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『大乗本生心地観経』に説かれる四智

以前浄土門から観た四智の記事を書いたが、『大乗本生心地観経』の「報恩品」に略説ではあるが四智が説かれていたのでここに紹介する。
四智の考え方としては、当然この経典のように解釈することが妥当であり、弁栄上人の解釈は独自のものである。もっとも唐代の曹渓慧能大師や大珠慧海上人、浄土教の大成者の善導大師といった方々も独自解釈のオンパレードなので珍しいことではない。

『大乗本生心地観経』に説かれる「四智」とは、

(四智とは)一には大円鏡智なり。異熟識を転じて此の智慧を得。大円鏡に諸の色像を現ずるが如し。是の如く如来の鏡智の中に、能く衆生の諸の善悪業を現ず。是の因縁を以て、此智を名づけて大円鏡智と為す。大悲に依るが故に恒に衆生を縁じ、大智に依るが故に常に法性の如し。真俗を双観して間断有ること無し。常に能く無漏の根身を執持して、一切の功徳の依止する所と為る。
二には平等性智なり。我見識を転じて此の智慧を得。是を以て能く自他平等の二無我の性を証す。是の如きを名づけて平等性智と為す。
三には妙観察智なり。分別識を転じて此の智慧を得。能く諸法の自相、共相を観じ、衆会の前に於て諸の妙法を説き、能く衆生をして不退転なることを得。是を以て名づけて妙観察智と為す。
四には成所作智なり。五種の識を転じて此の智慧を得。能く一切種種の化身を現じ、諸の衆生をして善業を成熟せしむ。是の因縁を以て、名づけて成所作智と為す。
(『国訳一切経 経集部六』 常盤大定・深浦正文〔訳〕)

上記の経文を解釈すると、
①大円鏡智
阿頼耶識を変化して得る智慧で、鏡の中に物が写るように仏の智慧の中に一切衆生の善悪の行為を現し出す。
しかも慈悲によって一切衆生の前に姿を顕すが、智慧に依って常に万物の本体としての真如そのものの様でもある。
浄土と穢土を双方を絶え間なく観ていて、常に報身としての円満な功徳を保ちながら森羅万象の拠り処となる。

②平等性智
末那識を変化して得る智慧で、自己と他者が無我(空性)であることをはっきりさせる。

③妙観察智
意識を変化して得る智慧で、あらゆる存在の個別的な相と一般的な共通の相を観ることで、衆生の前で勝れた仏法を説いて、衆生を不退の位にさせる。

④成所作智
眼・耳・鼻・舌・身の五識を変化して得る智慧で、様々な化身(応身)を現して、衆生の善業を成長させる。

『大乗本生心地観経』での「四智」は、①自性身、②受用身、③変化身に三身の中の②受用身に配当され、さらに受用身には1⃣自受用身と2⃣他受用身があり、そのうちの1⃣自受用身において説かれる智慧である。
要するに自受用ということは仏辺から観た智慧と考えられる。

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