続・司法試験合格のご報告と振り返り

4.司法試験受験まで

予備試験合格後、司法試験までは基本的には過去問を解くことを軸にしつつ、おろそかにしていた判例学習などを進めること、特に苦手意識のあった民訴などの科目を1からさらい直すことを目標にしました。

予備合格後、知人から予備合格者で勉強相手を探しているという方をご紹介いただき、相互に添削する約束をしました。この取り組み自体はあまり長く続かなかったのですが、若干だらけていたところで習慣づけができたのは良かったと思います。

答案構成だけという方も多いと思うのですが、私はそれだと思考をサボりがちなのでフル起案をメインにしていました。
起案後は、趣旨・実感、再現答案集、予備校の解答集、雑誌増刊(別冊法学セミナー 司法試験の問題と解説シリーズ)の解説などを参照しつつ自己添削し、必要に応じて基本書・教科書や判例集を確認していました。
概ね十年分を2周くらいやったかな、という感じです。(2周目は答案構成のみも多め)

判例学習・学び直しについては後述の教材のところで書きたいと思います。

年明け辺りからは短答過去問の周回も増やし、最終的には予備論文前と同様に論証の暗記を中心に切り替えていきました(ankiのアプリを使って論証集に教科書判例の情報を書き加えるなどしました)。

子どもが常に保育園から病気を持ってくるので、試験前数週間は自宅を離れていたのですが、途中で妻が熱出して倒れて、結局差し入れなどには帰りました(妻には頭が上がりません)。

5.司法試験

若者との勝負になるのでコンディションを整えるためにできることを何でもやるつもりで会場近くに宿泊しました。
それでも、体力的にはきつかった…疲労のあまり中日には微熱を出して昼飯時に椅子から転げ落ちそうになりました。
受験的にも、初日の選択科目(知財)からして足切りもあるかも、位のできでどうなるかというところでしたが、誘導にのることと基本的な法律構成やそれに対する悩みを採点者に伝わるように示すことだけを考えてできるかぎりの答案を仕上げました。
短答も高得点からはほど遠かったので、合格には届かないかも、と思っていましたが、なんとか合格することができていたようです。(評価が来たらまた感覚と照らしあわせたいと思います)

とにかく体力的にしんどい(しかも仕事休まないといけない)試験で、私のように体力のない社会人は書き切るためにできること、を考えるのも大切だと思います。例えば、試験少し前にタイムラインという高めのボールペンを導入したところ、私比ではかなりの分量を書いても腕に少し余裕が出るようになりました(万年筆も試したが、インクの補充の手間、にじみなどで本格導入に至らなかった)。中日は休むことを推奨します。

6.若干の就活

受験期までは高齢受験生に就活は厳しい、という印象を持っていたのですが、それほどでもないようです。
ようです、というのは色々な事情で就活をはじめの方でやめてしまったからです。とはいえ説明会や事務所訪問に声もかからない、ということはありませんでした。
先に司法試験に合格された同年代の方に聞いたところでも、だいたい何かしら決まるみたいだ、ということを聞いたので、そういうことなのだと思います。

7.振り返りと教材

試験が終わった瞬間に一番後悔したのはもっと短答の勉強をやっておけば、ということでした。
何度も同じ教材を繰り返すうち、惰性になって効果が上がっていなかったように思います。必ずしも過去問では出題が多くなかった主題も取り上げられており、条文や判例に立ち戻って勉強(判例六法読むとかそういうレベルの)をしておけばよかったかな、と思いました。
論文の勉強の軸を過去問の演習に置いたのはよかったと思います。高度な論点の学習をしようと思えばいくらでもあるのでしょうが、むしろ、一般的な水準の受験生が知っているレベルの知識を愚直に適用し、事例を使い、その上で悩みを見せられれば、合格水準には十分なのだと思います(ふつうわかるだろうというレベルの論証が怪しかった私が受かっていたのだから)。その意味では、過去問は(当たり前ですが)問題のクオリティが高く(一部除く)傾向も類似しているわけですから、わからない問題にわからないなりに取り組む、最高のトレーニングになりました。

最後に使っていた教材を御紹介します。(すでに紹介した予備校教材除く)

