【素人言語学者の茶々】#1 胎動の代わり探し

注釈:言語学者を気取ってるわけではありませんが、判り易く且つ似た属性が特に無いので、飽くまで素人範囲の知見と備忘録替わりの記事。お目汚しになり得るのですが、酒の肴として扱ってください。

「胎動」のニュアンス

物理的な意味として、胎内の赤ん坊が動き始めるという意味としても使われるが、同時に大きな組織や潮流の中で内部的な動きが表面的になるという意味も含まれる。今回スポットライトを当てるのは「内部的な動きが表面的になる」部分。
比喩表現ではないのだが、元の物理的な意味から自然発生させた点は特殊ではあるが、本質的には比喩表現的でもある。
コトバンク様の記事「精選版 日本国語大辞典」内容曰く「前兆」とも取れると記載されていたが、最終的な意味は同じであることに異論は無いが、自分としてはもう少しアクセントを加えたい。
赤ん坊が初めて能動的に起こす物理現象が、恐らく人生で最も弱い力で行われるにも関わらず、新たな生命が宿り静かにだが確かに、人生が変わるような変化としての潜在さと強かさを持ち合わせてると思っている。
よく「出る杭は打たれる」や「新しい芽を摘まむ」の言葉が昨今の絶望を示すが如くあるいは日本国内に蔓延する普遍的な道徳として語られているが、ならばこそ摘ままれる芽の力強さを間接的に表したい、「胎動」のニュアンスにピッタリだとも思ってる。

悩みの種

自分が持ち合わせてる「胎動」のイメージが強すぎて愛用したくなる。俗に言う「中高生が学んだ言葉を幾度と利用したい気持ち」とまったく一緒。ただし上記の「前兆」に関しても自分のイメージに副わず、且つ前兆には飽くまでも物理現象も含まれ「胎動」のように特定の意志の必要性が無い。
特に胎動は胎内という環境から、環境の因子を受け継ぎ生まれ出づる存在というニュアンスは有れど、前兆は真なる虚空またはカオスから偶発的に発生するニュアンスの場合もある。
そして残念ながら自分はこれを使い分ける実力が足りてないのもそうだが、これを使い分けるべき場面や文章構成に出会えていない。なので言葉を増やしてより意図的に機会を増やすべきとも思っているので、せっかくだから類語辞典を頼りに候補を上げていく。

候補1「蠢動」

虫部に春と理性的に考えられるが、恐らく「蠢く」という漢字を調べた時に同時に覚える言葉と思っている。
ただ下記NHKの言葉解説にある通り「蟲」は従来の「虫」と異なり、個体ではなく群体としての動きが意識される。

虫部に春とあるが、春のおかげで虫の数が減っているが「蠢」は春の麗らかさと共に顕現される清濁併せ呑むの濁に分類されるし、こんな表現じゃなくとも「春先に、新緑の葉っぱを裏返したらたくさんの蟲が動き回っていた」ような不快感が伴われる。
比喩表現として「正義の裏側に無数の小悪党」のようなニュアンスで使えなくはないが、上記の「清濁併せ呑む」と記載してるように蠢動は一部の必要性も感じる。
また私が直感的に抱いたイメージとは裏腹にコトバンク様の記事「精選版 日本国語大辞典」内容では「つまらないもの、無知な者などが、うごめき騒ぐこと」とコテンパンに貶されてる。一応希望としては同じ辞典のもう一つの意味では仏教用語の「蠢動含霊」としても使われるが、ニュアンスとしては考えうる中で一番矮小な存在として「蠢動」が取り上げられてる。
結果として胎動と比較すると環境の一部の役割は認めつつも、蠢動は意志が無いことや環境との関連性の判らなさも示唆される。
総合的に悪くない言葉だが結構火力もりもりの単語。自虐として使うのは些か自分を矮小化させすぎな気もあり、相手を貶す時に使うと絶交5秒前なのは間違いなし。諸刃を意識しよう。

