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【現代アートを学ぶ】世界を映し出す現代アート


今回は『この世界をどうやって映し出すのか?』に挑戦した現代アートについてボソッとします。

前回同様に、NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」にて放送された展覧会「ワールド・クラスルーム」の科目「数学」、「哲学」、「総合」、「理科」を中心に作品をご紹介させていただきます。

最後にご紹介する「理科」に該当する現代アート作品が私のお気に入りとなりました。この作品のコンセプトが心に刺さったからです。どのような作品かは、最後にご紹介させていただきます!



変わるもの・変わらないもの


マリオ・メルツ『加速・夢・まぼろし』1972/1998(数学)

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より

壁面を走っているかのように展示されているバイクの後ろに並んでいるネオンサインの数字は”フィボナッチ数列”と言われる規則的な数字が並んでいるという作品です。

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より

”フィボナッチ数列”は、前の数字を足した数が続く法則の数列ですが、前の2項を足してできあがる数列のことをフィボナッチ数列といい、自然界の動植物の中に息づく「生命の数」とも言われております。例えば、植物の花の数や、開く順番など自然界の数字とも関連しており、無限に増殖していきます。

さらに、バイクのハンドル部分は大型動物の角になっているのが特徴的な作品です。

この作品のコンセプトは・・・・

「数字は真理というか、ずっと変わらない、発見されてからずっと変わらない真理が数字」

「バイクのほうは動物から機械への進化という時間の流れが加速しているが、フィボナッチ数列のほうは進化しない、非時間的な真理がある。それぞれ対称ということかな」

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より


生命の循環


宮島達男『Innumerable Life / Buddha CCIƆƆ-01』2018

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より

無数の赤い数字が速度もタイミングもバラバラに9から1へのカウントダウンを繰り返すもの。
0が無い、1のあとは数字は消える。

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より

目がおかしくなっちゃう
えっ?全部、数字なんだ!
ん?よく見ると、数字が変わっていってる!
数字が変わっていくけど、9から減っていっている。
これ、なんなんだろう。
単純にきれい
なんか眠くなってきた
頭がボーっとなっちゃう。


そんな作品ですが、このコンセプトとは・・・

数字が合わらすのは生死、途切れることのない生命の循環です。

作者の宮島達男さん
「法華経に出てくるストーリーからとってきたもので、あらゆる人たちがあらゆる生命が地から湧き出てくる話がある。その人たちは一体何か?未来に世界を変えていく人たちのようで、無数の仏が地から湧き出てくるという物語が描かれていて、それにシンパシーを感じて作った作品。

しかし、これはあくまでも自分のモチベーションであって、自分の理由なんです。これをみたお客さんたちはボーっとそれを観て、いろんなことを自由に考えたらよいのかなと思っております。」

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より


エネルギーの循環


ヤン・ヘギュ『ソニック・ハイブリッド ― デュアル・エナジー』2023(総合)

響く鈴の音
回転するパフォーマンス
様々な要素を組み合わせてダイナミックなインスタレーション
地球のエネルギーの循環を意識したというこの作品は”総合”の科目に置かれている。

この作品のコンセプトは・・・・

ヤン・ヘギュさん
「従来の教育システムというのは科目によって分割されています。言語学、歴史、化学、科学など。でも、現代の我々にはより包括的な思考が必要です。なぜなら全ての科目は絡み合っているから、この部屋は現代の総体的な物事の考え方を表すと同時に、未来に目を向けたものになっています。」

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より


変わりながらあり続けること


宮永愛子『Root of Steps』2023

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より

白く輝く靴の彫刻、すべて六本木に関わる人たちが実際に履いていたものが元となっている。
それぞれの靴には「恋人」「コレクター」などのタグが貼ってあります。

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より

素材は防虫剤でも使われるナフタリン。
常温では個体から気体に変わり、その後、結晶へと変化していく。
この作品は時間とともに靴の形は失われていく。

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より


宮永愛子さん
「この作品にカバーをしたことで次の日に消えるのではなく結晶ができていた。作品は消えていなかったんだなと気がついた。結局はこの作品の本当の始まりだったんだなと。」
「やっぱり人間の素晴らしいところは、その素材がこういう素材で変わるんだなと知ったときに、あっ、いま変わっているかもしれない、そう思えることが素晴らしい」
「今みたのは今しかないんだな。そう思ったときに見えてくる真実があるんじゃないかな。」

片岡真実さん
「永遠に続くものと思われている作品を美術館は保存していくのが役割だが、宮永さんの作品では、どんどん変わっていく、そして無くなっていくところに価値を見出すことになると、いまの展覧会の間、みることができたんだ!という体験が、私たちの記憶として残っていく。」
「私たちが生きている世界はどんどん変わっていく、この靴のように。刻一刻変わって行っている。そうしたことが作品に反映され、世界がどのように変わっているのか?あるいは、変わっていないのか?全く違う時代の、全く違う地域の人たちでも共感できることを感じる。現代アートならではの体験ができる」

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より


”普遍的なコンセプト”「変わりながらあり続けること」


NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」では色々な現代アート作品のそれぞれのコンセプトを知りましたが、宮永愛子さんの『Root of Steps』のコンセプトは、私にとって一番心に響くものでした。


この作品のコンセプトは・・・

失われていく形、でもなくなったわけではない。
みえなくても確かにそこにある。
それは「変わりながらあり続けること」

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より

なぜなら、このコンセプトは世界の多様な価値観を持つ人々でも共感したりつながったりできるという”普遍的なコンセプト”を持ち合わす作品だと私は感じました。

番組に出演していた方々もこの作品に対してこのようにおっしゃっております。

光宗さん
「大事なものが無くなって行ってしまうんだという衝撃。それを具現化してみせられている。」

尾上さん
「一番伝わる感じがしている、このコーナーが。心がキュッとなる。」

NHK番組『日曜美術館』「現代アートはわからない?」より

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