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存在感の薄れた国連は、”第3軸”を創造できるか?

力で相手をねじ伏せることで大きな成果を出そうと目論むものたちが、この時代でいま勢いを感じるようにみえるようになった理由として、アメリカが今までの国際秩序を維持できることが難しくなった、つまりアメリカの弱体化が見え始めてきたことも要因のひとつでしょうが、最大の要因なのは『国連の存在意義』が問われ始めてきたからなのではないでしょうか。

そう、ウクライナ情勢、パレスチナ情勢において、誰の目からもはっきりと映ったことでしょう、国連の存在感の薄れについては・・・

国際政治が専門の藤原帰一さん(千葉大学特任教授)もおっしゃっていました、

「今、私たちは戦争の時代を迎えていて、国連が何の役割も果たさないことが当たり前だと考え、更に力でねじ伏せれば、大きな成果があると。」

NHK番組『国際報道2023』「イスラエル・パレスチナ情勢 専門家と徹底分析した 90分特別版 」(23/11/7放送分より)

国連の存在感は既に失ったという考えがアタリマエの時代に、私たちは生きている。



国連の存在感が喪失した時代


イスラエル・パレスチナ情勢の悪化したいまでもそうですが、ロシアによるウクライナ侵攻のときからも顕著に表れていたのが”国連の存在感の薄れ”です。

ウクライナ侵攻を国連の場で解決を求めて国連安保理にウクライナのゼレンスキー大統領が出席したとしても欧米とロシアによる非難の応酬で何も決められない、行動に移すことができない国連の姿を見て、全世界の人々はもちろん、子どもだって「あっ、国連は何もできないんだ」と思うほど、まさに”国連の機能不全化”はアタリマエと誰もが認識せざるを得ない状況となっています。


国連を舞台に分断が起きていることが分かるデータ


国連を巡って分断が見られる状況を分かりやすく解説してくれた国際ニュースをご紹介します。

この報道は、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化する前に行われた国連総会での分断状況を解説してくれたものですが、どちらにせよパレスチナ情勢悪化後の国連も同じ状況のままである、つまり、国連の分断は進んでいることになります。

さて、このニュースを解説してくれた出石 直さん(解説委員)がおっしゃるには・・・

出石 直さん(解説委員)
「ロシアを非難する国が多い中、ここに来て各国に微妙な変化が生じている」

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』「分断進む国際社会 その背景を解説」(23/9/28放送分より)


ロシアに対する情勢


出石さんがおっしゃったことは、どのようなことなのでしょうか?
なぜなら、それが顕著に表れている数値があります。

「ロシアに対する情勢」(出典:EIU2023)

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』「分断進む国際社会 その背景を解説」(23/9/28放送分より)

このように、1年前の調査に比べても、ロシアを非難している国は減少しており、中立・ロシア寄りの国は増えているというのが現状です。


ロシアに対する姿勢


「ロシアに対する姿勢」(出典:EIU2023)

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』「分断進む国際社会 その背景を解説」(23/9/28放送分より)

人口で比較するとロシア非難側は4割弱、中立は3割、ロシア寄りは3割強という結果になっている。

出石 直さん(解説委員)
「日本にいると、国際社会全体がロシアを非難しているように見えますが、少なくとも人口比率で見る限りでは1/3ずつという構成となっている。」

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』「分断進む国際社会 その背景を解説」(23/9/28放送分より)


ロシアへの好感度


「ロシアへの好感度=ロシアを肯定的に見ている人の割合」(出典:ケンブリッジ大学ベネット公共政策研究所2022)

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』「分断進む国際社会 その背景を解説」(23/9/28放送分より)

ロシアを肯定的に見ている人の割合はウクライナ侵攻によってどう変化したのかを調べた数値ですが、侵攻の10年前2012年のデータと侵攻後の2022年のデータを比較しています。

日本では16%から8%、アメリカでは22%から15%、EU諸国では34%から15%と半分以下に下がっていますが、中国では48%から83%に、サウジアラビアでは39%から60%に、インドやパキスタンなど南アジアでは57%から76%と反対に上昇していることが分かります。


さらに、先進国と新興・途上国とで大きな違いがみられました。

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』「分断進む国際社会 その背景を解説」(23/9/28放送分より)

先進国(一人当たりのGDPが3万5000ドル以上)では侵攻前の45%から12%とロシアへの好感度は大幅に下がっているのですが、(3万5000ドル以下の)新興・途上国では逆に56%から65%に上昇しているのです。ちなみに中国に対する意識でもほぼ同じ傾向がみられました。


国連がバランス思考を失った理由


このようなデータから分かるのが・・・

ロシア侵攻後のロシアへの好感度はむしろアップしている。


それを分かりやすく解説してくれたケンブリッジ大学のロベルト・フォア博士のお話。

ロベルト・フォア博士(ケンブリッジ大学)
「日本や韓国、欧米など豊かで自由な民主主義国は、ウクライナ侵攻を権威主義と民主主義との戦いと受け止めています。しかし自由や民主主義が定着していない国々では、西側とそれに対抗している勢力との衝突と受け止められているのです。こうした国際社会の分断はこの10年でどんどん広がってきています」

NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』「分断進む国際社会 その背景を解説」(23/9/28放送分より)

●先進国の視点
『民主主義VS権威主義』

●他の国の視点
『西側VSそれに対抗している勢力との衝突』


欧米や日本などといった民主主義を大事にしている先進国の視点でとらえると、権威主義国家は悪のように思えることでしょう。しかし、それは世界では限られている国からの視点であり、多くの国からはそのような視点では映ってはいないということです。


”対立軸”の思考で国連も動いている?


先進国の視点も、他の国の視点も、共通した特徴があります、それは”VSの視点”、つまり【対立軸】でしか世界をとらえてないということ。

いまの複雑となった時代、両極端化している時代において、”対立軸”の視点に立って問題を解決しようとしても、全然解決できるだけでなく悪化をたどっていることは、これまでの世界情勢をみれば誰もが分かることだと思います。

国々だけでなく、国連ですらも”対立軸”で問題を解決しようとしているからではないでしょうか。
私たちから見ても分かる通り、国連は大国の影響力を受けているからと考えれば当然と言えば当然なのでしょう・・・欧米と中ロの対立軸が深まる中、国連も”VSの視点”から脱却することは難しいのでしょう・・・


本来の国連の視点は”第3軸”の創造だったはず・・・


2項対立の視点で物事を決めようとする今の国連、本来ならば2項対立に陥らないように、平和の価値観を土台とした”第3軸”をもとに、一本化された視点のもとで、国際秩序を守っていくのが国連の役割だったはず。

つまり、2項対立に陥っている関係国を『相互承認』させながら、ゼロサムゲームではなくノンゼロサムゲームを実現させために、バランスが取れた判断軸を持った国連だったらと、妄想が止まらない、そんなボソッとでした。

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