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40歳会社員、インストアルバムをリリースしまして、今。

思えば、自分が納得いくまでやり切るという経験をしてこなかったかも不知火。本当は(まだやれることはあったろうな)と思うことは無数にあり、無数にある故に、(まあ仕方ない/これで充分やろ)とさらっと流すことも容易い。よくある人の話では「社会に出て(大人になって)そういう術を身につけてしまった」という類のものだけど、自分の場合は、わりと子供の頃からそうでした✨

そして今、私は40歳になって初めて「あ、ちゃんとやり切った、かも。」という達成感のような感覚をふとした拍子にシガみながら、お仕事をし、日々を過ごしております。8月29日火曜以降、最近の話です。

つまりこの日にアルバムをリリースしたということでやんす。

自分がこれからさらに音楽の造詣を深め、スキルを手にし、センスを磨けるのだとすれば、当然後から聴いてまだまだやと思うのだろうけど、現時点ではもう、今聴いても、よくやったと思えるし、純粋にこのアルバム好きなんや、ワイは。誰か僕以外にもこのアルバムが好きだと言ってくれる人がいたら、いいなと思ふ。

この記事は2年間のアルバム制作期間を雑に振り返るものですが、読まなくていいので下記リンクからアルバムを聴いてください。

とりあえず、聴いてくりいや。

上からSpotify / Apple Music / その他ストリーミング/ダウンロードストアです。

2年前に書いたこの記事がはじまり

映画「犬ころたちの唄」の整音が終わって、オリジナルサウンドトラックのマスタリングが追い込み中の頃。2年前の21年5月。ぼんやりと考えていたことを書いた記事。結果、アルバムタイトルはちょっと変わり、曲数は想定より増えつつも、インストゥルメンタルで、コンセプトとするところはブレてない。自分にしては上出来やんけ。

夏になって実際手を動かし始めました。(下記は21年8月18日投稿)

特にこの子(AKAIのMIDIキーボード MPKmini mk3)が来て以降は、時が来た、やらねばならぬ。となぜか思ったのでした。

年齢より先に四十肩になってギターも弾けない。なんならギターの音を聴くのもちょっとしんどい。作詞をして唄うことにも向上心や好奇心が湧いていない。自分がそう感じていることを、コロナ禍が分からせてくれたのでした。

ただ、なんらか創作はしたい。エンジニアとして頼ってくれる友人知人の素敵な作品に触れているし、誰とも話が合わなさそうなノルウェーのジャズやポップスをサブスクやアナログで聴いたり、PS4のゲームをしてみたり、レトロゲームの実況配信を観てみたり、そういったBGMからも日々刺激はある。

今の状況は、むしろ自分にとってはいよいよ本腰を入れるチャンス。「せや、ワイはインスト作編曲なんや!」と言わんばかりに全ての楽器を打ち込みでつくると決め、21年の年末に2曲シングルを2つ=計4曲、配信公開しました。まだアルバムまで辿り着けるか自信はなかったでげすよ。ええ。

ロゴから入っちゃうタイプ

22年5月30日。私は暇だったのだろうか。「けだま」という文字と「リズム」という文字を重ねるデザインをノートに書いては消し書いては消しをやっておりました。その後ジャケットデザインの素にはなりましたが、肝心の曲はこの時6,7曲しかできてない。こんな“がわ”の妄想ばかりしているのは、曲作りが停滞している証左に過ぎず。22年はその後曲が増えることはなかったように記憶してます。ゲームはようけしてました。フォートナイトとか。ジャッジアイズとか。

生成AIさんには足を向けて寝られない

22年の年末あたりからChatGPTがはんぱねえじゃねえのと世の中が盛り上がり始めて、仕事の勉強程度に戯れておりました。23年3月、ふとChatGPTさんに下のように聞いてみたのですよ。

以下の楽器のサウンドを、Logic Pro付属のソフトウェア音源で再現するための方法を教えてください。
楽器:Roland RS-09、およびKORG LAMBDA

私の記憶の中の入力プロンプト

ここに書いた楽器とはシンセサイザーの機種で、ノルウェーのSSW・Frøkedalのアルバム“How We Made It”のLPのクレジットに記載されていたもの。ChatGPTはこの質問にするすると、この音源を使って、ここの設定をこうしろああしろと詳細に回答をしてくれ、実際に試してみたところかなり近しい音が出たため、大変にたまげたのでした。はんぱねえじゃねえの。

ここから音づくりを追い込んでできたのが、アルバムの中の「dama」という曲。やってみたかったことをダマのように詰め込んだ6分半の長尺曲です。ここから何か堰を切ったように曲をまた作り始めました。

「11曲のLP」サイズに絶対にしたるねん。どついたるねん。

クボユーリという宝

22年の春。クボユーリという若きシンガーソングライター兼サウンドクリエイターが、奇跡のような縁があって縁深い関係となりました。かつて学生時分の彼のアルバムやシングルのマスタリングをやらせてもらってたわけですが、飄々としながら嗅覚というか、何を努力するかを見つけるセンスが長けたナイスガイです。ニッチな楽器であるスチールギターを始め、広島の人気バンド the Loupesのサポートを務めたりしてます。

ある時クボユーリくんと横川のキッチン酒場外国か、本と自由かで飲んでいる時に、自分のアルバムに何曲か参加してくれないかと相談。制作当初はすべてを打ち込みでとつくり始めましたが、人が演奏した音も、やっぱり、少し、欲しい。音の高さや大きさが連続的に変化し、揺らぐ。そういう理屈じゃないプレイを。フィジカルさを。軽く笑えるユーモアを。うまくやり抜く賢さを。
果たして彼は快諾してくれました。

