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論破は時代遅れ〜「アメリカの分断」問題は”論破”では解決できない

論破する”ではなく、”折衷案を作ろう”という考え方をしないと、アメリカの分断問題はますます深刻化されていく可能性があります。

アメリカの分断問題”を取り上げていた国際ニュースを見ていて、そう思いました。

このニュースをみて、最初に私の感想を述べますと・・・

「ディベートすることに慣れてしまったアメリカは、結果的にディベートの弊害を招いてしまったことによって分断問題をより深刻化させたのでは?」

以前にも申しました通り、私は海外ドラマが大好きで『ビバリーヒルズ高校白書/青春白書』に憧れて、アメリカにも行ったほどの、アメリカ好きです。

陽気で優しく、そして強いアメリカに憧れを持っていた私は、アメリカが分断していることにショックを受けています。

私がお世話になった方々もこの分断で困っているのではないかと大変心配しております。

だからこそ”ひとつのアメリカ”になることを願うばかりです。


そこで、今回はアメリカ社会で起こっている分断についてニュースで取り上げられた内容を中心にご紹介しながら、

なぜ”論破”ではこの問題は解決できないのかを考えたいと思います。

そして、”アメリカの分断”のように答えを出すのが難しい問題について、私たちはどのように考えれば良いかをボソッとしたいと思います。


アメリカの分断「保守派とリベラル派の”文化戦争”」


”戦争”という激しい言葉を使ったアメリカの分断に関するニュース「保守派とリベラル派の”文化戦争”」について、3/7にNHK番組『国際報道2023』で観た内容を主にご紹介したいと思います。

アメリカでは図書館にどのような本を並べるかについて、激しい意見対立が起こっており、状況は深刻化しているようです。

「この本を禁書にします!」とされた禁書数は去年少なくとも1,835作品にのぼっており、5年前の4倍以上の図書が禁書として扱われ、過去最高を記録するまでになっているようです。

禁書の多くは性的マイノリティや性描写、人種問題を扱った作品のようで、対象となっている本の中には、教科書にも掲載されていた『アンネの日記』も、アメリカでは禁書扱いになっているところもあるようです。


なぜこのようなことが起こっているか?

それは保守派とリベラル派による価値観の相違がこの「禁書」問題を引き起こしている。

禁書の動きを広げている保守派の組織的な活動に対して、性的マイノリティを受け入れない保守派が自分たちの価値観を押し付けようとする動きだとリベラル派は反発している、というのが対立の構造です。

このように対立の理由が価値観という理由のため、お互い妥協もできなくなっており、解決するのは非常に困難な状況であると考えられています。

学校現場にですら”分断”が広がるアメリカ、”文化戦争”という戦争が国内で起こっているという大変残念なニュースでした。


ディベートの弊害が原因なのでは?


アメリカ社会では、はっきりと自分の意見を述べて自分の立ち位置を明確化するという、ディベート慣れした文化が広がっています。

日本人はディベート慣れしていないと、良く言われていますよね。

このディベートの特徴のひとつに、”論破”という相手を打ち負かせて自分の意見の強さを主張する特徴を持っている議論方法も兼ね合わせています。

答えがひとつしかない、ひとつの答えを導き出すだけで良かった問題に対しては、この”論破”は有効的な議論方法だったかもしれません。

しかし、予測不能なVUCA時代である現代においては、”答えが出ない難しい問題”が数多く発生しておりますが、世界のだれも正解を出せない問題に対してディベートの”論破”的な方法を用いるのは時代遅れだと思います。

つまり、ディベート慣れしたアメリカにおいて、相手の主張を論破して自分の主張を通して”ひとつの答え”を出そうとしていることが、アメリカの分断が深刻化してしまっている原因ではないでしょうか。


ディベートの弊害について~『100分de名著』で語られた内容


ディベートの弊害について、NHK番組『100分de名著』群衆心理 (2)「“単純化”が社会を覆う」で、武田砂鉄氏と伊集院光氏が語っていた内容がとっても分かりやすかったので、そちらをご紹介したいと思います。

武田砂鉄氏:
「いま割とネットで”論破する”って言葉って流行ってますよね。いち早く相手を言い負かすとか、あなたには言わせないよっていうふうに、そこを漂白してしまうみたいな。」

「でも本来、「論を交わす」っていうのは、そうやって白黒はっきりするものじゃなくて、互いにぶつかり合いながらも色味を混ぜていくっていう行為だと思うんですけど。単純化と”論破をする”っていうようなところって、やたらと相性がよくて。いまそっちが強くなっちゃってますよね」


