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コロナ生活侵略戦争

「はい、どうぞ」とふいに手渡された、小さなパケ。中には折り紙の鳥が数羽。土曜の夕方、イオンの外で泣き止まない2歳児に、通りすがりの物腰やわらかそうな老夫婦が渡してくれたのだ。

「泣いてる子におもちゃくれるやつ!」と、海外で体験したことはあったがまさか日本でも…と驚くあまり、少しのあいだ長男とじっとパケ鳥を見つめてしまった。ハッと遅れて「ありがとうございます!」と少し遠くの紳士にお礼を言う。丸く小柄な背中からハンサムシルバーの笑顔が見えて、私もいい気分になった。

だがしかし。「アケル、カワイイ、アケル」と泣き止んだ長男の求めに対し、自分はパケを開けて中の鳥をその場で出せなかった。これは誰がどんな環境で作ったものかわからないから。イオンの入口にあった消毒液でパケをさっと拭き、帰り道は2歳児に鳥の詰め合わせを眺めてもらった。

この一週間、なかなか削られる日々を過ごした。先週末に長男が保育園から輸入した夏風邪をもらったせいだが、原因は症状自体ではない。0歳児の機嫌を取るためにベビーカーで徘徊しているとき、不意に咳をしてみたら決して人の多くない歩道に緊張感を走らせてしまったのだ。可視化された警戒の色、なんやったら取られはじめる距離。おれ、犯罪者みたいだ!

そんな目に遭ってから3、4日してなにげなく熱を測れば37.0℃。これはもしや…!念のため妻に状況を話し、アルコール消毒を念入りに行って過ごした。

この発熱が前夜に全裸寝落ちした代償とわかるまで熱を測りまくったし、気も揉みまくり。「もしも自分が感染者だったら」「一家4人がそれになったら」「そしてそれを保育園に伝えねばならなくなったら」と薄ら寒いおそろしさが頭の中にじっとり寝ころぶ。あと子供の朝食に食パンを出したら妻から「その食パン、夫専用ね」と言われて「わかるけど言い方!」みたいな不毛な腹立ちもやったし、彼女は彼女で通常は二児セパレートにしている寝かしつけを両方やらされて大変だったろう。本当に消耗させられた日々だった。

3月あたまに次男が誕生してから3ヶ月ほど育休で引きこもり、いまもフルリモートワーク下にあるため、ウィズコロナがどういったものかいまいち実感できていなかったらしい。社会との接点が復活しつつある中で、切実なまでに感じている。当たり前だったことが奪われ、日々の暮らしを疑って過ごさねばならぬこのしんどさ。

ニューノーマル、だいぶきついな。

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