23年4月の終わりに、(なにかが足らん)と思っていた2曲のLogicプロジェクトファイルを彼に送りつけ「好きなやうにすちいるぎたーを弾いてたもれ。あとはよろすく」と丸投げ。結果上がってきた2曲の彼のプレイは、賢いけど、どこか反抗的で魅力的。元の曲を違う世界観に連れてった上で完成させてくれました。ミックスも他の曲とは違って楽しかったな。当該の曲名は「どちらかの空気」「ベヒモスの通勤路」です。

手戻りの鬼、または千手観音。

23年6月下旬。11曲。曲は揃った。夜な夜なミックスをして書き出し、翌朝の出勤中や仕事の合間、退勤中に聴いて気になるところをiPhoneのメモに書き出す。夜それを直す。これを死ぬほど繰り返しておりました。

iPhoneメモ画面一部

ゲームなんてしてる場合じゃねえ。
なにせ全ての音が打ち込み(クボユーリくんのスチールギターを除く)なので、後戻りがいくらでもできてしまう。ミックスをしていても、マスタリングをしていても気になったらアレンジまで遡って修正できてしまう。

21年末に配信シングルで公開していた「デルタの宴席」「アンダンテ」「爆笑の人」もアレンジの一部、ミックスの大部分をやり直し、けっこう良くなった手応えがあったのでシングルとしての公開は停止することに。

マスタリングをしてた曲なのに、次の日にはMIDIノートのタイミングやベロシティの修正をしている。この夥しい手戻りは、ひとりでやっているからこそ許される自由であり、苦行。本当に素晴らしい制作手段だと思う。思うんだけど、一向に終わらないでやんす。一生気になるところが出てくる。でもそれを、全部やる。なくなるまでやる。そう決めたので、とにかくやる。鬼。または千手観音。または「白山と三田さん」の白山がバイト先ポセイドンで、売場の品出しを高速でやってるあの感じ。

今思うけど、この時の追い込み、ほんとにやって良かったです。悔いやストレスなく聴き返せる。自分の完成品を自分に聴かせることの充実感。途中の未完成品を人に聴かせたい欲を我慢して、磨き込むことの大事さ。これはやり切って初めて腑に落ちる感覚やも知れませぬ。まあインスタやサンクラに途中段階めちゃくちゃ公開してたんですけど。佳境になって控えました。

なぜかストレスハイ

11トラックのマスタリングデータが7月中旬に完成。それからは配信のディストリビューターどこにお願いしようとか、7/26自分の誕生日に乗じて告知しようとか、記念として本当にLP作っちゃおうとか、サブスクの告知用にCD-Rを作ろうとか、そのジャケのデザインとか、オーディオビジュアライザーの動画を作って公開しようとか。月日を逆算して計画を考え始めてからは、妙にずーっと悪いドキドキというか謎の緊張、軽い胸の圧迫感を感じながら過ごしてました。恐怖だったのかも。ほんとによく出来たと思ってるから、聴いた人が実際どう感じるのか。とりあえず、ここで考えて、やってみたいことは8月29日のリリースまでに全部やれました。

デルタの宴席@横川 キッチン酒場 外国

8月27日、横川のキッチン酒場 外国でのクボユーリくんとの打ち上げは、最高に幸せでした。お店でLP版をかけながらの打ち上げ。ドリンクを注文して、僕らと乾杯してくれたらCD-R版をプレゼントしますよ、というゆるーい企画。

18時から飲み始めて、徐々に、ひと組ずつよく知った仲間や、初めてお話しする方が、会いに来てくれるんすよ!お店の戸がガラガラっと鳴る度に、喜びで胸がときめくわけです。で、おめでとうって言ってくれるし!乾杯してくれて!みんながLPを聴いて、ああだこうだ言ってくれて!こっち酔ってるし!あれ嬉しかったなーほんと。レコ発ライブとは違う、お祝い感、多幸感に包まれました。私が。次回作でもこれやりたいです。60歳のときでしょうか。

LPレコードは、お店に寄贈ということで置いてもろてますので、よかったら聴きに行ってよね。キッチン酒場 外国やで。うまいアテでやれまっせ。

インストゥルメンタルっていいよね

拙作「けだまとリズム」がいいかは意見が分かれるとしても、インストゥルメンタルっていいですよね。自分はコロナ禍の在宅勤務の時に魅力を感じ、今でも好んで聴きます。

いざ自分でアルバムをつくってみて、この制作期間は40年の人生で一番音楽と向き合った期間だったと思います。ずーっと弾いてきたギターも、唄もない。これは制約のようで、実は自由を感じるものでした。好奇心と、今ある知識とセンスで、アンサンブルを構築することに熱中しました。インストゥルメンタルをつくる時の、音楽と向き合う熱量はかなりのものだと思うわけですよ!

ということで、「けだまとリズム」完成を導いてくれたのはこの曲たちだ、というのを織り交ぜたプレイリスト(Spotify)もあります。唄アリの曲も多いんですが。参考までに、ひとつよろしくお願いします。

大事なことなので、もう一度リンクを貼って終わります。


先日、ファイナルファンタジーⅥピクセルリマスター版を無事クリアしました。シャドウ生還ルートがあるのを知らなかったので、もう1周やらんといけません。

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