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新日本プロレス『WORLD TAG LEAGUE 2023』総括。

新日本プロレス『WORLD TAG LEAGUE 2023』が昨日全日程を終了したので、それについてあれこれ語ろうと思う。
まず最終結果だが、毘沙門(後藤洋央紀&YOSHI-HASHI)3連覇に終わった。
前人未到の大記録ではあるのだが、私にとっては正直一番面白みに欠ける結果だった。毘沙門推しの方々には申し訳ないが。
話題的にも成田蓮の海野翔太への裏切りからのHOUSE OF TORTURE加入の方に持って行かれてしまった感は否めない。
あれは一体誰が予想できただろうか。

それでは各タッグチームについて触れていこう。

海野翔太&成田蓮>:6点
ぶっちゃけ今回のタッグリーグの話題を全て持って行った。
リーグ開始前にあれだけラブラブなインタビューVTRまで流しておいてのこの有り様。
どこまでが決まっていたことなのか。
それにしても成田蓮の生き様がかっこ悪過ぎる
HOUSE OF TORTUREにボコられてストロングスタイルを結成したのにその加害者に迎合するとは。
結果が出なければとりあえずヒールターンするプロレス界の悪しき風習の見本のような踏襲の仕方だ。
彼のファイトスタイルでヒールが務まるのかどうかは疑問だが、あのニヤニヤしたなんともいやらしい表情と、海野翔太に対して「コピーレスラー」と言い放つ、特大ブーメラン発言のHOUSE OF TORTURE構文を早速使いこなしている辺り、素質は十分だったのかもしれない。
ちなみに成田蓮の新必殺技(?)の『ダブルクロス』は、かつてDRAGON GATEの斎藤了も似たような経緯でユニット裏切ってREAL HAZARDに入り、その時引っ提げてきた必殺技が『ダブルクロス』だった。 あちらはクロスアーム式カナディアンバックブリーカーからのフェースバスターだったが。
最終的に今回のことが海野翔太の独り立ちのきっかけになれば結果オーライなのでは。

石井智宏&矢野通>:8点
私の大好きなレスラーである石井智宏と、大嫌いなレスラーである矢野通のコンビ。
あ、でも実は矢野通はファイトスタイルは大嫌いなのだが、彼の解説は大好きだったりする。
思うに彼は与えられた仕事はきっちりこなす職人気質のサラリーマンレスラーなのだろう。
私にとって最大の謎なのが、あの真っ向勝負が信条の石井智宏が、矢野通のどこをそんなに気に入っているのかということ。
地力とやる時はやるのを評価しているか、同じユニットのメンバーのことは悪く言わないのか。
ともかくブロック2位の結果を残している以上、しっかりと噛み合っているのは確か。

グレート-O-カーン&HENARE>:8点
オーカーンほど不遇なレスラーは新日本プロレスに他にいまい。
そう言わざるを得ないほど会社に対しての貢献度に対して報われていない
人気も実力もある、努力もしまくってる、キャラも面白い、プロレス界全体への貢献度も高い、プロレス愛も強い。
……なのに。
何かひとつきっけさえあれば大爆発してくれそうである。
それがオスプレイの離脱なのかどうかは現時点では分からないが。
それにしてもHENAREは頼もしくなった。
シングルの実力的にも今やすっかりトップレスラーの一角であり、タッグとしての精度を高めていけばきっと将来は明るいだろう。

<マイキー・ニコルス&シェイン・ヘイスト>:10点
ノア時代からザックを含めて2人を知る私としては、決勝まで上がって欲しかったのだが叶わず。
実力も実績も申し分ないのに、いまいち絶対王者感がなく、安定感に欠けている印象があるのはなぜなのか。
派手さもなく、もっと弾けてもいいのになあ、と。
良くも悪くも総合的にまとまってしまっているのかもしれない。
いっそ派手な新合体技の開発でも?

