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「はじめての著者」の本は原点の一冊をまず選ぼう!——いきなり「新刊」を読んではいけない

#高学歴ワーキングプアからの脱出 #高学歴ワーキングプア #新書 #本の味わい方

飼い主です。いつもウチの三毛猫ミャアさんがお世話になっております。

今回、「高学歴ワーキングプア」シリーズの新刊を久々に書き上げてみて改めて思ったことがありまして、ここに筆を執る次第です。

それは、「新刊」は「それのみで評価されるべきではないし、それのみを読めばいいというものでもない」、ということでしょうか。

通常、新しく書籍が刊行されると、書店には当然ながらその新刊一冊のみが書棚に並ぶわけです。

それが、その著者のはじめての〝一冊〟であれば何の問題もありません。いやむしろ、はじめての一冊であればあるほどそれのみで評価されるわけで、その意味においてだけでも〝著者はじめての一冊〟は手に取る価値があるでしょう。

というのも、そのはじめての一冊にこそ、その著者の(持っているもの)全てが現れると俗に言われているからです。

これから、その著者がどのような成長を辿っていくのか、そんな(可能性を秘めた)種がそこには埋まっているというわけです。どんな木に育っていくのかを楽しみに想像しながら読む楽しさがそこにはたっぷり詰まっています。

いわばその一冊にこそ——新しくその世界に誕生したばかりの瑞々しい文章の中にこそ、著者の可能性を秘めるその味わいの全てが凝縮されているわけです。いや、もしかしたらその一冊だけで終わるかもしませんが……。

とまれ、そうしたことも含めての作品像——この木(著者と作品)はどんな種類の木として生まれたのか!というものが最初の一冊にはみてとれるわけです。

一方、十年を超えて書き続けてきた著者の著作においては、「新刊」そのものだけを見ても恐らくその魅力の全てを味わい尽くすことは難しいでしょう。

それは、過去の作品の上に「新刊」が新刊として生まれてくるからです。

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この場合、「新刊」はそれ単独で新刊として上梓されているわけではありません。

過去に書かれたものと密接な関係が構築なされれながら「新たな枝」が伸びることで、その著者そのものである「幹」をも、その新しく伸びた枝を支えるために更に太くなることを促す、そんな存在としての新刊なのです。

原点となる著作で取り組んだ実験的試みや、そこで発見した問題や課題といったものがすべからくベースとしてあって、その上に書き手は新たな文章を起こしていく。それが「新刊」となってある日姿を現すというわけです。

だから読者が、もしはじめての著者の作品を手にする際には、まずはその著者の原点となった最初の一冊をまず読んだうえで、「新刊」にも手を伸ばすステップを踏むと、なおのこと「新刊」を味わい尽くせるでしょう。

新刊をそれのみでいきなり読む場合と比べて、著者の思考の発展のさせ方や、その間の(人生)経験の変遷や成長具合といったことを含めて、味わい尽くせること請け合いです。

それを省略すれば、もしかすると「その本はどうして書かれたのか」ということを含めて、新刊の存在価値そのものが揺らぐ「読み方」しかできなくなる可能性すらあります。

これではせっかくの新刊を手にしても、まさに時間とお金の無駄となってしまいかねません。ですので、繰り返しますが、もしあなたがそれまで読んだことのなかった新しい著者の作品を手にとる機会に遭遇したなら、必ずその著者の経歴を確認して、複数の書籍を刊行している場合であれば原点の一冊からまずは攻めてみることをお勧めします。

ただし、一点だけ難しい問題があって、それはその著者の執筆経歴が長ければ長くなるほど原点の一冊が手に入りにくくなることです。言うまでもなく、古いモノはすでに絶版になっていることが多いからです。十年経ってもまだ刊行され続けている本というものは本当に希有な存在なのです。

だからよほどのロングセラーでもなければ従来それはありえないことでした。

実はその点で、この十年くらいにおける急激な電子書籍化の波はそれを補ってくれることになり、これは大変有り難い新たな出版形式の動きとなりました。

僕の原点でもある「高学歴ワーキングプア」(光文社新書)は、いまAmazonでは紙の書籍としては中古本しか手に入りません。しかし、数年前に電子書籍化されたことで、いまでも十三年前の当時の姿そのままに〝新品〟として手にすることが可能となったのです。

さて、ここまで本稿をしたためてきて思ったのですが、こうした「本の読み方指南」みたいなことについては、もっと書店さんや出版社が「読者ケア」の視点から業界団体をあげて啓蒙活動などをしても面白いのではないでしょうか。

読書というのは個人的な文化体験として位置づけられていることもあり、またそれは一般的に〝高いレベル〟の文化活動でもあるというような価値観が暗黙のうちに形成されているところがあります。それもあってか、本の読み方などは基本その人任せで放置されがちです。

