズのハーモニーの力強さにバンドサウンドのダイナミズムが見事に融合してました。2曲目はデビュー20周年にヒャダイン氏にお願いした「Sing」。これが、かなりアグレッシブなもので、番組内でも触れていましたが、曲の持つダイナミックな要素とビッグバンドが見事な融合を果たします。メンバーも村上さんも番組内でも言っていましたが「僕達はどちらかというと、しっとりというかアコースティック向きと思われがちなんですけど、もっといい意味でアグレッシヴにやりたい。ビッグバンドサウンドをバックにアグレッシヴにやるスタイルが、合っているいると思う」ということで、派手ではあるが耳に痛いわけではない、そしてしっとりも出来るし、華やかにも出来るダイナミクスレンジの幅の広さ、この辺が数々の人気アーティストがビッグバンドに惹かれる部分なのかな、とそんな風に思ったりします。3曲目はスティービーワンダーのカバー、名曲「Isn't She Lovely」。ここでも村上さんが「アグレッシブ」というキーワードをまた出して、笹路さんのアレンジを表現してますが、まぁイントロがね、やりやがったなという感じで入るんですよ。3連のキメキメフレーズをリズム隊が抜群の呼吸で合わせてきたと思ったら、お馴染みのシャッフルビートに展開するというね。ただ、管楽器が入らないアレンジで放映されていたので「これはビッグバンドじゃないだろ!!」と思いました。あの3連のキメフレーズ、ブラスで決めるとカッコいいんだぞぉ!!ということで、まぁ3曲、テレビだけではね、なかなか伝わらない熱もあるかと思いますので、残りは高崎行って聞くしかないということになります。

人気アーティストが次々とコラボレーションするビッグバンドの魅力とは

とここまで話しましたが、まだね沢山いらっしゃいますよ。

角松敏生さん

オレペコ

モンハン

変わり種で仮面ライダー電王

などなど・・・

気づいたら今の日本の音楽シーンにはそこかしこにビッグバンドやビッグバンド的なものがちりばめられているというね、嬉しいことです。で、何故そんなことになっているのか、ここまでいくつか触れてきましたが改めてまとめてみると、1つは「オーセンティックな魅力」。これはシンプルに生の楽器が沢山並び、それでいながらポップミュージックにもバラッドにもクラシカルなものも前衛的なものまでも全て多様な音楽に対応出来るという、単純に音楽性の幅というところに行きつくのかなという気がします。2つ目は「作編曲家が色々試せる」という点。笹路さん、エリックさん、黒田さん、島健さん、野崎さんと皆実績も実力もある作編曲家ですが、この方々が意欲的に取り組む、その事実がビッグバンドというフォーマットが持つ音楽的可能性の広さを表している気がしますし、実際に角松さんや野崎さんはインタビューの中で色々試せて楽しいとおっしゃっているのでね、そういうことなんだと思います。3つ目は「アーティスト自身が一緒にやりたいと思う魅力がある」という点かと思います。MISIAさんも異なる領域のミュージシャンとのコラボで刺激を受けると言ってますし、ゴスペラーズさんも番組の中で自分達がステージ上で思わず見とれてしまうほど素晴らしい演奏、と言っているわけです。これ一昔前のミュージシャン、それこそ歌番組が全盛の頃はミュージシャンの後ろにビッグバンドがいるのは当たり前だったわけで、それが興行的な側面から無くなってしまった。でもそれはあくまで興行的側面からの話であって音楽的側面として言えば、やはりバックにビッグバンドがいる、ビッグバンドと合わせる、この魅力はアーティストであればなおのこと感じる、そういう部分じゃないかと思うわけです。アーティスト自身が一緒にやりたいと思う、そういう魅力がビッグバンドにはあるということだと思います。

音楽市場がライブを重視するようになった

で、こうした魅力と合わせて無視できないのが市場環境の変化です。ご存じの方も多いと思いますが、近年の音楽シーンはライブの需要に支えられるようになっており、こちらはぴあ総研さんが出している音楽ライブの市場規模の推移ですが、昨年2019年の市場規模は4,237億円、2010年が1,600億円ということで、3倍弱の成長。

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これ更に2000年まで遡ると1,243億円ということで、この20年で300%を超える市場成長を遂げているんです。

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2020年はコロナによりこれが一気に大打撃を受けたわけなので大混乱したわけですが、コロナ後にライブが再開されるようになりますと再び活況を呈するようになるんじゃないかと思います。で、そうなるとライブで如何に映えるステージをするか、JUJUさんのところでね島健さんが話していた通り、ビッグバンドは見た目的にも音楽的にも華やかでゴージャス、つまりライブで映えやすいわけです。分かります?こうした市場の変化、リスナーの行動変容もあってビッグバンドが今熱い、と申し上げているわけであります。

というわけで、今日はここまでとしたいと思います。最後までお聞き頂きありがとうございます。是非興味お持ち頂けましたら、チャンネル登録をよろしくお願いします。以上、ビッグバンドファンでした。ばいばい~

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