新米手配師の日常5

通翻訳者として地道に活動してきた私がひょんなことからコーディネーター(手配師)に。
これまで見てきたのとは別の世界がそこに…そんな新米手配師が気づいたことを徒然なるままに書いてみます。

資料ください!

これは通訳に特化した話ですが、あなたが通訳者だとして資料がなかなか来ない場合、どのような対応をしますか?
① メールや電話で催促する。
② **日までに資料がこないと通訳の質が落ちる可能性がある、手配師にいう。
③ 仕方がないと諦めて他の方法を探す。

正解は、どれでもOKです。ただし、相手を選ばないと逆効果になる場合があります。
① と②:エージェントが関与していないような直接契約や法廷通訳には効果があると思います。実際に法廷通訳の研修では資料がなかなか来ない場合、裁判所の書記官に
「**までに冒頭陳述の書類が頂けなければ、ボイスオーバーではなく、逐次通訳になる可能性があります。その場合、通訳の時間が2倍になります」と伝えるようアドバイスをしているようです。

注記:起訴状の朗読や冒頭陳述など書面の読み上げにはワイヤレス通訳システムを使ってボイスオーバーの通訳をしています。ボイスオーバーの代わりに逐次通訳(2倍時間がかかる)をするということは、裁判の遅れにつながりかねません。

逆効果となりうるのは、これをエージェントの手配師に行った場合です。心配なのはわかりますし、問い合わせるのは構いません。ただ、何回も尋ねられても、状況は変わらないですし、準備で忙しい中、返信や電話に対応することで手配師の時間が奪われてしまいます。
また、通訳の質が落ちる、と手配師に言われても、それはお客様に言えないですし、困ってしまいます。「プロなのだから工夫して」と思う人もいるくらいです。

もちろん、手配師もただ手をこまねいているのではなく、お客様に「何回も」催促しているのですが、残念ながらギリギリになることが多いです。
…締め切りギリギリにならないと取り組まない人がいる
著名な先生には強く言えない
会議を掛け持ちしている忙しい人が多いので、提出は直前になります
秘書が管理されているので(国会議員、知事、市長の場合は特に)、こちらではわかりかねます
書類管理は別会社のため、その会社との連携が悪いとさらに遅れる
…等々の理由で。

③ こちらがコントロールできないと割り切って、工夫するのもいいと思います。有名人ならYouTubeで過去の講演を見ることはできます。ただ、諦め、我慢するのはよくないので、エージェントには困ったことは伝えてください!

ただ、本音を言えば、このままでいい訳はなく、1つの原因としてはお客様の中が通訳のことをよくわかっていらっしゃらない、さらには通訳者を芸能人と同じようにとらえている人もいるからかと思っています。
(例:台本が公演ギリギリなのに素晴らしい舞台だった、音楽番組の収録で当日まで曲がわからないが問題なく演奏できているから、通訳者もアドリブで大丈夫だよね..)
バラエティー番組でもこういったエピソードを話す芸能人をよく見かけますが、演出も入っていると思いますし鵜吞みにはできませんよね。
手配師もお客様にしっかりと資料の大切さを伝えていきます!

新米手配師の学んだこと

資料は手配師ではコントロールできない。通訳者に少しでも気持ちよく仕事してもらうために引き続きお客様の啓蒙が必要。


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