生まれたときから家にたくさんの本があるような家庭に育てば、それはまさに暗黙知の領域としてその子のなかでそんな能力もすくすくと育っていくのでしょうが、そうでない場合も多い——いやこちらのほうこそが現代日本の一般家庭では普通と思われるわけです。とすれば、本に興味をもってくれる読者を新たに〝生み出していく〟活動というのも視野に置いておかねばならない時代に突入したのではないでしょうか。

無論、すでに市場には「読み方指南書」の類いが、たとえば出版社の編集者が中心となり、あるいはカリスマ書店員さんが執筆した記事というような形で提示されたりといったことはあるわけですが、それとてレベルがそもそも高いところに到達している読者向けでありましょう。読書にまだ馴染んでいない、まさにこれから素晴らしい読書経験を経ていくであろう蕾の段階にある——未来への可能性を秘めた読者を、どう見事に花開かせていくかという課題には十分には対応しきれていない気もするのです。

とはいえ、スペースやマンパワーが限られる書店において、あるいは出版社において、年々増え続ける一方の新刊をさばきながらそうした啓蒙活動まで手が回るかといえばなかなかに難しい現状もあるでしょう。

とすれば、現状では、著者その人が自身の読者に向けてそうしたことも含めたケアをしていくことがこの課題への早急な対処の道であり、SNS時代のいまそれは十分に可能なこととなりました。

以上のことからも、僕の今回の新刊『「高学歴ワーキングプア」からの脱出』(光文社新書)について、再度、その味わい方について僭越ながらここにいま少しの情報提供をさせていただきます。

この新刊は、是非、既刊「高学歴ワーキングプア」と共に読み進めて頂けましたら幸いです。

と申しますのも、既に述べてきたように、本書はいきなり単独で成立したものではないからです。「既刊」がベースにあって、その上に今回「新刊」として世に現れました。

ですので、もし僕が書いた本を手にするのは今回が初めてという——(ありがたい)読者さんにおかれましては、ここはもう是非とも既刊「高学歴ワーキングプア」を先にご一読いただきたいのです。ちょうどこの新刊を記念して、出版社の運営するnoteサイト——下記リンク先、において全文が無料公開されております!


誤解を恐れずに申し上げるとすれば、もし僕の著作をまだ一冊も読まれたことがない状態で今回の新刊をいきなり読まれても、どこまでその味わいを堪能していただけるかが著者である私にもなかなか想像しにくいところがあるのです。

ですが、僕の原点となった一冊である「高学歴ワーキングプア」をお読み頂いた後であれば、新刊を十分にご堪能いただけること間違いなしと自信を持って言うことができます。

それは、新刊が既刊と一対のものとして仕上がっていることを示してもいます。

既刊本を当時お手にされた読者の方におかれましても、再度読み返して頂いた上で新刊に臨んで頂けますと、なおその味わいを堪能できるものと思っております。

十三年前に渾身の力を込めて世に送り出したその最初の一冊で、僕は「高学歴ワーキングプア」という〝問題〟を発見し、世に提示し、拙いながらも解決策を模索し、そして未来予測までもを試みました。

その後、同テーマから派生する形で数冊の本を出し、また全く新たなテーマでも何冊かの本を書きながら十三年間を過ごしてきました。

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その十三年間における経験と知見の全てをもってして、今回の新刊を〝ある部分〟に於いては〝とある目的〟をもってしたため、本全体としては「なるほど僕はこれが書きたかったのか」というような形で結実した一冊に仕上がったというわけです。

いわば、著者が意図的に運んだ事柄と、十年以上の経験のなかで紡がれてきた問題意識や哲学や価値観の変遷といったことを含めて、執筆途上の段階ではまだ無意識の領域で蠢いていたものが、だんだんと文章としての形を整えはじめるにつれて、その輪郭が明確化されていったのが本新刊であります。

そのような視点から、まず既刊『高学歴ワーキングプア』を味わっていただいたのちに、ぜひ新刊をめくっていただけますと、ここで述べている理由がすべからくご理解いただけるものと思います。

ネタバレになりますので、ここでは個々の詳細についてはそれ以上は申しません。が、近日中に交流板をネット上に作りたいと思っています。ぜひ読者の感想をお寄せいただければと思います。可能な範囲で意見交換なども!

下記に、原点となった「高学歴ワーキングプア」、および新刊『「高学歴ワーキングプア」からの脱出』のリンクを貼っておきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。


以下、参考までに既刊本を二冊ほどご紹介させていただきます。いずれも新品の紙媒体の書籍として入手可能です。









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