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ドル円上昇と米金利低下に潜む日本のクジラ(GPIF)

最近、話題になっているのが、ドル円と米金利に潜むクジラ(GPIF)の存在だ。

GPIFは約169兆円(19年12月時点)を運用する日本の巨大年金ファンド。
GPIFの運用手法は基本ポートフォリオというものを決め、原則、それに基づいた範囲で分散投資を行なっている。

下の円グラフは現在、採用されているとする基本ポートフォリオの資産構成である。(2014年から採用している)

この基本ポートフォリオから±α%までの投資を可能としている。
その振れ幅についても公表されており、以下のようになっている。

ここまで公表されているのに、なぜ先ほど「現在採用されているとする」と言ったのか。
それは現在、GPIFがこの基本ポートフォリオの見直しに入っており、既に新しいポートフォリオ運営に切り替わっている可能性が高いからである。

昨年11月の報道(GPIFは資産構成比公表を一時停止、ポートフォリオ決定まで市場配慮)からも基本ポートフォリオの見直しが初めっていることは確からしいが、市場へのインパクトを考えれば公表前にポートフォリオのアロケーションを行なう可能性は十分にある。

そして今、ヘッジファンドの間でもこのクジラの動きが話題になっている。
このブログでも何度か紹介したことがあるが、日本の対外証券投資のデータから彼らがドル円と米債を買い始めたと疑われているからだ。

以下は、先週公表された日本の対外証券投資である。

1月第1週(日本にとっての月初の営業週)と2月第1週に本邦投資家が外国の中長期債を大きく買い越していることが分かる。(それぞれ、2.3兆円、1.6兆円)

誰が買ったのか?
では、先日発表された1月分投資家別売買を以下で見てみよう。

これを見ると、約2兆円が信託勘定で買い越されていたことがわかる。
そして、信託銀行を通じた信託勘定でこれほどの金額を動かせるプレーヤーはGPIFくらいしか考えられないのである。(GPIFは信託勘定で外債を買う)

2月第1週の買いが同様に信託銀行(信託勘定)であったかは3月に公表されるデータを待つ必要がある。

しかし、1月も2月もドル円がリスクオフで108円まで売り込まれたところから、110円まで上がったことを考えると、為替水準も考慮している同一プレーヤーである可能性が高いだろう。

一方で彼らの買い余力を疑問視する声もある。
確かに、彼らが最後に公表したデータによれば外国債券の割合は約18%で、先ほどの基本ポートフォリオ15%±4%の上限に近くなっている。

しかし、先ほども申し上げたように、既に新ポートフォリオの下で運用されている可能性が高いと考えており、決して「買えるのは後、1パーセント」などと甘く見ない方が良いだろう。

仮に彼らが25%まで外国債券の投資比率を上げようとしており、まだ5パーセントの買い余地があるのなら、8〜9兆円近い円売り、外国債券買い(主に米債か)のフローが出ることになる。

また、ドル円のチャートは以前ご紹介した長年のトレンドラインをブレイクしてきており、年末にドル安がコンセンサスだったヘッジファンドにも諦めムードが漂っている。

また、最近、米金利が低下してもドル円が売られない理由も、GPIFがドル円を買って米金利を買っている(=金利が下がる)からかもしれない。

ヘッジファンドのポジション(ドルショートだった)や、本邦クジラのフローを考えると今回のチャートブレイクは甘く見ない方が良いかもしれない。

ポジションは既存の米株ロング、米債(TY)ロングに加えてドル円のロングを追加。

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