伊集院光氏:
「たぶん僕、ディベートの弊害だと思うんですよ。最初ディベートってものを知ったときに、たまげたんですよ。ダイエットをしたほうがいいのか、しないほうがいいのか。先行の誰々さんは前半30分は”したほうがいい”でいきます。後半は”しないほうがいい”でいきます」

総合的に”どっちが議論に強いか”みたいな。スポーツ的なルールを作っただけだと思うんですけど、いつしかそれがみんな正しいと思っちゃうっていうか。正しいのは”折衷案”を作っていくことだと思うんですよ」


答えが出ない難しい問題に対してどのように考えていくべきか


答えが出ない難しい問題に対して、

個人レベルでは・・・

自分だけのものの見方を持ち、その思考で自分なりの答えを生み出し、「この問題には自分はこうしたい!」と考えていくことで、様々な社会問題に対して当事者意識を個人レベルでも持つことが大事だと思います。


一方、議論の場では・・・

お互いの意見をしっかり聞きながら、そこから新しい問いに気づき、みんなで折衷案を導き出し、自分たちの答えを構想していくことが大事だと思います。

このような考え方は、答えが出ない、答えは決して1つだけではないという予測不能なVUCA時代&人生100年時代においては、きっとトレンドとなる考え方だと思っています。


しかし、お互いの意見を交わす討論会・ディベートでは、どっちが議論に強いかを競う”論破”が流行っているようですね。

答えが出ない難しい問題が多くなったこの時代、必ずしも正解は1つではない時代において、果たして”論破した答え”が正解になるのか

ディベートで論破する考え方は、いまの時代は求められていることでしょうか?

こう考えると、私は”論破”はもう時代遅れだなと思っています。

「論破してやる!」と意気込みながら大事な労力を使うよりも、

異なる意見をしっかりと聞き、それぞれの良い部分を融合して、お互いにとってより良い折衷案を導くことに能力を使ったほうが、これからの時代、もっと活躍できそうな気がしています。


「禁書」問題をめぐる各意見から折衷案を考えてみよう

「禁書」問題をめぐって、賛成/反対/中立の立場にいる方々の意見、

さらに「禁書」される立場にいる子どもたちの意見も記載します。


このような意見が出ているディベートにおいて、”論破”して1つの答えを出そうとするのか?

それとも、お互いの意見を融合する”折衷案”を導き出すこともできるのか?

各立場にいる方々の意見を読みながら、皆さんも”折衷案”を導き出してみてください。


※NHK番組『国際報道2023』「保守派とリベラル派の”文化戦争”」(3/7放送分)より

【「禁書」賛成派】

”伝統的な価値観をないがしろにするリベラル派の試み”と主張である。

こんな気持ち悪い本を子どもが手にする理由など1つもない。

(こうした本は)価値観を破壊し子どもたちを洗脳します。学校の図書館に置けば子どもたちは問題ないと受け止めてしまう。深刻な”文化戦争”のまっただ中にいるのです。

【「禁書」反対派】

本を禁止しなくてもいいやり方があるはずだ。

保守派は本全体の文脈を無視して一部分だけをあげつらっています。

私は自分の子どもに何を読ませるか決めたい。他の親に決めて欲しくないです。相手を叫弾するひどい”文化戦争”を学校現場に持ち込もうとしているのです。

【「禁書」中立】

公共図書館は公的な機関です。

さまざまな声を代表する蔵書やサービスを提供しなければなりません。私たちの原則はどの本も必要とする人がいるということ。本と読み手を結び付けるときに勝つ判断をしてはなりません。

【「禁書」を巡る子どもたちの意見】

彼らは政治的な考えが頭にあるだけで私たちの声なんて聞こうとしていません。

禁書を行うことは校内での同性愛者などへの偏見につながります。「私たちが賛同しないから、あなたたちも賛同すべきではない」と言われているようなものです。


アメリカよ、諦めないで折衷案を導き出して!

折衷案を導き出す能力が高い人は

「アメリカの分断」だけでなく、
「ロシアによるウクライナ侵攻」のように

このような”引くにも引けなくなってしまった”これらの問題を解決してくれるのではと願うばかりです。


きっとアメリカでもなんとかしようと思っている方々が多いと信じています。

特に、「禁書」問題における若者たちの声を聞く限り、期待のほうが大きいです。


ところが、アメリカの分断は実はとっても深刻な状況になりそうな予感もしております。

それは”アメリカが諦めてしまう”こと。

議論をやめてしまい、

”意見の違う人とは関わりたくない”

という思いが広がると、本当にアメリカが分断してしまう、


そんなことにならないと良いのですが・・・

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