候補2「蠕動」

コトバンク様の記事「精選版 日本国語大辞典」内容ではミミズ等の虫が、身をくねらせ動くことと、筋肉の収縮によって徐々に移行する運動、得に胃袋内の食べ物とかの動作らしい。
また虫部であるが、片方が「需」である点がだいぶ印象的。また「蠢動」のような漢字からの直感的な悍ましさも持ち合わせていない。特に二つ目の意味も含めて「蠕動運動」のように医学的に普及されてる点も気になる。
恥ずかしながら軽く10分ほど、この医学的用語としての強みが現れ始めたタイミングを調べたが、何も判らなかったので子細は不明だが、如実に言葉の印象が変わりつつあるのは伺える。
あとここからは筆者の経験の問題だが、医療系漫画だけでなく余り医療に関わりのある人生を送ってこなかったので、こういった動作を全部漢字で表現してることに違和感を覚える。またこういう難しい言葉は何故か英語で見る機会の方が多めだたりするので、先入観があるのも否めない。
それはさておき、蠢動と異なる点としては小型な虫がウジャウジャ居て騒がしいニュアンスはかなり薄まっている。代わりとして季節性が削ぎ落されたせいで情景のニュアンスもかなり弱くなった。ただ胃袋の連想から察するに成すがままの動作を受け入れてるニュアンスもあるので逆説的に胎動に含まれる新しい流れのような要素は皆無とも取れる。
今更だが朝8時平日の山手線のような激混みの中で移動した場合とかに「蠕動しながら電車を降りた」とか使えなくはないのかもしれない。
結果として自然の一部の動作が強く、不思議さや蟲らしさも感じにくいため元の「虫が蠢く動作」という側面よりも「医学的な筋肉の収縮」の側面としての表現をすることでユニークさが弾き立てられるが、何度も記載してる通り精神と道徳面でかなり薄れると、自分が「胎動」で表現したかった部分がだいぶ同じく削ぎ落される。

候補3「湧昇」

正確には類語辞典ではヒットしなかった単語だが、上記二つの蠢動と蠕動を検索していくにつれて動きの規模に着目してるのではなく、潜在性と強かさを重点としていたのが伺えた。なので川の流れの表現ではそれらしいのが見当たらなかったが、海流の一種としてそれらしいのが湧昇だった。
凄い細かい流体力学的な要素は省くが、湧昇は深海の水が表層へと上昇する現象及びその流れを示す。
よくダイバーで聞く話は逆に表層から深海へと流れる海流が地形の関係で発生し命を落としかけるが湧昇はその真逆。
またWikipedia「https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B9%A7%E6%98%87」曰く、海洋面積全体の0.1%にも満たない現象とのこと。
そのレアリティもそうだが、海の循環性の強かさも併せ持ちつつ、上記Wikiにも記載されてる通り豊かな生態系を形成する。ガラパゴス諸島やハワイ諸島が海底火山の湧昇流の恩恵を受けているとのことで、ただでさえ経済的に厳しい産業の助け手となっている。
湧昇の説明は一旦ここまでにして、印象としてだが圧倒的な知名度の低さ。湧昇流でYT検索したら驚くべき程何も出ない。X(Twitter)も同じような現象だったし、何なら「湧昇龍」で活躍されてる文化グループの方がまだ知名度高いしし、英語に至っては「upwelling」となっている(詳細は省くが直訳すると「上に井戸掘り」になる)ので検索するのは一苦労になるだろう。
また音としても「湧昇」と「優勝」と「有償」の違いがあるのか検証できなかったのは大変苦しいので、実際に私が口にした時にも必ずこの説明がまとわりつくので書き言葉に留まってしまうのが悔しい。
「循環性」と「圧倒的な異質性」と「絶大な恩恵」という面では、私が表現したかった全てが詰まってる。だが規模が超絶でけぇ。コリオリの力とかエルニーニョと同等のコンセプト力(資質?)を持っているので、一瞬だが自分が表現したい心情や心理描写が地球規模になるって考えると、適用できる相手が「国家転覆できてしまえそうな天才」という異世界転生物か現実の偉人レベルの人じゃないと。
ただ当たり前のように反論すると「胎動」に対して女性性を意識しすぎてるわけでもないので、使い始めたら意外と納得いくのかもしれない。

最後に

駄文を書き続けたが、この駄文を通して自分の意見がまとめられて大変良かったと思う。蠢動、蠕動、湧昇、胎動、前兆、使い分けていきたい。
ここまで読んで頂きありがとうございました。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?