耳触りの良い言葉を聞きたくない/2020年01月29日
・小学生のころに同級生とバウムクーヘンの話（なぜそんな話になったのかは謎）をしていたときに、バウムクーヘンの起源について教えてくれたことがあった。
「ドイツ人が道にあった木の切り株を見たときにその断面があまりに綺麗で美味しそうに見えたから、なんとかしてそれを食べたくて作ったのが始まり。嘘だけど」
・教えてくれたと言うか嘘だったわけだけど、これの不思議なところが、当時はまだ小学生だった子供がついた嘘にしては無駄にディティールが細かいし何より子供らしからぬ説得力がある作り話だってことだ。
・気になったので調べてみたところ、どうやらバウムクーヘンとはドイツ語で木（バウム）＋ケーキ（クーヘン）という意味らしく、断面が木の年輪を想起させるからその名がついたらしい。
・嘘じゃなかった。
・しかも、"正しい由来を嘘だと言う”という、あまりに何も産まなさすぎる嘘。思い出すたびに考え込んできたこの十数年間はなんだったんだ。
・ただ、自分が小さい頃に何の気無しについた嘘がその後何年もその人の中に残り続けるというのは、少しワクワクするものがある。久しぶりに入った小学校の校舎に当時つけた柱傷が残っていたのを見つけたような、自分が残した痕跡が自分とは別のところで生き続けている感覚。
・もう彼に会うことは無いかもしれないけど、会うことがあったらこの話をしてみよう。
・耳触りが良い言葉を聞きたくない、と最近感じることが多くなった。
・最近バズっていた記事が自分のところにまでまわってきた。読んだことがない方は是非読んでみてほしい。
・筆者である小野ほりでいさんがこれについてTwitterで以下のように語っている。
・だいぶ前に書いた記事が拡散されてやんや言われてるんですけど、これに関しては既にもう正反対ぐらいのとこまで考えが変わってるので批判的な意見もだいたいもっともだと思いますね
・「繊細チンピラ」でも「私が傷つけようとしてないことで傷つくな」という文脈で役に立つ考えではあったんですが、人間は意図しないことで傷つけるし、偏見は悪意じゃなく無意識に持っているものだからこそ人の言っていることを参考にしてバランス感覚を養わないとまずいと今は思います
・このバランス感覚という部分が本当に難しいわけで、例えば上述したリンクで書かれているように、他者の発言に対して悪意がこもっているように捉えることはいくらでもできるし、その逆に「それは邪推しすぎだ、そんな悪意は少しもこもっていない」と捉えることだって割と簡単にできる。
・神ならざる私たちにとって「発言したその人の真意」は本質的には絶対に知ることはできないので、あくまでも推理の域はいつまでも出ることはできない。そのうえで、そのなかでどれだけ正確に読み取るかが肝要になってくる。
・ここで「実は世の中の大半の人はより真意に近い形で読み取る力がある」という仮設のもとで考えてみる。そうするとなぜ十人十色の解釈の方法が生まれるかという疑問に行き着き、「人は自分にとって耳触りが良い言葉を信じてしまう」という考え方に落ち着く。
・これについても小野ほりでいさんは別の記事で言及していたし、実際に私も心当たりは多くある。
・例えば昨今活発な性差別の議論だって、びっくりするほど突拍子もない意見をそこそこ名の知れた知識人が喧伝していたりする。それを見るにつけ、性差というほとんどの人が男性側か女性側に立ってしまうトピックにおける、自分の性別側に心地の良い意見というのはなんて甘い毒なんだろうと思ってしまう。
・それによって建設的な議論にならないのは言わずもがな、賢い人はそれを使って悪意あるハンドリングをしようとするので身震いすら覚える。
・例えばここで私が、
そういった自分の耳に心地がいいだけの意見を鵜呑みにするのは中高年に多い
と書いてみると、ここがPV数の低いnoteだから無事に済んでいるだけで、そうでなかったら既に焦げ臭い匂いがしてくる。
「若い人こそ盲目的に鵜呑みにしている人は多い」
「こういう勘違いをするあたりが若い」
「むしろそれが偏見」
「あなたの周りの中高年がそういう人だったというだけでは。私の周りには立派な人がたくさんいます」
・頭の中で架空のインターネット民が騒ぎ出す。落ち着け。
・こういう架空のネット民が勝手に活発に騒ぎ出す感覚、自分だけかと思ったらそうではなかった。
・ダ・ヴィンチ・恐山さんと同じ感覚らしい。オモコロという、先程の小野ほりでいさんの記事も載っているwebメディアのライターやさこの箇条書きスタイルも彼の人のスタイルを真似ているんだけど、その上で文頭に恐山さんの名前をつけると気持ち悪い。自分がこの文章を後輩に出されたら絶対に全ての行頭文字を変えさせる。
・ここで急ですが、私が何も考えたくないときに見ているYouTubeのプレイリストを紹介します。
・プレイリストのリンクの貼り方が分からなかったのでタイトルをgoogle検索したリンクを貼りました。直訳で「見ると後悔するプレイリスト」です。後悔したくない人は見ないでください。
・エッチな漫画広告の煽り文みたいになってしまった。
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