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愛と情|2024-02-05

今回は、うでパスタが書く。

これもひとえにnoteの機能が不全であって記事の検索性が非常に低いままであるがため、昨年の秋に古くからの同僚をひとり亡くしたという話を書いたかどうか忘れてしまった。きっと配信ではなんどかそれにかこつけた話をしていると思う。

彼は経験豊かなバックオフィスのマネージャーで、酒癖は悪いのに仕事はまちがえないという希有な人物として少なくとも僕たちが知り合ってからの十五年という時を生きた。葬儀はなかったが、火葬場には遺族も予期しないほど大勢の参列者が訪れた。しかし僕はどこか乾いていて、奥さんの紹介で初めて挨拶した彼のお兄さんとは冗談を交わし声をあげて笑うほどだった。
長い時間をかけてみんなが供えた花に埋もれた彼の棺が扉の向こうへ消えるとき、誰かが大きな声をあげて泣いた。僕は待合で出されたビールを二杯飲んで、その場を辞した。東北らしい素朴さで自分の身にはたいして構わないが人情には厚かった、酒飲みで、競馬と高校野球ばかりが好きだった彼にふさわしい、すっきりとした良い弔いだと思った。

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