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『Fate/Samurai Remnant』:歪な器に満たされた昏い愉悦。【ネタバレあり】

なんとか『Fate/Grand Order』(以下『FGO』)とのコラボイベントがスタートする直前に『Fate/Samurai Remnant』をクリアすることができた。
したからにはその感想をここにこれから書き連ねたい。
……の、だが。
さて、どうしよう。
ぶっちゃてもいいですか?

褒める所がパッと思い付かない。

どこをどう褒めたらよいものやら。
なのでこのゲームを愛してやまない方はくれぐれもここから先をお読みならないよう。

この『Fate/Samurai Remnant』を一言で表すのであれば、
和風Fateワールドを中途半端な『龍が如く』的に動かし、中途半端な無双シリーズ的にアクションさせるゲームである。

MAPの任意の場所をクリックすると飛べるというようなユーザビリティは実装されておらず、ゲームボリューム稼ぎのお遣いのために端から端まで移動させられてはストレスを溜めることになる。
「癒やし」と微量のHP回復を兼ねたシステムとして町中にいる野良犬と野良猫を愛でる謎システムがあるのだが、これがなぜか超絶連打を求められ、主人公の次にお供のセイバーも同じことをするのでそれが2倍になる。
癒やされるどころか指が疲れてプレイヤーのHPは微増どころか減少することになる。
コーエーテクモゲームスさんはちゃんとデバッグしたのだろうか。
その上でこのマゾ仕様にGOサインを出したのだろうか。
令和も5年以上過ぎてこんなPS3のゲームみたいなシステムを採用してくるとは、舞台を江戸に遡らせたからにはゲーム性も逆行させないと気が済まなかったのかもしれない。
2周目以降のプレイも2章からしかさせてくれないのもきっとそうだ。

戦闘はもうすっかり「無双タイプ」と言えば通じるようになった、おなじみのワラワラ出て来るザコ敵の群れを主人公で千切っては投げるアレ。
一応難易度選択もできるのだが、難易度を上げてもただ敵が硬くなって攻撃力が増すだけなので、戦術もへったくれもあったものではない。
敵の攻撃をガードできるのは『地の型』だけなので、『型』は5つあれど、結局それの大攻撃をブンブン振り回すだけの主人公になる。
緊急移動手段も用意されてはいるが、ボス格の敵の攻撃は基本広範囲で持続時間も長いのでとても避けきれるものではなく、何も出来ずボーッと空中でお手玉される主人公を眺めている時間が発生する。
『地の型』の大攻撃を振り回しつつ、体力が減るとおにぎりを食いまくる。
ゲームではありがちな動きだが、実際の姿を想像してみるとどうか。
そんなのが本当にTYPE-MOONが求めるスタイリッシュなアクションの動作なのか?
甚だ疑問である。

最初からFGOとのコラボレーションを睨んでいたであろうことは疑いなく、当然ながらFGO要素も盛り込まれている。
それはいいのだが。
だが。

よりによって聖杯戦線とは。

一部キャストと運営はお気に入りの様子だが、ユーザーからは圧倒的なヘイトを集めているあの聖杯戦線とは。
面倒臭い。
ああ面倒臭い。
こっちに来てもひたすら面倒臭い。
このゲームから受けるストレスの半分以上はこれなのではないか。
実際問題聖杯戦線のことが嫌いではないユーザーの割合はどれぐらいなのだろうか。
少なくとも私は大っっっっっ嫌いだ。
MAP上のマスの上で戦闘が発生するので2周目以降もスキップできないので心底ウンザリする。
聖杯戦線が我慢できるFGO愛が問われる。

ゲームシステムがクs……アレな以上、もうキャラとシナリオに期待するしかない。
……なかったのだが、残念ながらそっちも私にはほとんど響かなかったし刺さらなかった。
Fateシリーズのストーリーを読んでいて最大のカタルシスを得られる瞬間とは何だろうか。
そう、サーヴァントたちの真名が明かされる瞬間ではないだろうか。
あ、今は異論は結構です。
それが下手。
とにかく下手。
引っ張って引っ張って引っ張って……え、それ?今の???
2時間サスペンスドラマに例えると崖に犯人を追い詰めて自白させようと思ったのに気が付いたら出頭されていたレベルのお粗末な顛末の連続。
何度昭和のコメディアンのようなリアクションでズッコケさせられたことか。

キャラクターに関して言えば、サーヴァントよりもマスター及び一般人たちの方がよっぽど印象的で魅力的だった。
絵は良かった。
せっかく絵は良かったのに。
つくづくもったいない。
好きになれたのは由井正雪ドロテア・コイテットぐらいだろうか。
あ、やっぱりどっちもサーヴァントじゃなくてマスターだ。
『逸れのサーヴァント』というシステムも成功だったのか失敗だったのか。
オリジナルの逸れのサーヴァントたちは発表当初のインパクトに比べるとなんとも地味で、特に逸れのセイバーの木曽義仲タマモアリアなどは「ついに来たか!」感がかなりあったのだが、蓋を開けてみればFGOのコラボイベントに実装されなかったのにも「さもありなん」と言った感じだ。
こうなってくると歴代の人気サーヴァントたちをなんとかねじ込むために無理矢理ひねり出したモノに思える。
そしてその名だたる高名サーヴァントたちも一介の術者にあっさり操られてしまって我が目を疑った。
ポッと出の新キャラに強キャラ感出すために既存の猛者たちを下げるのやめてくれませんかね?