<アレックス・コグリン&ゲイブ・キッド>:10点
まさに今大会の台風の目
準決勝まで進出し、もうヤングボーイコンビとはとても呼べない。
試合開始前に急襲しての反則三昧もすっかりファイトスタイルとして定着させてしまった。
ジュニアに毛が生えたようだった体格ももうゴツゴツのバキバキ。
今最も勢いを感じさせるタッグなのでは。
フィンレーの手下ポジションに置いておくのはもったいないぐらいだ。
個々の必殺技と合体技が地味なので、そこが一撃必殺のインパクトを持つようになるとまさに手がつけられなくなりそうだ。
それぞれのキャラも立ちまくっており、ヒールながらこれからどんどん人気が上がっていくのは間違いない

<EVIL&高橋裕二郎>:6点
EVILはつくづくスマートでクレバーだ。
バックステージのコメントでは毎回その知性が光り、ディック東郷の薫陶かインサイドワークや会場全体を把握する能力も急成長。
「ヒールは向いていないのでは」などと囁かれていたのが嘘のようだ。
あの太ももの仕上がり具合を見れば鍛えまくっているのも明らかで、努力に裏打ちされた現在の姿であることは疑いない。
EVILが穫られて負けることはまずないので、このチームの勝敗はパートナーの高橋裕二郎にかかっていると言っても過言ではない。
かつてあの棚橋弘至をして「俺より早く来て俺より遅くまで道場にいる。間違いなく一番練習熱心なのは裕二郎」と言わしめた片鱗を見せてもらいたいものだ。

<清宮海斗&大岩陵平>:4点
疑問視されていた大岩のノアへの武者修行だったが、身体は大きく厚みを増し、打撃はハードヒットになり、それが大正解だったことを示した。
ヤングライオンを卒業したばかりのエントリーであり、素直に健闘したと言える。
清宮と本当の意味で並び立つ存在になれば、将来タッグ王座を穫るのは難しくないだろう。

<ビショップ・カーン&トーア・リオナ>:4点
鳴り物入りでAEWから送り込まれてきたGates of Agonyだったが、タマ、タンガ、ヒクレオ、HENAREなどなどそうそうたるサモア系実力派レスラーがひしめく新日本プロレスの中でインパクトを残せたかというと正直疑問。
むしろHOUSE OF TORTUREに加入したと思いきやたった一日で放逐されたその情けない姿の印象が強すぎるため、早急に汚名返上する機会をあげて欲しいぐらいだ。

<後藤洋央紀&YOSHI-HASHI>:9点
やっぱりこの2人の優勝だったか、と。
歴戦のプロレスファンなら開幕2連敗した時点で「あっ……」と察したはず。
そのジンクスがどうあれ、偉業達成おめでとうございます。
このチームに関しては、誰がどう言おうと結果で黙らせてきて、これからもそうしていくものだと認識している。
負けたとしても「あの毘沙門を倒したチームだぞ!」と相手に箔を付けるレベルのチームにまで昇り詰めたのは本当に大したものだ。
ここまで躍進したのはYOSHI-HASHIの成長が大きいと考えていて、頑なにスワントーンボムにこだわっていた頃の彼とは今やまさに別人。

<永田裕志&鈴木みのる>:4点
私にとってのドリームタッグでしたね。
表向きとは言え、まさか約30年来の遺恨が精算(棚上げ?)されてのタッグ結成とは。
結果こそ振るわなかったが、バックステージまで含めて毎回楽しませてもらった。
リーグ終盤、ついに正式なタッチが行なわれた時の盛り上がりといったら!
プロレスとはなんとドラマチックなのか。
結果以上のものがある。それがプロレス。
私はプロレスはスポーツではなく、「プロレスはプロレス」だと考えている。
この2人に今後があるのかないのか。それも含めて大変楽しみ。

<ヒクレオ&エル・ファンタズモ>:10点
STRONG無差別級タッグ王座コンビ。
秘められていた脅威の潜在能力を開花させたヒクレオと、これまでもジュニアヘビー級の枠にはとても収まり切っていなかった、なんでもできるファンタズモ
まさかここまでこの2人が噛み合うとは。
いやー、BULLET CLUBは惜しい人材を手放したものだ。
開幕前から毘沙門と並んで優勝候補と目されていた通り決勝へ。
そして本当の決着は来年1月4日の東京ドームにて。

<タイチ&上村優也>:8点
これまでザック・セイバー・ジュニア、SANADAと同格の相手を組んできたタイチが引っ張る形に。
予想以上の結果を残すも、途中で上村が「1人でやる。仲間なんていない」などとメンタル不安定になってしまったのがもったいない(辻は『あれでこそ上村さん』と評していたが)。
ファイトスタイルは成田蓮のようにクラシカルで、ビジュアル面は辻曰く「ロン毛の上に赤が基調でダダ被り」など、独自色をこれからどこまで打ち出して突き抜けられるかが上村優也の今後の鍵だろう。
カンヌキスープレックス一本でどこまで大物食いができるのか疑問があるが、それは同時に注目点でもある。
清宮海斗&大岩陵平コンビのように、上村がタイチと並び立ってからが本番だろう。