憲法

判例集:判例百選
教科書、基本書:日評ベーシック、新4人本、旧4人本
問題集:憲法ガール
その他:憲法論点教室

憲法(と行政法)はどうも予備校系の解答に疑問があり、ガールシリーズにお世話になることに。どうにもよくわからんなぁと思ううちに教科書等をたくさん手に取ってしまうことに。半分趣味です。(基本は辞書的使用。必要な定義などはAnkiに登録)

行政法

判例集:基本行政法判例演習、ケースブック行政法
教科書、基本書:基本行政法、大橋行政法Ⅰ、Ⅱ
問題集:行政法ガール

日本評論社の基本シリーズは、学者の書いた予備校本と呼ばれることもあるようで、学習者に使いやすい教材。何周か読みました。大橋行政法は詰まったときに。判例百選が分冊で細かいので、重要度で濃淡をつけてくれている基本行政法判例演習は助かりました。

民法

判例集:百選Ⅰ、Ⅱ
教科書、基本書:佐久間民法の基礎Ⅰ、Ⅱ、松井担保物権法、中田債権総論、契約法、潮見債権各論Ⅰ、Ⅱ、(リークエⅥ親族・相続)
民法は事例問題集でほぼ足りたかな、という印象。事例問題がほとんど代表的な判例のままだったりするので。教科書類は過去問といてるときに詰まったところを確認する用法。予備終わるまではほとんど持ってなかったし。

商法

判例集:百選
基本書:田中会社法、(商法1(有斐閣Sシリーズ))
こちらも事例問題集、論証集でほとんど足りた印象。商法も一応教科書買ったもののあまり参照する機会は多くなかった。

民訴

判例集:百選、ロースクール民事訴訟法
基本書、教科書:基礎からわかる民事訴訟法、読解民訴(、瀬木民事訴訟法)
問題集:(ロープラ)
その他:小説で読む民事訴訟法
苦手分野。小説で読む…、基礎からわかる、読解民訴を予備終わってから読むという。過去問の傾向が予備とはまた少し違うので、これらの教材を読みつつ、演習して、予備のころよりはだいぶよくなった、と思いたい。ロースクール民訴はタネ本的な言われ方をしているので少し使って、良い教材だと思ったものの、一人でやるには手に余った。百選流し読みでよかったと思う。

刑法

判例集:百選
教科書、基本書:基本刑法1、2(、応用刑法)
その他:犯罪構成要件の定義集(受験新報2018.7)
ほぼ、基本刑法。予備論文前から何回か通読しており、口述に向けてもだいぶお世話になった。これがしっかり入っているのがまずは大事なラインではないかと思われる。構成要件の定義がまとまったものとしては、受験新報の記事が便利だった(ここに少し書き足して一元化した)

刑訴

判例集:判例学習・刑事訴訟法、(百選)
教科書・基本書:リークエ、基本刑事訴訟法1、2
過去問中心の学習になった。基本刑事訴訟法は、予備口述対策で1を使ってよかったので2も買ってみた。理由不要論とかいろいろ言われるけど、きちんと理屈が付けられている方が頭に入るし応用が利く気がするのは私だけ?判例学習も法解釈の話なのか、法適用なのかというあたりが分けられていて類似の問題を解いた後に戻って読むと理解が深まった記憶。

選択(知財)

判例集:(百選)、
教科書:特許法入門、著作権法入門、(小泉特許法著作権法)
問題集:知的財産法演習ノート
その他:図録 知的財産法
正直判例集はあまり読めていない。予備時点で知識が整理されていないかんじをうけたので、入門二冊を通読。さらに演習ノートを解いた。演習ノートはまずはこれはやっておいたほうが良いかな、という感じ。図録は眺めるのに楽しい。どうしても浅めになってしまったが、もう少し勉強したいところ。

使いこなせなかったのはほかにもたくさんあるけど、主だったところはこのあたりだと思います。
時間があれば基本書じっくり読むところから始めたいタイプなのですが、それだとどうしても進まなくなってしまいがちなので、問題を中心に据えつつ、調べものとして教科書、判例集を引く、という方針をとりました。
悪くはなかったと思います(体系性がいまいちですが)。

ひとまず、これで司法試験までの振り返りは終わり。
成績など届いたらまた何か書くことができるでしょうか。




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