薄い本みたいに洗脳されたアルジュナやクー・フーリンや李書文なんて見とうなかった。

そもそもが宮本武蔵ありきで彼女を優遇し過ぎたゆえに他が割を食ったのだろうか。
ジャンヌ・オルタかと思いきや黒化したジャンヌ・ダルクそのものだったのは唯一面白いと思ったが。

今作の「顔」なのはセイバーことヤマトタケルだろう。
FGOにも正月サーヴァントとして先行実装され、運営側が売り出しに力を入れているのがよく分かる。
が、期待された割にはいわゆるシステムサーヴァントとしての能力以外は特筆すべき点に乏しく、代用がいくつも利くので正直肩透かし感が強かった。
ヤマトタケルと言えば古代日本のヒーローとしてはビッグネーム中のビッグネームで、並び立てるのはスサノオノミコトぐらいのものではないだろうか。
なのにこの程度か、と。
バランス調整が難しいのはよく分かる。
素人なので想像でしかないが、それでも。
もっともっと強くはしてやれなかったものか。
サムライレムナントの顔にして正月サーヴァント、もう2段階ぐらい強くしても文句は出なかったのではないか。
少なくともサムライレムナントで操作していて実感できる強さには遠く及ばないと言わざるを得ない。
ヤマトタケルという強力なカードをここで切ってしまってよかったのかと心配になってしまう。
ま、まあ強化クエストで超絶強化すればいいか!
そうだそうだ!(考えることをやめた)
ところで「娘」って言われてた気がしますがFGOでは性別不明なんですね?

前述した先行実装サーヴァントであるヤマトタケルの他に、FGOとのコラボに実装が決まったのが丑御前(源頼光)と由井正雪、そして配布★4として本作の主人公・宮本伊織だ。
丑御前はライダーではなく★5アヴェンジャーとしての実装で、今作の中では馬脚を露した時にもクラスチェンジ演出や描写がなかったので驚いた。
今作をプレイした人なら賛同いただけることと思う。
由井正雪は★4キャスターとしての実装。
ホムンクルスという出自を考えれば、Zeroのアイリスフィールやアポクリファのジークと同じ★4キャスターというのは納得であり、ニヤリとさせられた。
どうやら補助宝具のようなので、その効果が楽しみで仕方がない。
由井正雪はひとりはお迎えしたいなー、とすでに狙っとります。

そして最後のひとり、宮本伊織ですよ、問題なのは。
★4セイバー?
HAHAHA、またまたご冗談を。

宮本伊織こそリアルバーサーカーでしょ。

武蔵ちゃんなんかよりもよほど。
真エンディングまでクリアした人なら首がもげるほど頷いてくれますよね?
いやだって「人間からサーヴァントに切り替えて操作した時その強さに驚くと思いますよ?」とか開発スタッフがニヤニヤしながら言ってたのに、実際には伊織くん師匠の武蔵ちゃんに勝つどころか神である八十禍津日神まで普通に斬って捨てちゃってるからね!
相方であるヤマトタケルが無双シリーズ恒例のアホAIで棒立ちしっぱなしだから余計に伊織くんの超人ぶりが引き立つね!
そして真エンディング、見事にバーサーカーとしての本懐を遂げた伊織くん良かったね!
ってそんなわけあるか!

めちゃくちゃ後味悪いわ!!!!

伊織おまえ、弊カルデアに来たらそのひん曲がった根性叩き直してやるから覚悟しとけよ?

「レムナント」って単語に馴染みがなかったので検索してみたら「残り物」的な意味らしいッスね。
あー、つまりは伊織くんこそ太平の世に取り残された剣鬼だったことね。
伏線回収!
なんとまあ快感を伴わない伏線回収か。
こういうのが実にTYPE-MOON作品っぽいって思う人もいるのかな。
どちらかというと初期作品っぽいか?
でもそれにしてもどう見てもバッドエンドだよなあ。
あれではあまりにもカヤが報われなさ過ぎる。
こうして全クリしたプレイヤーをモヤモヤさせてスタッフはほくそ笑んでいるのだろうか。
なんとも趣味の悪いこと。
昏い愉悦に浸ってるんじゃあないよ。

FGOで公式ネタバレされるのが怖くてこうしてクリアしたわけだけど、この出来なら特に気にしなくてもよかったかな。
Fateシリーズじゃなかったらまずプレイしてなかったし、プレイしてもFateシリーズとして認めたくないほどの代物だった。
パンドラの箱に残されたものは希望だったが、残されたサムライには絶望しかなかった。
FGOの世界でなら宮本伊織はヤマトタケルと楽しくずっとやっていけることがほぼ確定しているが、だったらこのゲームはそのための布石に過ぎなかったのだろうか。

二本の刀を自在に使いこなすのが二天一流の極意だが、このゲームは無双シリーズとしても疑似オープンワールドとしても、それどころかFateシリーズとしても中途半端な紛い物だった。
いくらなんでも欲張り過ぎたんだ。
愉悦しようと美酒を注いでみたものの、歪過ぎた器はそれを受け止めきれずに色んな所からジャージャー漏らした。
前提からして間違っていた盈月の儀、結果としてゲームそのものが同じ末路を辿って崩壊してしまったのはあまりにもよくできた皮肉であったと結ばざるを得ない。

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