<辻陽太&サンドカン・ジュニア>:6点
開幕前、「パートナー『Z』を連れて来る」と言っていた辻。
「『X』と言わずあえて『Z』と言ったのは辻ならではのアンチテーゼか」などとファンの間で噂されていたら、サンドカン・ジュニアのイニシャルが本当に「Z」だったというオチ。
辻の洒落っ気、お見事。
それにしてもサンドカン・ジュニアはデカい!分厚い!
辻と並んでも遜色ないどころかむしろさらにデカい。
「メキシカン=小さい」というパブリックイメージを覆す立派な体格。
巨大な手から繰り出す打ち下ろしチョップはタイチの胸を切り裂き、トラウマ化させるレベル。南斗聖拳か!?
手だけ見るとあのエル・ヒガンテを思い出した。
かつて獣神サンダーライガーが「ヒガンテの手はもうあれヤツデの葉っぱだよ!」って大興奮していたものだ。
結果としては中途半端な位置に落ち着き、内藤哲也からもサンドカン・ジュニアのLIJ入りを保留されている現状だが、ジャパニーズスタイルに彼が適応さえすればこんなものでは終わりはしないだろう。
私のこのチームのハイライトシーンは、辻がジーンブラスター一発であのヒクレオを仕留めた場面。
あれはインパクト絶大で、あの技を一撃必殺の域まで押し上げた。
伸びしろしかないタッグである。

<アトランティス・ジュニア&ソベラーノ・ジュニア>:7点
なんとリンピオ(善玉)とルード(悪玉)のスペルエストレージャ(スーパースター)が夢の合体!
のっけからあの毘沙門を相手にフルタイムドローに持ち込むなど、「小兵が飛んだり跳ねたり」というルチャリブレのイメージを根底から覆す獅子奮迅ぶり。
結果こそ7点だったが今後も継続して……と期待していたのに、最終戦後にバックステージでソベラーノ・ジュニアが「負けたのは全部おまえのせいだ!」とアトランティス・ジュニアを襲撃してあえなく空中分解
あーあ。
やっぱり即席ドリームタッグは色々難しい。
もっと観たかった……。

<ランス・アーチャー&アレックス・ゼイン>:8点
ゼインがヘビー級に本格転向しての『モンスターソース』
ランスが今ヒールなのかどうかは分からないが、意外にも馬が合って何もかも噛み合ったナイスコンビ。
私のぜひ今回優勝して欲しかったタッグの一組。
いいところまでは行ったのだが、もう一歩及ばなかった。
ゼインがヘビー級戦線に馴染み切った時こそ本領発揮だ。
ヒクレオ&ファンズモ組と凸凹ぶりや片方がジュニアヘビー級からの転向など色々な面で被りつつも戦績で破れてしまった悔しさをバネに飛躍してもらいたい。

<バッドラック・ファレ&ジャック・ボンザ>:4点
ファレを真正面から攻略することは至難の業なのは周知の事実なので、必然的にそのパートナーが狙われることになる。
不慣れなことも多かっただろうにそれを考慮してもボンザはよく今回よくやったのではないだろうか。
彼の必殺技である『ナパームサンダードライバー』の名前を聞いて永田裕志の幻の必殺技(?)のサンダーデスドライバーを思い出したプロレスファンもいるのでは。
とにかくボンザの成長次第にかかっているこのタッグ、ファレも道場主としてなにかと忙しいだろうが、まだまだ第一線で大暴れしてもらいたいものだ。IWGPヘビー級王座を獲っていないのがおかしいぐらいの実力者なのだから。

チームごとについてのコメントなどはこの辺りにしておきたい。
今回のタッグリーグは(も?)頭一つ抜けていたタッグも、逆に全く振るわなかったタッグもなく、実力の拮抗した白熱した戦いが繰り広げられたと思う。
なのでなおさら話題を最もさらったのが成田蓮の裏切り劇だったことが歯痒い。
もしも海野翔太&成田蓮が優勝していればこんなことにはならなかったのか、それとも成田が言うように決まっていたのかは一介のプロレスファンに過ぎない私などには知るべくもないが、願わくば来年は後味良く終わってもらいたいものだ。
……でもまあ、そんなのも含めてプロレスなんですがね!

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